KRAS

KRAS gene

RAS/MAPK経路で働くK-Rasタンパク質をつくる遺伝子であり、がん遺伝子(オンコジーン)に分類される。K-RasはGTPと結合して活性化し、GTPをGDPへ変換して不活性化するスイッチとして働く。体細胞変異は膵臓がんと大腸がんを中心に複数のがんの発生に関与し、変異タンパク質は常に活性化した状態で細胞を無秩序に増殖させる。

詳細

概要

米国立医学図書館の MedlinePlus Genetics は、KRAS 遺伝子を、RAS/MAPK として知られるシグナル伝達経路の一部であるK-Rasというタンパク質をつくる指令を与える遺伝子と説明している。このタンパク質は細胞の外からのシグナルを細胞核へ中継し、細胞に増殖するよう、あるいは成熟して特定の機能を担うよう指示する。

技術的な要点

K-RasはGTPアーゼであり、GTPという分子をGDPへ変換する。この働きによってK-RasはGTPとGDPによってオンとオフが切り替わるスイッチのようにふるまう。シグナルを伝えるにはGTPと結合して活性化する必要があり、GTPをGDPへ変換すると不活性化してシグナルを核へ中継しなくなる。KRAS はオンコジーンと呼ばれる遺伝子群に属し、変異すると正常な細胞をがん化させる可能性を持つ。RAS ファミリーのオンコジーンには HRAS と NRAS も含まれ、これらのタンパク質は細胞分裂、細胞分化、細胞の自死(アポトーシス)で重要な役割を果たす。

産業での位置づけ

同ページによれば、KRAS の体細胞変異は複数の種類のがん、とりわけ膵臓がんと大腸がんの発生に関与する。体細胞変異は生涯のうちに獲得され腫瘍細胞にのみ存在するもので、遺伝しない。肺がんに関連する KRAS 変異のほぼすべては、K-Rasタンパク質の12番目もしくは13番目のグリシン(Gly12、Gly13)、または61番目のグルタミン(Gln61)を置き換えるものであり、その結果K-Rasは常に活性化した状態となって細胞を無秩序に増殖させ、腫瘍形成に至る。一方、生殖細胞系列の変異は心臓・顔面・皮膚症候群(CFC症候群)の原因の5パーセント未満を占めるほか、ヌーナン症候群やコステロ症候群と症状が重なる病態を引き起こす。変異の位置と由来によって現れる病態が異なるため、遺伝子検査による変異の同定が治療対象の選定の前提となる。