分布型音響センシング

distributed acoustic sensing (DAS)

1本の光ファイバ全長をセンサ配列として使う計測方式。パルス光のレイリー後方散乱の位相変化からひずみを検出し、戻り光が到達する時刻から位置を特定する。チャネル間隔は2メートル程度、計測距離は最大171キロメートルに達し、地震観測や設備監視に用いられる。

詳細

概要

分布型音響センシング(DAS)は、1本の光ファイバをそのままセンサ配列として利用する計測方式である。ファイバ内の微小な屈折率のゆらぎによって生じるレイリー後方散乱光を観測する。この散乱は弾性散乱であり、周波数シフトを伴わない。既設の未使用通信ファイバ(ダークファイバ)を使えば、数千個規模のセンサ配列に相当する観測点を得られる。

技術的な要点

ファイバに沿う位置zは、パルス送出から後方散乱光が戻るまでの時間τから τ = 2z/(c/n) の関係で決まる。屈折率n ≈ 1.46 のファイバ中の光速は約2.05×10⁸ m/sである。外部の振動や機械的なひずみはファイバ長をわずかに変え、これが散乱光の位相差として現れるため、微分位相測定によってひずみを求める。代表的な諸元は、光波長1550 nm、パルス幅10〜1000 ns(ファイバ内のパルス長で約2〜200 m)、チャネル間隔2 m程度、ゲージ長25〜51 m、計測距離は最大171 kmに及ぶ。100 kmのファイバではパルス繰り返し周波数は1 kHz以下に制限される。

産業での位置づけ

従来の地震計に比べて空間的なデータ密度を数桁高められる点が価値であり、海底ケーブルを用いた沖合地震の検知、都市部の断層マッピング、誘発地震のモニタリングなどに使われる。装置の応答特性やダイナミックレンジ、ファイバの敷設状態と地盤との結合の影響が十分に解明されていないことが課題として指摘されている。