化学名を3,3′-ジヒドロキシ-β,β-カロテン-4,4′-ジオンとするカロテノイド系の色素である。米国食品医薬品局の着色添加物規則である連邦規則集21 CFR 73.35は、サケ科魚類の飼料に安全に使用できると定め、仕上がり飼料1キログラム当たり80ミリグラム、1トン当たり72グラムを超えないこととしている。養殖魚の肉色を高める目的で用いられる。
脳の仕組みに着想を得たハードウェアによって、知覚や意思決定といった計算課題を実行する方式である。米国国立標準技術研究所(NIST)は、ニューラルネットワークのソフトウェア実装も専用ハードウェア実装も依然としてヒトの脳より何桁もエネルギー効率が低いとしたうえで、この方式が重要な計算課題の効率を大きく改善しうると位置づけている。NISTのスピンエレクトロニクスグループは、スピントルク効果を用いた室温動作のナノスケール発振器に基づく実装と、動的に再構成できる磁性ジョセフソン接合に基づく実装を研究している。
微細藻類を閉鎖系で培養する装置である。Frontiers in Energy Research誌に2016年に掲載されたNaralaらの比較研究によれば、閉鎖型の培養系は高度に制御された条件で運転できるため品質の面で効率が高く、占有面積が小さい一方で光の利用可能性を高められる。開放型のレースウェイ池と比べると、汚染のリスクと蒸発による水の損失が低く再現性のある藻体が得られる反面、設備費が高く保守が難しい。両者を組み合わせた二段のハイブリッド方式も検討されている。
免疫チェックポイントは免疫系の正常な仕組みの一部であり、免疫応答が強くなりすぎて健常な細胞まで破壊することを防ぐ役割を担う。米国国立がん研究所によれば、T細胞上のタンパク質が他の細胞や腫瘍細胞上の相手側タンパク質と結合すると免疫応答を抑えるオフの信号が送られ、一部の腫瘍はPD-L1を大量に産生してT細胞の応答を弱める。免疫チェックポイント阻害薬は両者の結合を妨げてオフの信号の送出を阻み、T細胞ががん細胞を攻撃できるようにする。標的にはPD-1、PD-L1、CTLA-4がある。
デトネーションと呼ばれる超音速の燃焼現象によって推力を生み出す点で、従来のロケットエンジンと異なる推進方式である。NASAマーシャル宇宙飛行センターの試験機は、平均燃焼室圧力622 psiで4,000ポンドを超える推力を約1分間発生させた。従来の推進系より少ない推進剤で大きな出力が得られるとされ、月や火星へ向かう有人着陸機や惑星間航行機への適用が想定されている。燃焼器にはNASAが開発した銅合金GRCop-42を粉末床溶融結合で成形したものが用いられた。
回転軸を地面に対して垂直に配置する形式の風力タービンである。米エネルギー省のSmall Wind Guidebookは、小型風力タービンを水平軸型と垂直軸型の二群に分け、市場で最も広く使われているのは水平軸型だとしている。垂直軸型にはサボニウス型とダリウス型があり、サボニウス型は上から見るとS字形の形状をとり、ダリウス型は泡立て器のような外観で垂直なブレードが風に対して出入りしながら回転する。水平軸型の発電量はロータ直径が定める受風面積によって決まると説明されている。
埋立地の有機物が分解する際に自然に発生する副産物のガスである。米国環境保護庁(EPA)の埋立地メタン普及プログラム(LMOP)によれば、組成はおよそメタン50パーセント、二酸化炭素50パーセント、および少量の非メタン有機化合物からなる。同プログラムはIPCC第5次評価報告書に基づき、メタンの100年間の温暖化効果を二酸化炭素の少なくとも28倍としている。米国では都市ごみ最終処分場が人為起源メタン排出の第3位の発生源であり、2022年時点で約14.4パーセントを占める。回収したガスは発電、中カロリーガスとしての直接利用、およびメタン濃度を高めて二酸化炭素・窒素・酸素を減らす処理によって再生可能天然ガス(RNG)へ精製する用途に用いられる。
広範なデータで訓練され、多様な文脈にわたって適用できるAIモデルである。米国国立標準技術研究所のNIST AI 600-1は大統領令14110の定義を引き、広範なデータで訓練され、一般に自己教師あり学習を用い、少なくとも数百億のパラメータを持ち、広範な文脈にわたって適用可能なAIモデルとしている。特定の狭い用途に限定して設計されるのではなく、下流の多様な課題へ転用できる点が従来のモデルと異なる。
暗号化されたデータのまま任意の関数を計算でき、その際に秘密鍵を知る必要がない暗号方式である。米国国立標準技術研究所(NIST)のプライバシー強化暗号(PEC)プロジェクトは、完全準同型暗号をマルチパーティ計算(MPC)、ゼロ知識証明(ZKP)、秘匿集合交差(PSI)と並ぶ主要ツールの一つとして挙げている。同プロジェクトはNISTIR 8214Cのしきい値スキーム公募において完全準同型暗号をカテゴリS5として扱い、将来の標準化に向けた動向を追っている。
ヘリウム3とヘリウム4の混合液が低温で相分離する性質を利用し、ミリケルビン領域の極低温を連続的に得る冷凍機である。オックスフォード・インストゥルメンツの技術解説によれば、軽いヘリウム3に富む相が重いヘリウム4に富む相の上に浮かび、希薄相には絶対零度に至るまで6.4パーセントのヘリウム3が溶け込む。この有限の溶解度が希釈冷凍の鍵であり、混合室で濃厚相からヘリウム3が相境界を越えて希薄相へ移る際に吸熱が生じる。外部の液体ヘリウムを用いずに4 mK以下へ到達できる装置もある。
データに段階的に雑音を加える過程の逆をたどり、雑音から標本を生成することを学習する生成モデルである。2020年のHoらの論文は、拡散確率モデルを非平衡熱力学の考え方に着想を得た潜在変数モデルの一群と説明し、重み付き変分下界による学習が、デノイジングスコアマッチングとランジュバン動力学との対応から設計できることを示した。同論文は無条件のCIFAR-10でInception score 9.46、FID 3.17を報告し、256×256のLSUNではProgressiveGANと同等の標本品質を得たとしている。
水力を用いた電力貯蔵の一形式である。米エネルギー省(DOE)の説明によれば、標高の異なる二つの貯水池で構成し、上池から下池へ水を流してタービンを通すことで発電し(放電)、逆に電力を用いて下池から上池へ水をくみ戻す(充電)。電力を蓄えて必要なときに放出できるため、巨大な電池のように働くと説明されている。
脳脊髄液がゆっくりと蓄積するために脳組織が代償し、蓄積があっても頭蓋内の圧力が上昇しない病態である。米国国立神経疾患・脳卒中研究所によれば、歩行の問題、排尿の制御の喪失、思考や推論の困難を引き起こす。くも膜下出血や脳室内出血、頭部外傷、感染、腫瘍、手術の合併症が原因となることがある一方、これらの要因が無くても発症する人が多い。治療は脳内にシャントと呼ばれる管を留置し、過剰な液を胸腔または腹腔へ導く方法が基本となる。
海水のアルカリ度を人為的に高めることで大気中の二酸化炭素を海洋へ取り込ませる、海洋由来の二酸化炭素除去(CDR)手法である。全米アカデミーズの2022年報告によれば、粉砕したケイ酸塩岩や炭酸塩岩、またはその溶解生成物を表層海洋に加えるとアルカリ度が増し、二酸化炭素が重炭酸イオンおよび炭酸イオンへ変換されてpHが上昇する。電気化学的に水酸化ナトリウムを生成し、大気中の二酸化炭素を重炭酸塩として引き込む方式もある。岩石風化による自然のアルカリ度増加では、マグネシウムまたはカルシウム系鉱物の溶解1モルあたり少なくとも1.5モル、炭酸塩鉱物では0.5モルの二酸化炭素が除去される。大気中の二酸化炭素の除去に加え、海洋酸性化を打ち消す効果も併せ持つ。
入力電源が失われた場合にも負荷への給電の連続性を保つための電源システムであり、変換器、スイッチ、および蓄電池などのエネルギー貯蔵装置を組み合わせて構成される。米国環境保護庁のENERGY STARプログラムの試験方法文書はこのように定義している。同文書は方式として、通常時は主電源から給電し入力喪失時にインバータへ切り替えるパッシブスタンバイ、通常時に調整された入力電源を供給するラインインタラクティブ、インバータが直流リンクまたは蓄電から常時給電するダブルコンバージョンの3種類を挙げる。
眼の奥にある視神経が損傷を受けることで視力低下や失明に至る眼疾患の総称である。米国国立眼研究所は、緑内障の多くで眼圧が高く、眼圧を下げる治療が進行を遅らせるのに役立つと説明する。ただし眼圧が高くても緑内障を発症しない人がいる一方、眼圧が正常でも生じる型がある。治療は眼圧を下げる点眼薬が最も一般的で、ほかに眼内の液の排出を促すレーザー治療、薬物とレーザーで効果が不十分な場合の手術がある。すでに失われた視野は治療では戻らない。
反芻動物の消化過程で生じるメタンである。国連食糧農業機関(FAO)によれば、ルーメン内の微生物が植物質を分解・発酵する際にメタンが生成され、動物のげっぷとして体外へ排出される。世界では年間およそ6億トンのメタンが大気中へ排出され、そのうち約60パーセントが人為起源で、農業は世界の人為起源メタン生成のほぼ半分を占める。牛の飼養頭数は世界最大で、世界の腸内発酵由来メタン排出の約75パーセントを占めるとされる。FAOは、家畜の栄養・健康・遺伝の改善を通じた技術的および政策的な解決策を挙げている。
膜を用い、成分の大きさと化学的性質の違いの組み合わせに基づいて流体中の成分を分離する操作である。米国環境保護庁の刊行物に収録されたVaneの解説によれば、大きさに基づく分離では膜を透過する物質の駆動力は加えられた流体の圧力勾配であり、化学的性質を介する分離では膜の上流側と下流側の化学ポテンシャル差が駆動力となる。圧力駆動型は精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、逆浸透に分けられる。海水淡水化では逆浸透に要する電気エネルギーが理論最小値の約2倍にとどまり、蒸発による熱分離を大きく下回る。
宇宙機との間でテレメトリ、追跡、コマンドの受け渡しを行う地上設備である。NASAの小型衛星技術動向報告によれば、地上セグメントは衛星から利用者へ情報を届けるために用いる地上側の要素全体を指し、地上局のほか、複数の地上要素を結ぶ地上ネットワーク、運用を管理する管制センター、利用者側の端末からなる。アンテナは高利得のパラボラが主で、S帯、X帯、Ka帯に対応する。地球低軌道や静止軌道からの受信はS帯とX帯が中心で、深宇宙ではX帯とKa帯が用いられる。
希土類・バリウム・銅酸化物の超伝導層を、金属テープ基板と中間層の上に薄膜として形成した線材である。結晶方位を面内・面外の両方向で揃えることで粒界による電流阻害を抑え、高い臨界電流密度を得る。第2世代高温超伝導線材とも呼ばれ、強磁場マグネットに用いられる。
二本鎖RNAを引き金に、配列特異的に標的mRNAを分解して遺伝子発現を抑える細胞内機構。siRNAがDicerで切断されRISC複合体に取り込まれて働く。
イーサネット上でRDMA(遠隔直接メモリアクセス)を実現する方式である。CPUを介さずにサーバ間でメモリ間転送を行い、遅延とCPU負荷を抑える。v2ではUDP/IPにカプセル化されIPルータを越えられるが、動作にはロスレスなイーサネット網を前提とする。
電気自動車と充電設備の間の通信インタフェースを定める国際規格群。ISO 15118-2 はメッセージ、データモデル、XML/EXIによる表現、V2GTP、TLS、TCP、IPv6の利用を規定し、2022年発行のISO 15118-20 は第2世代として双方向の電力伝送を定義する。
ヨウ素と硫黄の化合物を循環させ、熱によって水を水素と酸素に分解する熱化学サイクルである。電気分解と異なり高温の熱を直接投入する。高温ガス炉の熱利用先として研究され、ベンチスケールでの連続水素製造が実証されている。反応剤は循環して再利用され、正味の入力は水と熱、出力は水素と酸素となる。腐食性流体を扱う材料選定が課題である。
ITU-R が定める2030年以降の移動通信システムの枠組みで、いわゆる6Gの国際的な出発点となる上位文書。2023年11月に勧告 ITU-R M.2160 として承認され、没入型通信や通信とセンシングの統合を含む6つの利用シナリオと、遅延や信頼性などの能力目標を規定している。
体細胞にごく少数の因子を導入して作られる多能性幹細胞である。さまざまな組織や臓器の細胞へ分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力をもつ。マウスでは2006年、ヒトでは2007年に作製が報告され、患者由来の細胞を使う創薬研究と再生医療の双方で用いられている。
多数のアンテナ素子を配列し、素子間の相対位相を電子的に制御してビームを形成・走査するアンテナ。機械的な駆動を用いずにビーム方向をほぼ瞬時に切り替えられ、サブアレイごとに独立して制御することで、複数のビームを同時に別方向へ指向できる点が特徴である。
遺伝子治療において治療用の遺伝子を細胞へ届けるために用いられるウイルスベクターである。米国では、AAV5型のベクターを単回の静脈内投与で用い、肝臓で血液凝固第VIII因子を発現させる重症血友病Aの遺伝子治療が2023年に承認されている。ベクターに対する既存抗体の有無が投与対象を左右する。
メモリアレイの内部で直接演算を実行し、メモリと演算ユニットの間のデータ転送を減らす計算方式。データ移動に伴う消費電力を抑えられるため、深層ニューラルネットワークの推論に向くとされる。
世界保健機関(WHO)によれば、Aspergillus flavus および Aspergillus parasiticus というカビが産生するカビ毒である。穀類、油糧種子、香辛料、木の実などを汚染する。大量に摂取すると急性中毒(アフラトキシコーシス)を起こし、主に肝障害によって致命的になりうる。遺伝毒性をもち、ヒトで肝がんを起こしうる。