Systemic Acquired Resistance
全身獲得抵抗性は、植物の一部で起きた感染をきっかけに、感染していない組織を含む植物体全体で幅広い病原体に対する抵抗性が長期に高まる現象である。出典のThe Plant Cellの総説によれば、1961年にA. Frank Rossによって報告され、局所での蓄積だけでなく、感染していない全身組織におけるサリチル酸の新規合成が必要とされる。
サリチル酸の主要な受容体かつ転写共役因子としてNPR1が働く。NPR1はジスルフィド結合の還元、リン酸化、SUMO化、ユビキチン化といった翻訳後修飾を受け、核への移行と遺伝子の活性化が制御される。植物免疫はこれと連動する二層構造として整理される。パターン認識受容体が微生物由来の分子パターンを検知して活性酸素種の産生とサリチル酸合成を促す層(PTI)と、NLR受容体が病原体のエフェクターを検知し、しばしばプログラム細胞死を伴う層(ETI)である。総説は、サリチル酸がオーキシンやジベレリンといった成長ホルモンの経路を抑えながら免疫を活性化する費用便益的な応答を統御し、NPR1がユビキチンを介した分解によってこれら成長経路に拮抗すると説明している。
防御の常時活性化は収量の低下につながりうるため、必要な時期と部位に限って抵抗性を発動させる制御が実用上の要件となる。抵抗性誘導剤の散布、抵抗性品種の育種、遺伝子発現の制御による形質付与など、複数のアプローチが検討されている。