標的とするDNA配列に一致するガイドRNAでCas9酵素を目的の位置へ導き、ゲノムを切断して編集する技術である。ZFNやTALENと異なりタンパク質を作り直す必要がなく合成RNAの設計で済むため扱いやすく、研究用途と治療開発の双方で使われている。意図しない箇所の切断は課題として残る。
アリや鳥の群れに見られる現象をロボットへ適応させる分野である。多数の単純で低コストなロボットが中央の制御主体なしに自己組織化・自律・協力・協調し、拡張性と柔軟性、頑健性を備えた系をつくる。通信はロボット同士が直接やりとりする直接型と、環境を介する間接型に分かれる。用途は家庭内の作業から軍事的な任務まで広い。
Transformer が1トークンずつ生成する際に、過去のトークンについて計算済みのキーと値を保持して再利用する仕組み。系列全体の再計算を避けられる一方、系列長と同時に処理するリクエスト数に比例してGPUメモリを消費するため、推論スループットの制約要因になる。
RAS/MAPK経路で働くK-Rasタンパク質をつくる遺伝子であり、がん遺伝子(オンコジーン)に分類される。K-RasはGTPと結合して活性化し、GTPをGDPへ変換して不活性化するスイッチとして働く。体細胞変異は膵臓がんと大腸がんを中心に複数のがんの発生に関与し、変異タンパク質は常に活性化した状態で細胞を無秩序に増殖させる。
病院の検査室ではなく、自宅や介護施設などの生活環境で脳波を記録する方式である。事象の頻度の定量、発作間欠期の異常波の評価、薬剤の効果判定、院外で生じる誘因の同定、発作の捕捉と分類を目的とする。装着と回収を生活環境で行う形態と、施設で装着して帰宅する形態がある。
がん細胞が、由来組織の細胞系譜(リネージ)を規定する分化プログラムに依存して生存・増殖する性質を指す。ゲノム変異の有無とは別の軸で腫瘍の生存機構を説明する概念であり、正常発生で働く系譜決定因子ががん細胞の生存必須因子へ転じた状態を対象とする。
需要家設備に付属せず、送配電系統へ直接接続して充放電する蓄電システム。経済産業省の資料によれば、日本のシステム価格は2019年度の18.7万円/kWhから2024年度に6.0万円/kWhへ低下した一方、連系済み容量は2024年9月末で約10万kWにとどまり、接続検討の受付量を大きく下回る。
警備対象施設に置かれた警報システムと、警報受信センターの報知機器との間で警報を伝送する仕組みである。国際規格 IEC 60839-5-1:2014 は、警報伝送システムの性能・信頼性・レジリエンス・セキュリティに関する要求事項を定め、さまざまな種類の警報システムおよび報知機器と組み合わせて使えることを確保すると規定している。火災、侵入、入退室管理、社会的警報など、あらゆる種類の警報メッセージの伝送系が対象となる。
血液と脳組織との境界にあり、物質の行き来を選択的に制限する仕組みである。Fluids and Barriers of the CNS誌の2020年の総説によれば、その実体は神経血管ユニットと呼ばれる構造で、密着結合を持ち小胞輸送が乏しくミトコンドリアに富む内皮細胞、基底膜に埋め込まれたペリサイト、血管外側表面のほぼ全面を覆うアストロサイト終足などから成る。密着結合が細胞間隙を封じ、排出トランスポータが異物を血中へ押し戻す一方、必要な栄養素は担体輸送で選択的に通す。
カテーテルを通じて塞栓物質を注入し、目的の血管を塞ぐ治療手技である。日本IVR学会の一般向け資料は、局所麻酔で大腿動脈からカテーテルを挿入して目的の血管まで進め、造影剤を流しながら撮影して出血部位を確認し、その血管までカテーテルを進めて血管を塞ぐ物質を注入して出血を止めると説明する。塞栓物質にはプラチナコイル、ゼラチンスポンジ、プラスチック粒子、液体塞栓物質などがある。
リガンドと標的分子が結合する強さを表す指標。平衡状態で標的の半数が占有されるリガンド濃度に対応し、平衡解離定数KDで表される。KDは解離速度定数と結合速度定数の比で定義され、値が小さいほど結合が強い。分子設計では最適化の主要な評価軸となる。
組成の情報のみから、その物質が取り得る安定な結晶構造を計算によって求める課題である。構造変数が張る配置空間を探索し、安定構造に対応し得る領域を同定する作業を指す。既知構造を計算で再現するモデリングとは区別され、探索を伴う点が本質とされる。国際的なブラインドテストを通じて手法の性能が比較されてきた。
病原体分離株のゲノム配列から相互の類縁関係を推定し、疫学情報と統合して感染症の伝播を解析する分野。
米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)は、ゲノム編集を、植物・細菌・動物を含む多くの生物のDNAを科学者が変えられるようにする方法と説明する。技術ははさみのように働き、特定の箇所でDNAを切断し、そこでDNAを取り除く、加える、置き換えるといった操作を行う。2009年に考案されたCRISPRは、従来の手法より単純で速く安価かつ正確とされる。
ゲノム編集技術で形質を改変した食品および添加物。日本では外来遺伝子が残らない場合、厚生労働省の取扱要領(令和元年9月19日決定)に基づく事前相談と届出で流通でき、外来遺伝子を含む場合は遺伝子組換え食品として安全性審査を受ける。届出品目にはGABA高蓄積トマトなどがある。
生物活性天然物の生合成経路や機能的・化学的相互作用を検出するために行うバイオインフォマティクス解析の総称。
廃棄物に化学的な処理を施し、原料に戻してから再利用する方式。溶かして成形し直すマテリアルリサイクルとは、原料段階まで戻す点で異なる。日本では油化、ガス化、コークス炉化学原料化、高炉原料化、原料・モノマー化の5種類に整理されており、PETボトルの原料化は日本が先行して実用化した。
酸素のない環境で細菌が有機物を分解する処理である。米国環境保護庁(EPA)のAgSTARは、家畜ふん尿、下水汚泥、食品廃棄物といった有機物を酸素の無い状態で細菌が分解する処理と説明する。分解はリアクタと呼ぶ密閉容器の中で進み、複数の有機物を1基の消化槽で併せて処理する混合消化は、分解しにくい廃棄物からのバイオガス収量を高められるとされる。生成するバイオガスはメタン50〜75パーセント、二酸化炭素、硫化水素、水蒸気、微量ガスからなり、加熱、発電、車両燃料に用いるほか、精製して再生可能天然ガスにできる。残る固体と液体は消化液と呼ばれ、敷料、肥料、堆肥、土壌改良材などに利用される。
外部の文書集合から関連箇所を検索し、それを入力に加えて文章を生成する構成。知識をモデルの重みだけに閉じ込めず、外部の索引側で更新できるため、モデルを再学習せずに情報を差し替えられる。生成結果の根拠として検索した参照元を提示できる点も特徴である。
Oxford Instruments Asylum Research の解説によれば、走査型プローブ顕微鏡の一種で、鋭い探針をラスタ走査させ、原子スケールからナノスケールで材料を測定し可視化する高分解能の手法である。センサであるカンチレバーの先端が試料表面の力を受けて曲がる量をレーザーと光検出器で読み取り、ピエゾアクチュエータで探針と試料の相対位置を3次元で変える。
表面の改質と改質層の除去という2つの自己制限的な工程を交互に繰り返し、材料を層単位で取り除くエッチング手法。1サイクルあたりの除去量は etch per cycle(EPC)で表す。
気相の前駆体と反応剤を交互に供給し、表面で飽和して自己停止する反応を繰り返すことで薄膜を一層ずつ積み上げる成膜法。膜厚はサイクル数で管理でき、視線が通らない深い溝や粉体の表面にも均一で密着した被覆が得られる。半導体の絶縁膜から触媒の被覆まで用途が広い。
付加製造(3Dプリンティング)の技術を用いて、建築物や土木インフラの構造部材を造形する製造方式である。セメント系材料を対象とする国際規格ISO/ASTM 52939が、造形プロセスと品質保証の要求事項を規定している。型枠を用いない自由な断面形状の設計が可能になる。
月や火星など目的地にある物質を採取・加工し、推進剤や酸素、水、建設資材を現地で作る技術。地球からの補給に頼らずに活動を続けることを目的とし、探査ミッションの輸送量と費用を大きく左右する。月やその周辺の水氷、二酸化炭素が主体の火星大気が主要な原料として想定されている。
相変化や化学反応を伴わず、媒体の温度を上昇させて内部エネルギーとして熱を蓄える方式である。貯蔵量は媒体の体積・比熱・温度差の積で決まり、溶融塩やコンクリート、岩石、炭素などの安価な材料が用いられる。三方式の蓄熱のうち最も成熟度が高く大容量化の実績がある。
作業者が保管場所へ歩いて取りに行くのではなく、自動化設備が保管容器や物品を作業者のもとへ搬送するピッキング方式。歩行時間をなくして生産性を高め、通路を減らして保管密度も上げられる。ロボットが格子状に積んだ保管ビンを出し入れするキューブ型保管などが用いられる。
米国の新薬承認申請(NDA)の一類型である。米食品医薬品局(FDA)は、連邦食品・医薬品・化粧品法第505条が三つの申請類型を定めるとし、505(b)(2)申請を、安全性と有効性に関する調査の完全な報告を含むが、承認に必要な情報の少なくとも一部が申請者自身またはその委託によらない試験に由来し、かつ申請者がその参照権(right of reference)を得ていないものと説明する。505(b)(1)に基づき提出され505(c)に基づき承認される。規則は21 CFR 314.54にある。
温度を管理したまま物を届ける供給網である。米国疾病予防管理センター(CDC)はワクチンのコールドチェーンを、ワクチンに関わる機器と手順のすべてを含む温度管理された供給網と説明し、製造工場の冷蔵設備に始まり、輸送と配送、医療機関での適切な保管を経て、患者への接種で終わるとする。冷蔵保管のワクチンは0℃以下に一度さらされただけで力価が完全に失われうるとされ、一度失われた力価は元に戻らない。
米国食品医薬品局(FDA)によれば、従来のCTの変種にあたる装置である。円錐状のX線ビームを用いて患者の周囲を回転しながらデータを取得し、そのデータから三次元画像を再構成する。歯科では、インプラント計画、顎顔面の評価、根管治療の診断などに用いられる。
C/C++などの高級言語で書いた動作記述からハードウェア記述を生成する設計手法である。レジスタ転送レベルより抽象度が高く、回路設計に必要な専門知識の敷居を下げる一方、逐次的なコードと並列に動く最適化済み回路の間には意味的な隔たりが残り、合成ツールへの指示の与え方が性能を左右する。