用語集

アミロイドーシス Amyloidosis
バイオ・創薬

毒性をもつ不溶性のβシート線維状タンパク質凝集体が組織に沈着することで生じる、不均一な疾患群である。X線回折ではβプリーツシート構造を示し、コンゴーレッド染色で黄緑色の複屈折を示すことが診断上の特徴になる。全身性の主な型には AL、ATTR、AA がある。

アルツハイマー病 AD Alzheimer's Disease
バイオ・創薬

記憶と思考の能力をゆっくりと破壊し、やがて最も単純な作業を行う能力までも失わせる脳の疾患である。米国国立老化研究所は高齢者における認知症の最も一般的な原因と位置づける。脳内にはアミロイド斑とタウのもつれが蓄積し、神経細胞間の結合が失われる。損傷は記憶の形成に関わる海馬と嗅内皮質から始まる。

αシヌクレイン SNCA Alpha-synuclein
バイオ・創薬

シヌクレイン科に属し脳に豊富に発現する蛋白質。その異常はパーキンソン病の発症機序に関与するとされる。

アレルギー Allergy
バイオ・創薬

多くの人には問題を起こさない物質に対して免疫系が反応することをいう。米国立医学図書館は、本来は病原体と戦う免疫系が誤った警報に応じている状態と説明する。花粉、ダニ、カビの胞子、動物のフケ、食物、虫刺され、医薬品が反応を起こしやすい物質として挙げられる。症状は軽度から重度まであり、アナフィラキシーは生命を脅かす。

アンチセンスオリゴヌクレオチド ASO Antisense Oligonucleotide
バイオ・創薬

標的RNAの塩基配列に相補的に結合する短い合成一本鎖核酸である。結合後にRNase H1を介して標的RNAの分解を導く型と、分解を伴わずに標的部位を立体的に覆ってスプライシングや翻訳を変える型がある。配列情報から設計できるため、低分子や抗体では狙いにくい標的にも適用され、核酸医薬の主要なモダリティの一つとなっている。

アンドロゲン性脱毛症 AGA Androgenetic Alopecia
バイオ・創薬

男性にも女性にも生じる頻度の高い脱毛の形態である。男性では男性型脱毛症と呼ばれ、両側のこめかみの上から生え際が後退して特徴的なM字形となり、頭頂部も薄くなって部分的あるいは完全な脱毛へ進むことがある。女性では頭頂部が薄くなって中央の分け目が広がる一方、生え際は通常後退せず、完全な脱毛に至ることはまれである。

EV充電設備 EVSE Electric Vehicle Supply Equipment
モビリティ

電気自動車へ電力を供給する設備である。米エネルギー省の代替燃料データセンター(AFDC)は、充電ポートを、複数のコネクタを備えていても一度に1台の車両にのみ給電する単位と定義し、コネクタを車両に差し込んで充電する部分としている。交流のレベル1(120V、1.9kW)、交流のレベル2(208Vまたは240V、2.9〜19.2kW)、直流急速充電(最大500kW)に区分される。

EUVリソグラフィ EUV Extreme Ultraviolet Lithography
半導体

波長13.5nmの極端紫外光を使って回路パターンをウェハに転写する露光技術。ASMLはこの波長がDUV露光に使う光の14分の1以下だと説明している。DUVでは複数回の露光を重ねて作っていた微細寸法を、より少ない工程で形成できる。光源にはレーザー生成プラズマ方式が使われる。

イオン液体 IL Ionic Liquid
素材・化学

陽イオンと陰イオンだけ、またはほぼそれだけで構成される液体。IUPACゴールドブックの定義による。室温で液体のものは室温イオン液体と呼ばれる。融点がおよそ100℃以下の有機塩を指すことが多く、蒸気圧がほとんどないことから溶媒や電解質に用いられる。

イオントラップ量子コンピュータ Trapped-ion quantum computing
量子

電磁場で真空中に捕捉したイオンの内部準位を量子ビットに使う方式。同一種・同一同位体のイオンは本質的に同一であり、コヒーレンス時間とゲート時間の比が高いことが利点とされる。2量子ビットゲートはイオン間で共有される振動モードを情報伝達のバスとして利用する。

異常検知 Anomaly Detection
AI基盤

データの中から、大多数の振る舞いから外れた少数の事例を見つけ出す技術である。外れ値検知や新規性検知とも呼ばれ、正常データに比べ異常が稀でラベル付けも難しいという固有の難しさを持つ。近年は深層学習を用いた手法の研究が体系的に整理されている。運用では誤検知の抑制が課題となる。

1型糖尿病 T1D Type 1 Diabetes
バイオ・創薬

体内でインスリンがほとんど、あるいはまったく作られなくなる疾患である。米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所は、免疫系が膵臓のインスリン産生細胞を破壊することで発症する自己免疫疾患と説明する。ほとんどの患者は血糖値を管理し生命を保つために毎日インスリンを投与する必要がある。糖尿病患者の5〜10パーセントを占める。

遺伝子治療 Gene Therapy
バイオ・創薬

米国食品医薬品局(FDA)は、ヒト遺伝子治療を、遺伝子の発現を改変もしくは操作すること、または治療目的で生細胞の生物学的性質を変えることを目指すものと説明する。手法として、疾患の原因となる遺伝子を正常なコピーで置き換える、正しく機能していない原因遺伝子を不活化する、疾患の治療を助ける新規または改変した遺伝子を体内へ導入する、の3つが挙げられている。

遺伝子補充療法 Gene augmentation therapy
バイオ・創薬

変異により機能を失った遺伝子に対し、正常な遺伝子のコピーを標的細胞へ導入して機能を補う遺伝子治療の方式である。網膜疾患では、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて網膜の標的細胞へ導入する手法が中心とされる。遺伝子を書き換える編集型や、エクソンスキッピング型とは区別される方式である。

遺伝性出血性末梢血管拡張症 HHT Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia
バイオ・創薬

血管に複数の異常が生じる遺伝性の疾患である。一部の動脈が毛細血管を経ずに直接静脈へ流れ込む動静脈奇形が生じ、毛細血管という緩衝を欠くまま高い圧力の血液が静脈へ流れ込むため血管が拡大する。皮膚表面近くに現れたものは赤い斑点として視認でき、テランジエクタジアと呼ばれる。ACVRL1、ENG、SMAD4などの遺伝子の変異が原因として挙げられている。

意図した機能の安全性 SOTIF Safety of the Intended Functionality
モビリティ

部品が故障していなくても、機能の不足や合理的に予見可能な誤使用によって危険が生じることを扱う安全の考え方。ISO 21448:2022 が一般的な論証の枠組みと、設計・検証・妥当性確認および運用段階での対策の指針を示している。適用対象は、複雑なセンサとアルゴリズムによる状況認識を必要とする機能である。

イベントベースビジョンセンサ DVS event camera / dynamic vision sensor
センシング・光学

画素ごとに対数輝度の変化を独立に監視し、変化が閾値に達した画素だけが非同期にイベントを出力するイメージセンサ。イベントはマイクロ秒分解能で時刻付けされ、ダイナミックレンジは120 dBを超える。全画素を一定周期で読み出す従来型センサとは出力形式が根本的に異なる。

医薬品開発製造受託機関 CDMO Contract Development and Manufacturing Organization
バイオ・創薬

医薬品の開発と製造を委託者に代わって担う事業者を指す業界呼称である。FDAは受託施設を「所有者に代わって一つ以上の製造工程を行う者」と定義し、製剤化や充填、分析試験などの委託範囲と当事者それぞれの責任を品質取決めで明確にするよう求めている。

医用画像管理システム PACS Picture Archiving and Communication System
ヘルスケアデバイス

医用画像の受け取り、転送、表示、保存、デジタル処理を担うシステムである。撮像装置との通信にはDICOM、患者情報や検査オーダの授受にはHL7が用いられ、医療機関における画像情報の正となる保管庫として機能する。画像解析ソフトが臨床で使われるうえでの接続先となる一方、患者情報が集積するためセキュリティ上の重点対象でもある。

医療機器としてのソフトウェア SaMD Software as a Medical Device
ヘルスケアデバイス

ハードウェア医療機器の一部となることなく、単独で一つ以上の医療目的を果たすことを意図したソフトウェア。IMDRFが定めFDAも採用する定義であり、医療機器に組み込まれて動作するソフトウェアや、機器の製造・保守に用いるソフトウェアとは区別される。日本ではプログラム医療機器として規制される。

医療用ラジオアイソトープ Medical Radioisotopes
バイオ・創薬

World Nuclear Association の解説によれば、核医学は臓器の機能についての診断情報を得るため、または治療のために放射線を用い、そこで使われる放射性同位体が医療用ラジオアイソトープである。核医学の処置は年間5,000万件を超え、需要は増えているとされる。主要な診断用核種であるTc-99mは原子炉で製造したMo-99から得るジェネレータで供給され、PET用のF-18のように加速器で製造する核種の利用も広がっている。

インシリコ臨床試験 ISCT In Silico Clinical Trial
バイオ・創薬

医薬品・医療機器・医療介入の開発または規制評価において、個別化した計算機シミュレーションを用いる手法。

インスリンポンプ Insulin Pump
ヘルスケアデバイス

一日を通じて一定量のインスリンを投与する小型の機器である。米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所は、身体の外側に装着し、細いプラスチックチューブを皮下に留置して24時間インスリンを送り込むものと説明する。必要に応じて投与量を増減するようプログラムでき、食事の際に追加投与もできる。

インターロイキン23受容体 IL-23R Interleukin-23 Receptor
バイオ・創薬

免疫細胞の表面にある受容体で、サイトカインのインターロイキン23が結合すると細胞内へ信号が伝わり、炎症を促す反応と免疫応答の調整が起きる。乾癬、クローン病、強直性脊椎炎など複数の炎症性疾患と遺伝的な関連が報告されており、炎症性疾患領域の創薬標的として研究されている。

インピーダンス制御 Impedance Control
ロボティクス

ロボットが環境と接触する際に、位置や力そのものではなく、外部からの変位と反力の関係(機械インピーダンス)を制御対象とする手法。Neville Hoganが1985年に理論として体系化し、ロボット側をインピーダンス、環境側をアドミタンスとして対で記述する枠組みを与えた。接触を伴う作業の制御の基礎になっている。

インフレータブル熱シールド HIAD Inflatable Heat Shield
宇宙

折り畳んで打ち上げ、大気圏突入前に膨張させて大きな空力面をつくる減速・熱防護装置。NASAは極超音速インフレータブル空力減速装置(HIAD)として開発しており、柔軟な熱防護材と膨張式の構造からなる。

ウエハースケール集積 WSI Wafer-Scale Integration
半導体

ウエハーを個々のダイに切り分けず、1枚をそのまま1個の巨大なチップとして使う実装方式。ダイ間の通信遅延をなくし、大容量のオンチップメモリを演算器の近くに置ける。通常のダイ面積の上限がおよそ800平方ミリメートルであるのに対し、300mmウエハー1枚を使うと46,225平方ミリメートルに達する。

宇宙交通管理 STM Space Traffic Management
宇宙

宇宙空間への安全なアクセス、軌道上での衝突防止、安全な帰還・再突入までを対象とする管理の枠組み。国連宇宙空間平和利用委員会の技術発表資料では、宇宙環境の持続可能性と保全を目的として位置づけられている。宇宙状況把握で得た情報をもとに運用者間の行動を調整する層にあたる。

宇宙状況監視 SSA Space Situational Awareness
宇宙

宇宙環境、特に軌道上および地上のインフラに対する危険について、適時かつ正確な情報・データ・サービスを提供する取り組み。

宇宙太陽光発電 SBSP Space-Based Solar Power
宇宙

軌道上で太陽エネルギーを集め、地上へ伝送して電力系統に供給する構想である。欧州宇宙機関(ESA)のSOLARIS計画のFAQは、宇宙太陽光発電が原子力・水力・石炭・ガスの発電所と同様に、連続的で安定したベースロード(非間欠)電源を電力系統へ供給しうると説明している。エネルギー変換の各段階で損失が生じるため、衛星のパネルに入射した電力のおよそ10〜15%を系統へ届けることが目標として置かれている。