Domain Randomization
シミュレーションで学習したモデルが実機で動かない、いわゆるリアリティギャップに対処する手法である。2017年のTobinらの研究は、シミュレータのレンダリングを大きくランダム化して学習させることで、現実世界を学習時に見た多数の変種のひとつとしてモデルに扱わせるという考え方を示した。
同研究では、現実らしさを追求するのではなく、あえて非現実的なランダムテクスチャを用いて描画条件を変動させた。実画像による事前学習を一切行わず、シミュレーション画像のみで学習した物体検出器が、実環境で1.5cmの精度を達成し、妨害物や部分的な遮蔽に対しても頑健であったと報告されている。この検出器を用いて、雑然とした環境での把持動作が実行された。シミュレーションRGB画像のみで学習した深層ネットワークをロボット制御のために実世界へ転移させた最初の成功例と位置づけられている。以後、視覚だけでなく質量、摩擦、遅延といった物理パラメータのランダム化にも同じ考え方が適用されている。
実機でのデータ収集は時間と費用がかかり、危険な動作の試行も難しい。学習をシミュレーション側に寄せられるかどうかは開発速度と資本効率を直接左右するため、シミュレータの整備と転移手法は、ロボット学習を扱う企業の実力を測る主要な評価軸になっている。