トリチウム増殖ブランケット

Tritium Breeding Blanket

核融合炉の炉心を取り囲み、重水素・トリチウム反応で発生した高エネルギー中性子をリチウムに吸収させて、燃料であるトリチウムを炉内で生成する機器である。燃料の自給と発電のための熱回収を同時に担うため、核融合を実験装置から発電プラントへ移行させる上で不可欠な要素と位置づけられる。

詳細

概要

重水素・トリチウム反応を用いる核融合炉では、トリチウムが天然にほとんど存在しないため、炉内で作り出す必要がある。ITER機構は「リチウムを含むブランケットを増殖ブランケットと呼ぶ」と説明しており、これを炉心の周囲に配置して燃料の自給を目指す。

技術的な要点

重水素・トリチウム反応で発生する高エネルギー中性子がブランケット内のリチウムに入射すると、ITERの解説によれば「入射中性子がリチウム原子に吸収され、トリチウム原子とヘリウム原子に組み替わる」。この反応によって消費した以上のトリチウムを生成できるかがブランケット設計の中心課題であり、中性子増倍材の併用や中性子輸送計算(ニュートロニクス)による評価が行われる。同時に、中性子の運動エネルギーが熱に変換されるため、ブランケットは発電のための熱回収系も兼ねる。ITERでは赤道ポートにテストブランケットモジュールを設置し、水冷リチウム鉛、水冷セラミック増殖材、ヘリウム冷却セラミック増殖材、ヘリウム冷却セラミックペブルの4方式を実機環境で試験する計画である。

産業での位置づけ

増殖ブランケットは核融合炉を「実験装置」から「発電プラント」に変える中核要素であり、材料、伝熱、中性子工学、トリチウム取扱いが交差する。IAEAはこの分野で技術会合を開催しており、各国の研究機関と民間の核融合企業が並行して開発を進めている。