用語集

アスタキサンチン Astaxanthin
農業・食料

化学名を3,3′-ジヒドロキシ-β,β-カロテン-4,4′-ジオンとするカロテノイド系の色素である。米国食品医薬品局の着色添加物規則である連邦規則集21 CFR 73.35は、サケ科魚類の飼料に安全に使用できると定め、仕上がり飼料1キログラム当たり80ミリグラム、1トン当たり72グラムを超えないこととしている。養殖魚の肉色を高める目的で用いられる。

フォトバイオリアクタ Photobioreactor
農業・食料

微細藻類を閉鎖系で培養する装置である。Frontiers in Energy Research誌に2016年に掲載されたNaralaらの比較研究によれば、閉鎖型の培養系は高度に制御された条件で運転できるため品質の面で効率が高く、占有面積が小さい一方で光の利用可能性を高められる。開放型のレースウェイ池と比べると、汚染のリスクと蒸発による水の損失が低く再現性のある藻体が得られる反面、設備費が高く保守が難しい。両者を組み合わせた二段のハイブリッド方式も検討されている。

腸内発酵由来メタン Enteric Methane
農業・食料

反芻動物の消化過程で生じるメタンである。国連食糧農業機関(FAO)によれば、ルーメン内の微生物が植物質を分解・発酵する際にメタンが生成され、動物のげっぷとして体外へ排出される。世界では年間およそ6億トンのメタンが大気中へ排出され、そのうち約60パーセントが人為起源で、農業は世界の人為起源メタン生成のほぼ半分を占める。牛の飼養頭数は世界最大で、世界の腸内発酵由来メタン排出の約75パーセントを占めるとされる。FAOは、家畜の栄養・健康・遺伝の改善を通じた技術的および政策的な解決策を挙げている。

アフラトキシン Aflatoxin
農業・食料

世界保健機関(WHO)によれば、Aspergillus flavus および Aspergillus parasiticus というカビが産生するカビ毒である。穀類、油糧種子、香辛料、木の実などを汚染する。大量に摂取すると急性中毒(アフラトキシコーシス)を起こし、主に肝障害によって致命的になりうる。遺伝毒性をもち、ヒトで肝がんを起こしうる。

間断灌漑 AWD Alternate Wetting and Drying
農業・食料

収量を落とさずに水田の灌漑用水使用量を削減する節水技術。圃場を湛水と非湛水の状態に交互に置く。

官能評価 Sensory evaluation
農業・食料

食品などの摂取によって生じる刺激に対する人の反応を測定し、品質や嗜好を評価する方法論である。目的に応じて識別型、記述型、嗜好型の試験に分けられ、訓練されたパネルまたは一般消費者パネルを用いる。パネルの選抜、訓練、校正が測定の再現性を左右する。

ゲノム編集技術応用食品 Genome-edited foods
農業・食料

ゲノム編集技術で形質を改変した食品および添加物。日本では外来遺伝子が残らない場合、厚生労働省の取扱要領(令和元年9月19日決定)に基づく事前相談と届出で流通でき、外来遺伝子を含む場合は遺伝子組換え食品として安全性審査を受ける。届出品目にはGABA高蓄積トマトなどがある。

コールドチェーン Cold Chain
農業・食料

温度を管理したまま物を届ける供給網である。米国疾病予防管理センター(CDC)はワクチンのコールドチェーンを、ワクチンに関わる機器と手順のすべてを含む温度管理された供給網と説明し、製造工場の冷蔵設備に始まり、輸送と配送、医療機関での適切な保管を経て、患者への接種で終わるとする。冷蔵保管のワクチンは0℃以下に一度さらされただけで力価が完全に失われうるとされ、一度失われた力価は元に戻らない。

コク味物質 Kokumi substance
農業・食料

それ自体の味ではなく、基本味の強さを高める呈味修飾物質である。PLOS ONE に2012年に掲載された丸山らの研究は、コク味物質を塩味・甘味・うま味の強度を高める物質と説明し、カルシウム感知受容体(CaSR)がその受容体として働くとする。CaSR作動性のγ-グルタミルペプチドがコク味物質にあたり、なかでもγ-グルタミル-バリル-グリシン(γEVG)が最も強い。

CA貯蔵 CA Controlled atmosphere storage
農業・食料

貯蔵環境の酸素と二酸化炭素の濃度を制御して青果物の呼吸とエチレン生成を抑え、日持ちを延ばす技術。FAOは精密に監視・制御できる0.7〜1.5%の低酸素濃度の例を挙げ、包装内の雰囲気を調整するMA包装では酸素2〜5%、二酸化炭素8〜12%の設計例を示している。

自動走行農機 Autonomous agricultural machinery
農業・食料

ロボット技術を組み込んで自動走行・作業を行う車両系の農業機械。日本では農林水産省の「農業機械の自動走行に関する安全性確保ガイドライン」(平成29年3月策定、令和6年3月改正)が、リスクアセスメントの実施など安全性確保の考え方と関係者の役割を定めている。

脂肪代替素材 Fat replacer
農業・食料

脂肪の機能の一部または全部を担い、脂肪より少ないカロリーしか与えない食品素材である。Discover Food 誌に2025年に掲載された総説はこう定義したうえで、脂肪代替素材を、脂肪と同様に働く低カロリーまたは無カロリーの fat substitute と、水溶性で極性をもつ分子である fat mimetic に分ける。前者は炭水化物系・タンパク質系・脂質系に分類され、後者にはハイドロコロイド、タンパク質、タンパク質凝集体、エマルションゲル、セルロース微繊維が含まれる。

収穫ロボット Harvesting Robot
農業・食料

果実などの収穫作業を自動化する農業用ロボット。農研機構が開発したイチゴ収穫ロボットは、画像処理で果実の着色度を判別して収穫適期の果実だけを選択収穫する。人の腕に相当するマニピュレータとエンドエフェクタで果柄を把持切断して摘み取り、トレイ収容部に収める。移動プラットフォームに搭載され、通路側の機は通路を、内側の機は栽培ベッドの下を走行する。夜間に稼働させることで収穫労力を削減する。

植物育種 Plant Breeding
農業・食料

作物に望ましい形質を与えるため、交配と選抜を繰り返して新しい品種を作り出す取り組みである。農研機構の解説では、改良したい元品種と、目的の形質を持ち交配可能な系統を遺伝資源から探索し、両者を交配して後代を増やし、その中から目的の形質を持つ個体を選抜する手順を踏む。必要に応じて戻し交配を行い、形質が安定して受け継がれることを何世代かにわたって確認する。

植物工場 Plant factory
農業・食料

施設内で光・温度・湿度・二酸化炭素濃度・養分・水分などの生育環境を制御し、環境と生育のモニタリングを基礎に高度な環境制御と生育予測を行うことで、野菜等の周年・計画生産を可能にする栽培施設。農林水産省の整理では、人工光のみを用いる完全人工光型と、自然光を基本とする太陽光利用型に大別される。

植物フェノタイピング Plant Phenotyping
農業・食料

センシング技術で植物の形質を測定し、生育状態やストレスを定量する手法。Smart Agriculture誌のレビューは、ハイスループット植物フェノタイピングを、先端のセンシング技術を用いて育種で優良系統を選抜することに主眼を置くものと位置づけ、作物ストレスセンシングは水分・養分・病害虫などの生物的および非生物的ストレスを検出して定量し、可変管理につなげるものと説明する。

食用昆虫 Edible insects
農業・食料

昆虫を食品・飼料の原料として利用する分野。EUでは2018年1月1日施行の新規食品規則(EU)2015/2283に基づき、上市前に種ごとの安全性評価を受ける必要がある。EFSAは2021年1月に乾燥イエローミールワームについて初の評価を完了した。組成把握とアレルギー評価が課題とされる。

除草剤作用機構分類 HRAC Herbicide mode of action classification (HRAC)
農業・食料

除草剤を植物内で作用する生化学的な標的、すなわち作用機構(Mode of Action)ごとにグループ分けする国際的な分類体系である。Herbicide Resistance Action Committeeが管理し、同一グループの連用を避ける薬剤ローテーションによる抵抗性雑草の管理の基礎となる。

正規化植生指数 NDVI Normalized Difference Vegetation Index
農業・食料

近赤外光と可視光の反射の差を用いて植生の量と活性を推定する指標。クロロフィルが可視光を吸収し葉の細胞構造が近赤外光を反射する性質を利用する。NDVI=(NIR−VIS)/(NIR+VIS)で計算し、値は−1から+1に収まる。草地など疎な植生で0.2〜0.3、温帯林や熱帯雨林で0.6〜0.8となる。

生物的窒素固定 BNF Biological nitrogen fixation
農業・食料

原核生物が酵素ニトロゲナーゼによって大気中の窒素を植物が利用できる形へ変換する反応。窒素1モルの還元に16モルのATPを要する。マメ科植物と根粒菌の共生が最も重要な共生関係とされ、工業的なハーバー・ボッシュ法の代替として関心が寄せられている。

生物農薬 Biopesticide
農業・食料

米国環境保護庁(EPA)の説明によれば、有害生物を防除する天然由来の物質(生化学農薬)、有害生物を防除する微生物(微生物農薬)、および遺伝物質を導入した植物が産生する殺虫性物質(植物内殺虫性物質、PIP)を含む農薬の総称である。米国では農薬を上市する前に、連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)に基づきEPAが評価を行い、人の健康と環境に不合理な害の危険を及ぼさないことを確認する必要がある。

精密畜産 Precision Livestock Farming
農業・食料

家畜そのものや畜舎の設備にセンサーを取り付けて行う畜産の管理手法である。国連食糧農業機関(FAO)は、これによって畜舎の環境制御を動かし、家畜の健康状態、動き、繁殖に関わるものを含む必要事項を監視できるようになると説明する。電子個体識別(EID)タグに基づいて個体単位の管理を容易にする技術が複数開発されており、最も一般的なものは搾乳ロボットである。FAOは、農業におけるデジタル自動化技術のうち最初期のものが畜産部門から現れたとしている。

精密農業 Precision agriculture
農業・食料

圃場内のばらつきを観測・計測し、それに応じて管理を変える作物生産の手法。GPSを用いたトラクタ誘導システム、GPSによる土壌・収量マッピング、可変施用(VRT)などの技術群からなる。米国では2010年から2013年にかけてGPS誘導が作付面積の約半分に広がった一方、可変施用は約20%にとどまった。

精密発酵 Precision fermentation
農業・食料

微生物を宿主として特定のタンパク質や機能性成分を発酵で生産し、分離精製して素材に用いる手法。乳タンパク質β-ラクトグロブリンを糸状菌Trichoderma reeseiで生産した例では、FDAが2020年3月のGRASノティス回答書で疑問はないとしている。

全身獲得抵抗性 Systemic Acquired Resistance
農業・食料

局所的な感染をきっかけに、感染していない組織を含む植物体全体で幅広い病原体への抵抗性が長期に高まる誘導免疫である。サリチル酸とその受容体であるNPR1が中心的な役割を担う。防御の発動は成長ホルモン経路の抑制を伴うため、成長と防御のトレードオフをどう扱うかが実用上の課題となる。

総合的病害虫管理 IPM Integrated Pest Management
農業・食料

病害虫の生態に関する知識と複数の防除手段を組み合わせ、被害を経済的に許容できる水準に抑えつつ人や環境への影響を小さくする管理の考え方である。米国環境保護庁は、要防除水準の設定、モニタリングと同定、予防、防除という四段階として整理し、広範な薬剤散布を最後の手段と位置づけている。

多重ゲノム編集 Multiplex Genome Editing
農業・食料

ゲノム上の複数の標的をまとめて改変するゲノム編集の手法である。CRISPR-Casは正確で効率がよく、かつ多重の遺伝的改変を可能にした。Cas12ヌクレアーゼはT塩基に富むPAMを認識して適用範囲を広げるとともに、自身がcrRNAを処理する能力によって多重編集を行いやすくする。切断後の改変は内在のDNA修復経路を通じて生じる。

単細胞タンパク質 SCP Single-Cell Protein
農業・食料

微生物の菌体そのものを食品や飼料のタンパク質源として使うもの。水素酸化細菌を用いる方式では、電解で作った水素と大気中の二酸化炭素・窒素から菌体を育てる。Nature Communications の解析によれば、菌体の乾燥重量に占めるタンパク質は30〜80%で、残りは可食の脂質・炭水化物・微量栄養素である。

タンパク質分離物 SPI Protein Isolate
農業・食料

コーデックス規格では、大豆タンパク質製品のうちタンパク質含量が乾物基準で90%以上のものを大豆タンパク質分離物(SPI)と定義する。

土壌炭素貯留 Soil carbon sequestration
農業・食料

分解や流出で失われる量を上回る炭素が土壌に加えられ、土壌有機炭素として蓄積すること。FAOは表層30センチの土壌が大気と植生を合わせたよりも多くの炭素を含むとし、世界の土壌には年0.14〜0.57ペタグラム炭素の貯留ポテンシャルがあるとしている。