Cardiac Myosin Modulator
心筋ミオシンに直接作用する薬剤には、収縮を抑える阻害剤と収縮を強める活性化剤の両方がある。
阻害剤の代表であるマバカムテンについて、米国立衛生研究所(NIH)が公開する StatPearls は「心筋ミオシンATPアーゼのアロステリックかつ選択的・可逆的な阻害剤」であり「アクチン・ミオシン架橋の形成を減らす」と説明している。これにより「エネルギーを節約する超弛緩状態を促し、左室流出路(LVOT)閉塞の軽減と心充満圧の改善につながる」とされる。米国では2022年に、症候性(NYHA分類II・III度)の閉塞性肥大型心筋症の成人に対して承認された。
活性化剤の代表であるオメカムチブ メカルビルについては、Drugs in Context の総説(DOI: 10.7573/dic.212518)が、心筋ミオシンの触媒S1ドメインに結合し「弱く結合した状態から強く結合して力を発生する状態への遷移速度を加速する」と述べている。収縮期に実際にアクチンと相互作用する心筋ミオシン頭部は通常「全体の約10〜30%」にとどまるが、この薬剤はその割合を高めることで、細胞内カルシウム濃度を上げずに架橋の総数を増やす。前臨床では「心筋細胞内カルシウムの有意な上昇は認められなかった」とされ、従来の強心薬に伴う不整脈や虚血のリスクを避けられる点が特徴とされる。