用語集

裏面電源供給網 BSPDN Backside Power Delivery Network
半導体

電源供給網をチップ表面の多層配線から裏面へ移す構造。imecは電源配線がBEOLの配線資源の少なくとも20%を占めていると指摘しており、埋め込み電源レールと裏面給電の組み合わせによりIRドロップが7分の1に低減したとArmとの検討で報告している。

Ultra Ethernet UEC Ultra Ethernet
通信・ネットワーク

AIおよびHPCの大規模ワークロードに対応することを目的として、Ethernetを基盤に策定されている通信スタックの仕様である。個別のプロトコル改良ではなく、相互運用可能で高性能な完全な通信スタックを対象とする。策定はUltra Ethernet Consortiumが行っている。

運行設計領域 ODD Operational Design Domain
モビリティ

自動運転システムが機能するよう設計された運行条件の範囲。ISO 34503は、この条件を静的属性と動的属性からなる階層的な分類体系で記述することを求めており、主にレベル3と4のシステムを対象とする。レベル5は制限のない領域を持つ扱いになる。

運転自動化レベル Levels of Driving Automation
モビリティ

運転自動化の度合いを0から5の6段階に区分する分類。米国NHTSAの説明では、レベル0から2までは人間が運転の責任を負い、レベル3は要請があれば運転者が引き継ぐことを前提とし、レベル4以降は限定された範囲または全条件下でシステムが運転タスクの責任を負う。

AMPA型グルタミン酸受容体 AMPAR AMPA receptor
バイオ・創薬

グルタミン酸を内因性リガンドとするイオンチャネル型受容体の一種で、中枢神経系の速い興奮性シナプス伝達を担う。GluA1からGluA4の4種のサブユニットが四量体を形成し、選択的に作用する合成作動薬AMPAの名にちなんで分類された受容体である。

衛星コンステレーション Satellite Constellation
宇宙

複数の衛星を一つのシステムとして協調動作させる構成を指す。軌道高度、傾斜角、軌道面の数と面内の位相差といった配置設計により、観測の再訪頻度、通信のカバレッジや遅延といった性能が決まる。代表的な配置方式にWalker deltaとWalker starがあり、階層型や複数軌道併用型も用いられる。

衛星ダイレクト通信 D2D Satellite Direct-to-Device
通信・ネットワーク

一般の携帯端末やIoT機器が、専用の衛星端末を介さずに衛星と直接通信する方式。地上向けLTEをそのまま用いる方法と、3GPPがRelease 17で導入した非地上系ネットワーク(NTN)に基づく方法があり、長い伝搬遅延と大きなドップラーシフトの補償が課題となる。

衛星バス Satellite Bus
宇宙

人工衛星のうちミッション機器を除いた共通基盤部分。構造、電源、姿勢制御、熱制御、通信、データ処理、推進などの系をまとめ、搭載機器を保持して電力と機械的・熱的に安定した環境を供給する。同じバスを複数のミッションへ転用し、開発費と検証工数を抑える設計が一般的である。

映像監視システム VSS Video Surveillance System
センシング・光学

セキュリティ用途で設置する映像監視の設備群である。国際規格 IEC 62676-1-1:2013 は、セキュリティ用途に設置される映像監視システム(VSS。従来CCTVと呼ばれてきたもの)について最低要求事項を定め、推奨事項を示すと規定している。性能要求と機能要求は、顧客、該当する場合は法執行機関、および供給者の間で運用要求として合意するものとされ、設計・計画・設置・試験・運用・保守の要求事項は同規格に含まれない。

HBM(広帯域メモリ) HBM High Bandwidth Memory
半導体

DRAMダイをTSVで積層し、幅の広いインターフェースで接続して帯域を高めたJEDECのメモリ規格。HBM3(規格番号JESD238)では最大6.4Gb/sのデータレート、デバイスあたり819GB/sが定義され、4段から12段の積層に対応する。グラフィックス処理、HPC、サーバ向けとされる。

液浸冷却 Immersion Cooling
AI基盤

IT機器を誘電性流体に浸して冷却する方式。単相液浸冷却(1PIC)と二相液浸冷却(2PIC)に分類される。

液浸冷却 Immersion Cooling
AI基盤

IT機器を誘電性の液体に直接浸して排熱する冷却方式である。液を循環させる単相方式と、沸騰による相変化を使う二相方式がある。空冷より高い熱密度に対応でき、供給水温を高くできるため冷却設備の効率向上につながる。高密度なAI向け計算基盤で採用が進む。

液体クロマトグラフィー質量分析 LC-MS Liquid Chromatography–Mass Spectrometry
バイオ・創薬

液体クロマトグラフィーによる分離と質量分析による検出・定量を連結した分析法である。エレクトロスプレーイオン化で試料をイオン化し、前駆イオンと生成イオンの組を監視する多重反応モニタリングにより、夾雑物の多い生体試料でも特異性と感度を両立できる。薬物動態評価や臨床検査で広く用いられる。

液体生検 Liquid Biopsy
バイオ・創薬

米国国立がん研究所(NCI)がん予防部門は、液体生検を「体液を繰り返し採取して腫瘍を分子レベルで特徴づけ、遺伝的変化を経時的に監視する測定」と説明している。対象となるのは血清・血漿・尿などに含まれる循環腫瘍細胞(CTC)、循環腫瘍DNA(ctDNA)、循環エクソソームといった分析対象物である。

液体有機水素キャリア LOHC Liquid Organic Hydrogen Carrier
エネルギー・蓄電

水素を有機化合物に化学的に結合させて貯蔵し、必要なときに取り出す方式で用いる一対の有機化合物である。学術誌 Rendiconti Lincei. Scienze Fisiche e Naturali に2025年に掲載された総説は、不飽和の芳香族化合物と、それに水素が付加した飽和化合物の対が、可逆的な水素の貯蔵と放出を担うと説明する。触媒の下で進む水素化は発熱反応で不飽和結合を飽和結合に変え、脱水素は吸熱反応でこれを戻して水素を取り出す。代表的な対として、トルエンとメチルシクロヘキサン、ナフタレンとデカリン、N-エチルカルバゾールとその水素化体、ジベンジルトルエンとその水素化体が挙げられている。常温常圧で貯蔵・輸送でき既存の液体燃料インフラと親和性が高いことから、圧縮水素や液化水素に比べて設備費と安全上の負担を抑えられるとされる。

siRNA医薬 siRNA Small interfering RNA therapeutics
バイオ・創薬

細胞がもつRNA干渉の仕組みを利用し、標的とするmRNAを分解して特定のタンパク質の産生を抑える医薬である。FDAはパチシランを遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシスに対する最初の承認薬と位置づけ、標的組織へ届けるために脂質ナノ粒子などの送達システムが必要だとしている。

SiCパワー半導体 SiC Silicon Carbide Power Semiconductor
半導体

炭化ケイ素(SiC)を素子材料に使ったパワー半導体。応用物理学会の解説によれば、SiCのバンドギャップは3.3eVでシリコンの1.1eVより大きく、ワイドバンドギャップ半導体として損失をシリコンの数百分の一以下にできる可能性があるとされる。鉄道車両のインバータなどで実用化されている。

STT-MRAM STT-MRAM Spin-Transfer Torque Magnetoresistive RAM
半導体

磁気トンネル接合(MTJ)の磁化の向きで情報を保持し、電流によるスピン移行トルクで書き換える不揮発性メモリ。東北大学は18nm世代のQuad-interface MTJで、10年を超える保持特性、少なくとも6×10の11乗回の書き換え耐性、10ナノ秒の書き込みを報告している。

X線透視 Fluoroscopy
ヘルスケアデバイス

X線画像をモニタ上に連続表示する医用画像診断法。X線による動画に相当する。

X線保安検査 Security X-ray Inspection
センシング・光学

対象を開けずにX線で内部の画像を作り、隠された脅威物や禁制品を検出する保安上の検査である。米国食品医薬品局(FDA)は、保安用途の電子製品のうちX線を放射するものについて、容器の内部を非侵入で検査して隠された脅威や禁制品を検出するための画像を作ると説明する。遮蔽した筐体の内部にX線管を収めるキャビネットX線装置は、手荷物検査、国境を越える貨物車両の検査、食品の異物検査、基板やタイヤの欠陥検査に用いられる。人を対象とする装置は別の区分として扱われる。

エッジAI Edge AI
AI基盤

エッジ/フォグコンピューティングの発展に伴い生まれた領域。ネットワークエッジノードやユーザ端末がAI機能の生成に果たす役割に応じて複数のレベルがある。

エッジコンピューティング Edge Computing
通信・ネットワーク

端末機器とその利用者を含むネットワーク層で計算を行う方式である。米国国立標準技術研究所(NIST)の特別刊行物SP 500-325は、エッジコンピューティングを、端末機器とその利用者を包含するネットワーク層であり、例えばセンサ上での局所的な計算能力を提供するものと定義する。同刊行物は、階層的な多層構造をとるフォグコンピューティングと対比し、エッジコンピューティングは固定された論理的位置で特定のアプリケーションを実行し、少数の周辺機器に限られる傾向があるとしている。

エネルギーハーベスティング Energy Harvesting
半導体

周囲の環境にあるわずかなエネルギーを取り込み、電子機器が使える電力へ変換する手法である。IEEEは、光、機械的振動、熱勾配、高周波放射、流体の流れを利用源として挙げ、得られる電力はマイクロワットからミリワット程度で、低デューティ比のセンシングや無線通信には足りるが大電力の負荷には向かないとする。電池交換や配線が現実的でない場所の給電に用いられる。

エピゲノム編集 Epigenome Editing
バイオ・創薬

DNAの塩基配列を書き換えずに、エピジェネティックな標識を書き換えて遺伝子発現を変える技術である。Nature Reviews Drug Discovery誌の2025年の総説は、これをゲノムを編集することなくエピジェネティックな特徴を書き換えて遺伝子発現を再プログラムする手法と説明する。標的配列を認識する部品として触媒活性を失わせたCas9(dCas9)やジンクフィンガータンパク質が使われ、そこにDNAメチル基転移酵素やTET酵素などのエフェクタードメインを連結して、標識を書き込むか消去する。

エピタキシャル成長 Epitaxial Growth
半導体

単結晶基板の上に、基板の結晶方位を受け継いだ単結晶の薄膜を成長させる技術である。出典は、半導体製造の薄膜結晶成長技術のひとつで、半導体の単結晶基板上に新しく単結晶の薄膜を成長させることと説明する。基板と同じ格子定数の結晶を成長させる場合をホモエピタキシャル成長と呼び、格子定数が一致するため最も欠陥の少ない良質な結晶が得られる。基板と格子定数、結晶方位、材質が異なる結晶を成長させる場合はヘテロエピタキシャル成長と呼ぶ。

FMCW LiDAR FMCW frequency-modulated continuous-wave lidar
センシング・光学

周波数を直線的に掃引した連続波レーザ光を送信光と局部発振光に用い、戻り光との光ミキシングで生じるビート信号の周波数から距離を求める測距方式。コヒーレント検波によって光のドップラー周波数シフトを直接検出できるため、距離と視線方向速度を同時に取得でき、外来光への耐干渉性も高い。

遠隔患者モニタリング RPM Remote Patient Monitoring
ヘルスケアデバイス

患者が接続された医療機器で収集した健康データを自動的に医療提供者へ送信し、提供者がそのデータを用いて遠隔で状態を管理する仕組み。米国メディケアでは、FDAの医療機器の定義を満たすインターネット接続機器を用い、患者の手入力ではなく機器からの自動送信であることが要件とされる。

遠隔操作 Teleoperation
ロボティクス

ロボット工学における遠隔操作とは、通信媒体を介して、通常は離れた場所からロボットを制御することを指す。

塩基編集 Base Editing
バイオ・創薬

DNAの二本鎖切断を起こさずに、狙った1塩基を別の塩基へ置き換えるゲノム編集技術。デアミナーゼをdCas9やCas9ニッカーゼに融合させて用いる。

エンタングルメントスワッピング Entanglement Swapping
量子

直接相互作用したことのない二つの量子ビットの間にもつれを生成する操作である。二組のもつれ対からそれぞれ片側を取り出し、中間ノードでベル状態測定を行うことで実現する。量子中継器がもつれを長距離へ延伸するための基本原理であり、量子ネットワークの構成要素となる。