Gene augmentation therapy
遺伝子補充療法は、欠損や機能低下を起こしている遺伝子の正常なコピーを細胞に届け、失われた機能を補う方式である。出典は、この従来型のアプローチについて「欠陥遺伝子の機能的なコピーを、通常はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて網膜の標的細胞へ直接送達する」と説明している。遺伝子そのものを書き換える編集型の手法や、転写後に働くエクソンスキッピング型の手法とは区別される。
運搬体としてAAVが広く使われるのは、非組込み型かつ非複製型で免疫原性が弱いためとされる。一方で搭載できる遺伝子の長さに制約があり、出典はおよそ4.7〜5.0 kbという上限を挙げている。この容量を超える遺伝子では、補充以外の方式を検討する必要が生じる。投与経路も設計要素で、網膜下投与は視細胞層と網膜色素上皮の間に薬液の膨隆(ブレブ)を作り、分布は限られる代わりに標的細胞近傍の濃度を高められる。脈絡膜上投与は網膜・網膜色素上皮・脈絡膜への選択的で持続的な投与が可能とされ、硝子体内投与は最も低侵襲だが外層網膜への到達が課題とされる。標的細胞は主に視細胞と網膜色素上皮である。
単回投与で長期の効果を狙う設計が採られることが多く、投与手技、ベクター製造、対象患者の遺伝子診断が一体で必要になる。対象疾患は個々の原因遺伝子ごとに細分化されるため、希少疾患としての開発戦略と組み合わせて論じられる。