Crystal Structure Prediction (CSP)
結晶構造予測は、組成のみを手がかりに、その物質が取り得る安定な結晶構造を計算によって求める課題である。IUCrJの解説では、予測とは「構造変数が張る配置空間を探索し、安定構造に対応し得る領域を同定すること」であるとされ、既知構造をポテンシャルで再現してエネルギー極小が実験値と一致することを示すだけの作業とは区別される。組成のみから結晶構造を予測できるかという問いは1988年に提起され、以後の30年余りで進展を見たが、なお完全な解決には至っていない。
配置空間の探索には、シミュレーテッドアニーリング、遺伝的アルゴリズム、ランダムに生成した配置からのエネルギー最小化などが用いられる。骨格構造の予測ではトポロジーの原理を利用する手法もある。近年は学習データを用いた機械学習に基づく手法が加わり、エネルギー評価の計算コストを下げる方向で進展している。評価関数の精度と探索の網羅性の双方が結果を左右し、エネルギー的に近接した多形が多数存在する系では特に難しい。
手法の性能は、国際的なブラインドテストを通じて比較・検証されてきた。医薬品の多形の制御、無機機能材料の探索、有機骨格材料の設計などで、実験に先立って候補を絞り込む手段として使われる。生成モデルによる候補生成と組み合わせる場合、生成された構造が安定に存在し得るかを判定する役割を担う。