乾式電極製造

Dry Electrode Technology

Materials 誌に掲載された総説によれば、リチウムイオン電池の電極を、溶媒を用いるスラリー塗工(湿式)によらずに製造する新興の技術である。工程は乾式混合、乾式塗工(乾式堆積)、最終電極への加圧の3段階からなり、方式は乾式スプレー堆積、溶融押出、3Dプリンティング、粉体圧縮、ポリマーのフィブリル化の5種に大別される。湿式で用いるNMP溶媒に伴う健康・環境・費用の問題を避けられる点が動機とされる。

詳細

概要

Materials 誌に掲載された総説(2024年)によれば、電池電極の製造工程は電池のエネルギー密度、製造コスト、歩留まりに大きく影響する。現在、電池メーカーの大半が用いているのは従来のスラリー塗工(slurry-casting)工程、すなわち湿式プロセスである。乾式電極技術(dry electrode technology)は、その独自の利点と適合性によって学界と製造業の双方から注目を集める新興の技術として位置づけられている。

技術的な要点

同総説によれば、湿式では正極を例にとると、N-メチルピロリドン(NMP)を基剤とし、活物質(たとえばリン酸鉄リチウム)、導電助剤(導電性カーボンブラックなど)、バインダ(ポリフッ化ビニリデンなど)その他の添加剤を含むスラリーを集電体(アルミ箔または銅箔)に塗布し、乾燥・裁断・組立へと進む。同総説はこの方式の問題として、多量のNMPが人の生殖系に有害であり周囲環境も著しく汚染しうること、NMP溶媒が高価で電極製造費用に占める割合が大きいこと、乾燥の過程で溶媒分子が下から上へ移動する結果として電極構造が大きく収縮して亀裂が生じ、バインダなど各成分の分布が悪くなることを挙げている。これに対し乾式では、工程は主に乾式混合、乾式塗工(乾式堆積)、最終電極への加圧という3段階からなる。方式は工程の特徴によって、乾式スプレー堆積、溶融押出、3Dプリンティング、粉体圧縮、ポリマーのフィブリル化の5種に大別される。

産業での位置づけ

同総説によれば、乾式スプレー堆積(DSD)は代表的な方式であり、活物質・導電助剤・バインダなどを機械的な混合装置で均一に分散・複合化して100マイクロメートルから500マイクロメートルの範囲の粉体粒子を作り、これを外部の手段で集電体表面に均一に堆積させて所定の厚さの電極活物質層を形成する。外部の手段としては、エアスプレー、自動静電スプレー、手動静電スプレーが一般に用いられる。同総説は、エネルギー貯蔵材料への需要が高まるなかで、効率の向上、エネルギー消費の削減、電池性能の改善という課題が次世代の電池製造においてとりわけ重要になっているとし、乾式電極技術をその解のひとつとして位置づけている。