Hall Thruster
JAXA宇宙科学研究所は、ホールスラスタを、キセノンイオンを電界により加速する静電加速型の電気推進と説明している。円環状のチャンネルに磁場を印加する独特な形態によって、高密度なプラズマジェットを実現できるとされる。
イオンエンジンとホールスラスタはいずれも秒速10km以上の高速ジェットを生成できる。JAXAのブレッドボードモデル実験では、排気速度15〜27km/sというイオンエンジンに匹敵する値と、500mN前後の推力が得られた。最適動作点は排気速度19km/s、推力390mNとされ、1台あたりの目標推力は360mNである。従来の静止衛星用アポジモータが500N級の2液式化学スラスタであるのに対し、ホールスラスタはその中間にあたる500mN級を担う。
排気速度が大きいほど、同じ速度増分を得るのに必要な推進剤が少なくて済む。JAXAは用途として、月・火星探査や小惑星ミッションの主推進、衛星の軌道遷移を想定している。一方で推力は化学推進より三桁小さいため、軌道遷移には長い時間を要し、運用計画では所要日数が制約になる。静止衛星では、打上げから運用開始までの期間と、削減できる推進剤質量との釣り合いで採否が判断される。電源を大量に消費するため、太陽電池パドルと電力制御機器の設計とも一体で検討される。