顕熱蓄熱

Sensible heat thermal energy storage

相変化や化学反応を伴わず、媒体の温度を上昇させて内部エネルギーとして熱を蓄える方式である。貯蔵量は媒体の体積・比熱・温度差の積で決まり、溶融塩やコンクリート、岩石、炭素などの安価な材料が用いられる。三方式の蓄熱のうち最も成熟度が高く大容量化の実績がある。

詳細

概要

顕熱蓄熱は、媒体を加熱して内部エネルギーを増加させることで熱を蓄える方式である。貯蔵エネルギーは媒体の体積と比熱、そして高温側と低温側の温度差の積で決まり、E = V × ∫cp(T)dT と表される。相変化を利用する潜熱蓄熱や、化学結合に蓄える熱化学蓄熱と対比される。三方式のうち最も技術成熟度が高く、大容量化の実績がある。

技術的な要点

固体媒体としてはコンクリート、岩石、砂状粒子、黒鉛、焼結ボーキサイトなどが用いられ、代表的な温度範囲での重量あたり貯蔵密度は200〜500 kJ/kg程度である。液体媒体では硝酸塩系の溶融塩(NaNO3 60%/KNO3 40%)が商用集光型太陽熱発電で広く使われ、300〜600℃の範囲で約560 kJ/kgを加圧なしで貯蔵できる。材料コストはおおむね0.1〜1ドル/kg級と安い一方、熱化学蓄熱の300〜6,000 kJ/kgに比べ貯蔵密度が低く、大容量化には大きな体積を要する。断熱構造と熱損失の抑制、充放熱時の熱交換設計が実装上の要点となる。

産業での位置づけ

希少金属を使わず安価な材料で構成できるため、供給制約を受けにくい長時間エネルギー貯蔵の手段として注目されている。安価な時間帯の電力を熱として貯め、産業プロセス熱や発電として取り出す「熱電池」型の設備は、化学、食品、鉄鋼など高温熱需要のある産業の脱炭素手段と位置づけられる。放電側に熱光起電力発電を組み合わせれば熱と電力の両方を供給できる。