用語集

埋立地ガス Landfill Gas
環境・気候

埋立地の有機物が分解する際に自然に発生する副産物のガスである。米国環境保護庁(EPA)の埋立地メタン普及プログラム(LMOP)によれば、組成はおよそメタン50パーセント、二酸化炭素50パーセント、および少量の非メタン有機化合物からなる。同プログラムはIPCC第5次評価報告書に基づき、メタンの100年間の温暖化効果を二酸化炭素の少なくとも28倍としている。米国では都市ごみ最終処分場が人為起源メタン排出の第3位の発生源であり、2022年時点で約14.4パーセントを占める。回収したガスは発電、中カロリーガスとしての直接利用、およびメタン濃度を高めて二酸化炭素・窒素・酸素を減らす処理によって再生可能天然ガス(RNG)へ精製する用途に用いられる。

海洋アルカリ度増強 Ocean Alkalinity Enhancement
環境・気候

海水のアルカリ度を人為的に高めることで大気中の二酸化炭素を海洋へ取り込ませる、海洋由来の二酸化炭素除去(CDR)手法である。全米アカデミーズの2022年報告によれば、粉砕したケイ酸塩岩や炭酸塩岩、またはその溶解生成物を表層海洋に加えるとアルカリ度が増し、二酸化炭素が重炭酸イオンおよび炭酸イオンへ変換されてpHが上昇する。電気化学的に水酸化ナトリウムを生成し、大気中の二酸化炭素を重炭酸塩として引き込む方式もある。岩石風化による自然のアルカリ度増加では、マグネシウムまたはカルシウム系鉱物の溶解1モルあたり少なくとも1.5モル、炭酸塩鉱物では0.5モルの二酸化炭素が除去される。大気中の二酸化炭素の除去に加え、海洋酸性化を打ち消す効果も併せ持つ。

膜分離 Membrane Separation
環境・気候

膜を用い、成分の大きさと化学的性質の違いの組み合わせに基づいて流体中の成分を分離する操作である。米国環境保護庁の刊行物に収録されたVaneの解説によれば、大きさに基づく分離では膜を透過する物質の駆動力は加えられた流体の圧力勾配であり、化学的性質を介する分離では膜の上流側と下流側の化学ポテンシャル差が駆動力となる。圧力駆動型は精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、逆浸透に分けられる。海水淡水化では逆浸透に要する電気エネルギーが理論最小値の約2倍にとどまり、蒸発による熱分離を大きく下回る。

ISプロセス IS Iodine-Sulfur Thermochemical Water-Splitting Process
環境・気候

ヨウ素と硫黄の化合物を循環させ、熱によって水を水素と酸素に分解する熱化学サイクルである。電気分解と異なり高温の熱を直接投入する。高温ガス炉の熱利用先として研究され、ベンチスケールでの連続水素製造が実証されている。反応剤は循環して再利用され、正味の入力は水と熱、出力は水素と酸素となる。腐食性流体を扱う材料選定が課題である。

エンボディドカーボン Embodied Carbon
環境・気候

建築物のライフサイクルのうち、材料製造と建設、部材の維持・更新、解体と廃棄処理の各段階で生じる温室効果ガス排出量の総和を指す。運用段階のエネルギー消費に伴うオペレーショナルカーボンとは区別され、省エネ性能の高い建物ほど相対的な比重が大きくなる。

揮発性有機化合物 VOC Volatile Organic Compounds
環境・気候

蒸気圧が高く水への溶解度が低い化合物の総称である。米国環境保護庁(EPA)は発生源として、塗料・ラッカー、塗料剥離剤、洗浄用品、農薬、建材および室内装備、複写機やプリンタなどの事務機器に加え、工業用溶剤、燃料添加剤、水処理の塩素化で生じる副生成物を挙げている。多くのVOCは屋外より屋内で濃度が高い。

共通社会経済経路 SSP Shared Socio-economic Pathways
環境・気候

将来の人口・経済・技術・政策の前提を記述した社会経済シナリオ群。IPCC第6次評価報告書では、SSPと排出水準を組み合わせたSSPx-y形式のシナリオが用いられ、気候モデルの入力条件となる。企業の気候関連リスク評価でも共通の前提として使われる。

嫌気性消化 Anaerobic Digestion
環境・気候

酸素のない環境で細菌が有機物を分解する処理である。米国環境保護庁(EPA)のAgSTARは、家畜ふん尿、下水汚泥、食品廃棄物といった有機物を酸素の無い状態で細菌が分解する処理と説明する。分解はリアクタと呼ぶ密閉容器の中で進み、複数の有機物を1基の消化槽で併せて処理する混合消化は、分解しにくい廃棄物からのバイオガス収量を高められるとされる。生成するバイオガスはメタン50〜75パーセント、二酸化炭素、硫化水素、水蒸気、微量ガスからなり、加熱、発電、車両燃料に用いるほか、精製して再生可能天然ガスにできる。残る固体と液体は消化液と呼ばれ、敷料、肥料、堆肥、土壌改良材などに利用される。

高温ガス炉 HTGR High-Temperature Gas-cooled Reactor
環境・気候

冷却材にヘリウム、減速材に黒鉛を用い、被覆粒子燃料を装荷する原子炉である。軽水炉より高い温度の熱を取り出せる点が特徴で、日本の試験炉HTTRは炉出口冷却材温度950℃で設計されている。発電に加え、水素製造など高温の熱利用が想定される。冷却材の停止試験では自然に停止したと報告されている。

国際的に移転される緩和成果 ITMO Internationally Transferred Mitigation Outcomes
環境・気候

パリ協定6条2項に基づいて国家間で移転される緩和成果の単位。ホスト国が投資、能力構築支援、技術へのアクセスと引き換えに単位を売却し、購入国が自国の気候目標達成の不足分に充当する。発行から使用・移転までが国際登録簿で追跡され、二重計上を防ぐ仕組みが置かれている。

コミュニティソーラー Community solar
環境・気候

一定の地理的範囲において、複数の需要家が一つの太陽光発電設備の便益を分け合う事業形態である。加入者は月額の購読料を支払い、発電量に応じた価値をクレジットとして電気料金から差し引く形で受け取る。屋根に自ら設置できない賃貸居住者などにとっての参加手段となる。

再生可能エネルギー証書 REC Renewable Energy Certificate
環境・気候

再生可能エネルギーで発電され系統に供給された電力1メガワット時ごとに発行される市場性のある証書であり、電力そのものではなく環境価値などの非電力属性に対する権利を表す。追跡システムで管理され、需要家が再生可能電力の使用を主張する際の根拠となる。

CO2回収・利用・貯留 CCUS Carbon Capture, Utilisation and Storage
環境・気候

排出源からCO2を回収し、輸送したうえで地層に貯留するか、製品の原料として利用する一連の技術群。IEAは産業部門と発電部門に適用できる重要な排出削減技術と位置づけている。セメントや鉄鋼などプロセス由来の排出が避けられない産業で役割が大きい。

持続可能な航空燃料 SAF Sustainable Aviation Fuel
環境・気候

再生可能原料または廃棄物由来で、持続可能性基準を満たす航空燃料。ICAOのCORSIAでは、ライフサイクル排出量が従来の航空燃料の基準値より一定割合低いことが適格性の条件となる。既存の機体と給油設備をそのまま使えるドロップイン燃料である点が特徴である。

集じん装置 Dust Collector
環境・気候

排ガスに含まれる粒子状物質を捕集し、大気への排出を抑える装置の総称である。米国環境保護庁(EPA)のクリーンエア技術センターは、ろ過式集じん装置(バグフィルタ)、サイクロン、電気集じん装置、湿式スクラバ、重力沈降室、カートリッジ式集じん装置、HEPAおよびULPAフィルタといった方式ごとに、適用範囲・排出削減量・費用・特性をまとめた技術概要を公開している。このうちサイクロンについてEPAの大気排出モニタリング知識ベースは、遠心力と慣性力によって気流から粒子を分離するとし、装置内部に二重の渦を生じさせて気体をらせん状に旋回させると説明する。サイクロンは一般に直径10マイクロメートルを超える粒子の捕集に用いられ、後段の集じん装置の入口粒子負荷を下げる前処理装置として使われることが多い。

人工降雨(雲の種まき) Cloud Seeding
環境・気候

人工降雨(クラウドシーディング)は、雲に粒子を加えて液滴や氷晶の数と大きさを変え、降水の量や性質を変えようとする気象調節の代表的な手法である。WMOは、50を超える国で気象調節の事業が行われていると述べ、推進も抑制もしない立場を示している。

スコープ3排出量 Scope 3 emissions
環境・気候

企業の自社操業と購入電力以外、すなわちバリューチェーン上で生じる温室効果ガス排出を指す。GHGプロトコルのScope 3基準は上流・下流にわたる15のカテゴリを定めており、多くの企業では総排出量の大半がこのスコープ3に由来するとGHGプロトコルは述べている。

測定・報告・検証 MRV Measurement, Reporting and Verification
環境・気候

温室効果ガスの排出量や削減効果を測定し、定められた形式で報告し、第三者が検証する一連の手続き。国別のインベントリからカーボンクレジットの発行まで、気候に関する数値の信頼性を支える基盤であり、近年は衛星観測やセンサを用いた計測の自動化が進んでいる。

太陽光熱複合集熱器 PVT Photovoltaic-Thermal Collector
環境・気候

太陽光発電セルと太陽熱集熱器を組み合わせ、太陽放射を熱エネルギーと電気エネルギーの双方に変換する技術。

地下水浄化 Groundwater remediation
環境・気候

汚染された地下水から有害物質を除去、分解、封じ込める一連の技術。地中で処理する原位置(in situ)技術と、揚水・掘削して地上で処理する ex situ 技術に大別される。米国EPAはCLU-INで技術ごとの原理、期間、留意点を整理している。

直接空気回収 DAC Direct Air Capture
環境・気候

周囲の大気からCO2を化学的に分離し、純度の高いCO2流として取り出す技術。回収したCO2を地中に貯留する場合はDACCSと呼ばれ、二酸化炭素除去の代表的な工学的手法となる。大気中のCO2濃度が低いため、投入エネルギーと装置規模がコストを支配する。

データ同化 Data Assimilation
環境・気候

観測データと直前の短期予報を組み合わせ、予報モデルの初期値として最も確からしい大気の状態を推定する処理である。解析と背景場を更新しながら循環させる手法で、観測が少ない領域ほど不確実性が大きく、数値天気予報の精度を左右する中核の工程となっている。

電気透析 Electrodialysis
環境・気候

陰イオン交換膜と陽イオン交換膜を交互に並べ、電位差によって水中のイオンだけを膜の間で移動させ、脱塩室と濃縮室に分ける分離方式である。気候技術センター・ネットワーク(CTCN)の解説では、膜がイオン性の物質だけを通すため有機物との分離を効率よく行える。高圧ポンプを要さないため運転費用は逆浸透と同程度以下にとどまり、水の再利用率は組成によるがおよそ90%に達するとされる。

電力購入契約 PPA Power Purchase Agreement
環境・気候

第三者が再生可能エネルギー設備を設置・保有・運営し、需要家があらかじめ定めた単価で電力を購入する長期契約である。需要家は設備の初期投資や保守を負担せずに済み、契約では発電に伴う環境価値(証書)の帰属も定める。契約期間は15〜20年が一般的とされる。

TRISO燃料 TRISO TRISO Fuel (Tri-structural Isotropic coated particle fuel)
環境・気候

ウランの燃料核を炭素系・セラミック系の複数層で被覆した粒子状の原子炉燃料である。粒子ひとつひとつが核分裂生成物を閉じ込める障壁として働き、中性子照射や高温への耐性が高い。ペレットや球状のペブルに成形し、高温ガス炉や溶融塩冷却炉に用いる。燃料そのものが閉じ込め障壁となる点が従来燃料と異なる。

二酸化炭素除去 CDR Carbon Dioxide Removal
環境・気候

大気中のCO2を人為的に回収し、地質・陸域・海洋の貯留層または製品の中に永続的に貯留する活動の総称。発生源での排出削減とは区別される概念で、削減が困難な残余排出の相殺と、正味で負の排出を実現する経路の両方を担う。手法により貯留の耐久性と計測の難しさが異なる。

バイオエネルギーCO2回収・貯留 BECCS Bioenergy with Carbon Dioxide Capture and Storage
環境・気候

バイオマスを燃料とする施設にCO2回収・貯留(CCS)を適用する手法。バイオマスが生育の過程で吸収した炭素を地中に固定するため、系全体では大気中のCO2が減る。除去量の正当性は、原料の栽培・輸送や土地利用変化まで含めた評価に依存する点が重要である。

風化促進 ERW Enhanced Rock Weathering
環境・気候

ケイ酸塩岩や炭酸塩岩を粉砕して農地などに散布し、岩石が大気中のCO2と反応して溶解する自然の風化速度を人為的に高める二酸化炭素除去手法。採石・粉砕・輸送という既存の産業インフラを流用できる一方、除去量の測定と検証の方法論が事業性を左右する。

膜蒸留 MD Membrane Distillation
環境・気候

疎水性の多孔質膜を隔てて温度差を与え、高温側で蒸発した水蒸気だけを細孔を通して透過側へ移し、凝縮させて回収する分離法。Membranes誌の総説によれば、典型的な工程は供給液の蒸発、疎水性膜の細孔を通した蒸気の移動、透過側での凝縮という3段階からなり、淡水化・不揮発性物質の除去・溶液の濃縮に用いられる。

水再利用 Water Reuse
環境・気候

一度使われた水を処理して別の用途へ回すことである。米環境保護庁は、水再利用を、都市下水や雨水などの排水を処理して、緑地灌漑から飲用水にいたる代替用途へ振り向けることと説明する。水源には雨水、都市下水、家庭排水、産業排水があり、用途ごとに必要な水質が異なるため、処理の程度を用途に合わせて設計する考え方が取られる。用途には製油所やデータセンターの冷却、灌漑、地下水涵養などがある。