用語集

量子中継器 Quantum Repeater
量子

光ファイバ中の損失が距離に対して指数関数的に増えるために制限される量子通信の到達距離を、伝送路を短い区間に分割し、区間ごとに生成したもつれを順次接続することで延伸する装置である。量子メモリとエンタングルメントスワッピングを主要な構成要素とする。

量子ビット Qubit (quantum bit)
量子

量子情報の最小単位。古典ビットが0か1のどちらかを取るのに対し、量子ビットは0の状態、1の状態、またはその混合を取りうる。複数の量子ビットはもつれによって単一の量子状態を共有し、1個増やすごとに表現できる組合せが倍になる。超伝導回路、捕捉イオン、中性原子、光子など実装方式に依存しない抽象概念である。

量子メモリ Quantum Memory
量子

光子などが担う量子状態を、重ね合わせや量子もつれを保ったまま一定時間保持し、必要な時刻に取り出す素子である。量子中継器では、区間ごとに確率的にしか成功しないもつれ生成の時刻を揃える役割を担い、保持時間、忠実度、同時に扱えるモード数が系全体の性能を規定する。

量子もつれ Quantum entanglement
量子

光子や電子などの粒子が結びつき、遠く離れても測定結果に相関が現れる現象。個々の粒子がもつ性質ではなく、粒子間の関係から生じる創発的な性質とされる。光速を超える通信によるものではないと説明され、量子計算の2量子ビットゲート、量子通信、量子センシングの基盤になっている。

リンパ浮腫 Lymphedema
バイオ・創薬

皮膚と筋肉の間にリンパ液が溜まることで生じる腫れである。米国国立がん研究所(NCI)のPDQはこう定義し、がんそのものやがん治療がリンパ液の流れを妨げることで起こるとする。腫瘍による閉塞、手術によるリンパ液の流れの途絶、放射線治療でできた瘢痕組織による閉塞の3つが挙げられている。治癒させることはできないが腫れを和らげる治療は可能な慢性の状態であり、早く治療を始めるほど管理しやすいとされる。

ルビスコ RuBisCO Ribulose-1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase
農業・食料

光合成において無機炭素を有機物へ取り込む反応を触媒する酵素である。光合成を行う細胞に大量に存在し、地球上で最も存在量の多いタンパク質とされる。必須アミノ酸を広く含み可溶性が高いことから、近年は葉や水生植物から抽出した食品用タンパク質素材としての利用も進む。

レーザー電力伝送 Laser Power Beaming
宇宙

電力をレーザー光に変換して空間を伝搬させ、受電側の光電変換素子で電力に戻す無線電力伝送方式である。送電側のビーム整形と捕捉・追尾・指向機構、受電側の光電変換効率が性能を決める。配線を敷設できない宇宙機や無人機への給電手段として研究されている。

レーザー誘起前方転写 LIFT Laser-Induced Forward Transfer
製造・工作機械

透明な供与基板に塗布した材料へレーザーパルスを照射し、その反発で材料を受容基板へ射出・堆積させるデジタル印刷技術。マスクやステンシル、ノズルを使わずに微小体積を任意の位置へ転写でき、固体・ペースト・液体のいずれにも適用される。電子実装やバイオプリンティングで用いられる。

レーザー誘起ブレークダウン分光法 LIBS Laser-Induced Breakdown Spectroscopy
センシング・光学

パルスレーザーを対象に照射してプラズマを発生させ、その発光スペクトルから元素組成を求める分析法である。NASAジェット推進研究所(JPL)は、レーザーのパルスを岩石などの標的に撃ち込むと、そのエネルギーが針の頭ほどの領域を発光する電離気体すなわちプラズマに変え、装置内の分光器がプラズマの発する光のスペクトルを解析して標的に含まれる元素を同定すると説明する。元素ごとに発光する波長が異なることを利用する。

レーダー Radar
センシング・光学

電波を放射し、対象からの反射を受信して距離と速度を求める装置である。米国海洋大気庁(NOAA)は、radarがradio detection and ranging(電波による探知と測距)の頭字語であると説明する。電波を送り出す送信機と、反射して戻るエネルギーを捉える受信機からなり、気象レーダーWSR-88Dでは送信と受信に同じアンテナを用いる。ごく短いパルスを送信し、往復に要した時間から距離を求める。動いている対象に当たると戻る波の位相がずれ、これを用いて速度を判定する。

レジスタ転送レベル RTL Register-Transfer Level
半導体

同期式ディジタル回路を、ハードウェアレジスタ間の信号(データ)の流れと、その信号に施される論理演算として記述する設計の抽象度。VerilogやVHDLなどのハードウェア記述言語で記述し、論理合成によってゲートレベルの記述へ変換してASICやFPGAの実装につなげる。

レドックスフロー電池 RF電池 Redox flow battery
エネルギー・蓄電

電解液を外部タンクに貯め、ポンプでセルスタックへ循環させて充放電する二次電池。バナジウム系の起電力は約1.4V。容量はタンク内のバナジウム量、出力はセルサイズで決まるため両者を独立に設計でき、充放電サイクル数に原理的な制限がない。長時間放電が要る系統用途に向く。

連続バッチング Continuous Batching (Iteration-level Scheduling)
AI基盤

生成モデルの推論において、リクエスト単位ではなく生成の1反復単位でスケジューリングを行う方式である。各反復の終了時に完了したリクエストをバッチから外して即座に応答を返し、待機中の新しいリクエストを空いた枠へ差し込む。生成長がばらつく状況での計算資源の遊びを減らす。

ローカル5G Local 5G
通信・ネットワーク

地域の企業や自治体などが、自らの建物内や敷地内にスポット的かつ柔軟に構築できる第5世代移動通信システム。総務省の制度では無線局免許が必要で、4.5GHz帯と28GHz帯を使う。利用形態は自己土地利用と他者土地利用に区分され、2023年8月の制度改正で共同利用が追加された。

漏水検知 Leak Detection
環境・気候

配管や水利用設備からの漏水を発見し、修繕につなげる一連の手法である。米国環境保護庁(EPA)のWaterSense at Workは、需要の少ない時間帯に全設備を止めてメーターを読み、メーターの変化や漏水表示で漏れを見つける方法、配管の外部または管路内に設置して水使用量を通信し、異常な使用挙動を検知すると警報を送る流量監視機器、漏水や浸水の起きやすい場所に置き、水に触れると警報または遮断弁を作動させるセンサー、目視と聴音による点検を挙げている。

ROS 2 Robot Operating System 2
ロボティクス

ロボット向けのオープンソース開発基盤。通信層に業界標準のDDSを採用し、分散的なノード発見、標準プロトコルDDSI-RTPS、遅延や信頼性を設定できるQoSを備える。ROS 1にあった中央マスタへの依存がなく、通信の単一障害点が存在しない点が構造上の大きな違いである。

ワイヤレス電力伝送 WPT Wireless Power Transfer
エネルギー・蓄電

コネクタを用いずに離れた機器へ電力を送る技術である。Sensors誌の総説は、ワイヤレス電力伝送を、機器を遠隔から非接触で充電するきわめて便利な手段と位置づけ、電磁的に結合する方式と結合しない方式、および音響を用いる方式を概観する。ミリメートルからキロメートルまでの距離、ミリワットからメガワットまでの電力、kHzからTHzまでの波を扱う解が示されている。コネクタを避けられるため腐食や粉塵・水分の侵入を防げる一方、主たる課題は伝送の効率と到達距離にある。