Lineage dependency
腫瘍分類は歴史的に組織由来(細胞系譜)に基づいてきたが、ゲノム解析の普及により分子的な基準での再分類が進んだ。系統依存性は、この二つを橋渡しする概念である。がん細胞は由来組織の分化プログラムを完全には捨てず、細胞アイデンティティを維持する制御因子に依存し続けることがある。Garraway と Sellers はこれを lineage dependency(lineage addiction)と呼び、色素細胞系譜における MITF を代表例として示した。
系譜決定因子の多くは転写因子であり、遺伝子増幅や過剰発現を通じて生存必須因子として働く。依存性の同定には、細胞株パネルに対する網羅的な遺伝子ノックアウト・ノックダウン試験(依存性スクリーニング)や、発現・メチル化・プロテオームなど複数階層のオミクスデータの統合解析が用いられる。依存性は特定の系譜に限定されるため、正常組織との差を利用して治療域を確保できるかが設計上の論点になる。
変異駆動型の標的が枯渇しつつある領域において、明確な変異を持たない腫瘍にも適用しうる標的探索の枠組みとして扱われている。一方、転写因子は低分子で狙いにくい標的とされてきた経緯があり、どの創薬手法を選ぶかが実用化の分岐点となる。