DNA origami
Chem Soc Rev 誌に掲載された総説「DNA origami nano-mechanics」(2021年)によれば、DNAオリガミの発明は生体ナノ材料の作製と応用を大きく変えた。同総説は、DNAオリガミが2006年に発明されて以降、プログラム可能であることと、ナノメートルスケールで高い精度をもつ構造が得られることから、化学、物理、生物にまたがる多様な分野でナノスケールの基盤(プラットフォーム)として採用されてきたと述べている。
同総説によれば、DNAオリガミは長いDNA鋳型と短いステープル鎖を組み合わせて集合させることで作られる。集合の過程では、ステープル鎖とスキャフォールド鎖の間の相補的な結合(ハイブリダイゼーション)から放出されるエンタルピーが、エントロピーの低下を補償する形で自己集合が進むと説明されている。集合の初期の核形成が最終的な構造の位相と力学的性質を決めるため、再現性のある構造を得るには熱力学的に平衡な条件を保つことが重要であり、逆に核形成の段階で速度論的な条件を探ることで所望の力学的性質をもつ構造を得ることもできるとされる。
同総説は、DNAオリガミの力学的性質を、外力に対する応答という観点から弾性、柔軟性、塑性、安定性の4つに整理している。弾性と柔軟性が可逆的な構造変化に対応するのに対し、塑性は不可逆的な形態の変化を指す。過去10年のDNAオリガミ素子はこれらの力学的領域を利用しており、なかでも塑性が生体力学的・物理化学的な応用で大きな可能性を示してきたとされる。
同総説によれば、二本鎖DNAは持続長がおよそ50nmと短く、力学的な引き剥がしに対する安定性も約15pNと低いが、DNAオリガミはこれらの物理的な限界を作り変える。ナノメートル精度で分子の配置を設計できる性質は、分子を決まった間隔と向きで並べる必要がある検出・計測の用途と相性がよく、体外診断における信号増幅などの応用が試みられている。