血液脳関門

Blood-Brain Barrier (BBB)

血液と脳組織との境界にあり、物質の行き来を選択的に制限する仕組みである。Fluids and Barriers of the CNS誌の2020年の総説によれば、その実体は神経血管ユニットと呼ばれる構造で、密着結合を持ち小胞輸送が乏しくミトコンドリアに富む内皮細胞、基底膜に埋め込まれたペリサイト、血管外側表面のほぼ全面を覆うアストロサイト終足などから成る。密着結合が細胞間隙を封じ、排出トランスポータが異物を血中へ押し戻す一方、必要な栄養素は担体輸送で選択的に通す。

詳細

定義

血液脳関門(blood-brain barrier、BBB)は、血液と脳組織との間に置かれた選択的な境界である。Fluids and Barriers of the CNS誌が2020年に掲載した総説は、これを血液と脳の界面に位置する特殊化した細胞群が形作る高度に選択的な界面として説明している。

構成要素

同総説は、血液脳関門を神経血管ユニット(neurovascular unit)として記述する。構成要素は次のとおりである。

  • 内皮細胞: 密着結合を備え、カベオラが非常に少なく、ミトコンドリアを多く持つ
  • 密着結合: クローディン、オクルディン、JAMなどのタンパク質複合体が細胞間の経路を封じる
  • ペリサイト: 毛細血管の基底膜に埋め込まれ、微小血管を安定化する
  • アストロサイト終足: 血管の外側表面のおよそ99%を覆う
  • ミクログリアや神経細胞などの支持細胞

制限の仕組み

同総説によれば、通過の制限は複数の機構によって成り立つ。密着結合が細胞間隙を封じて親水性分子の通過を妨げ、排出トランスポータが異物を血中へ能動的に汲み出す。一方で担体輸送により必要な栄養素は選択的に取り込まれる。

創薬上の含意

この選択性は脳を血中の毒物から守る一方で、中枢神経系を標的とする薬剤の到達を妨げる。関門を越えて薬剤を運ぶ手段の開発が、中枢神経系創薬の主要な課題のひとつとなっている領域である。