鉄空気電池

Iron-air battery

鉄と空気中の酸素との可逆的な酸化還元反応を利用する二次電池である。放電時に鉄が酸素を取り込んで酸化物(さび)となり、充電時に電流を流して金属鉄へ戻す。水系の不燃性電解液と豊富な鉄を用いるため、数十時間規模の長時間放電を低コストで担う用途が想定されている。

詳細

概要

カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)は、鉄空気電池を「可逆的なさびの原理を用いる」技術と説明し、セルは鉄電極と空気電極を含み、水を主体とする不燃性の電解液で満たされると記している。放電時には空気中の酸素を取り込んで金属鉄をさびへ変換し、充電時には電流の印加によってさびを鉄へ戻し、酸素を放出する。

技術的な要点

活物質の一方が大気中の酸素であるため、正極側の重量と体積をセル内に抱え込まなくてよい。電解液が水系で不燃性であることから、熱的な安全設計の負担がリチウムイオン電池より小さい。一方で鉄電極では充電時に水素発生などの副反応が競合し、往復効率と出力密度はリチウムイオン電池に劣る。このため高出力の応答を求める用途ではなく、長時間の連続放電を担う用途に適合が限定される。

産業での位置づけ

系統用蓄電の現行の業界標準は 4〜6 時間級の放電であり、それを超える持続時間を低コストで供給する手段が不足している。CEC は 100 時間の連続放電を掲げる案件を支援対象としており、鉄空気電池はこの空白域を埋める候補と位置づけられる。リチウムやコバルトを使わない点も供給網上の利点とされる。