Nitinol (Nickel-Titanium Alloy)
ニチノールは、ニッケルとチタンをほぼ等原子比で含む合金であり、擬弾性(超弾性)と形状記憶挙動という二つの性質を示す。米国食品医薬品局(FDA)のガイダンス文書は、機器メーカーがこれらの性質を利用して、従来の材料では実現できなかった革新的な医療機器を製品化してきたと述べている。
擬弾性は、応力の負荷によって生じる相変態と、除荷にともなう逆変態によって、大きなひずみが回復する現象である。形状記憶挙動では、変形させた部材が加熱によってあらかじめ記憶させた形状へ戻る。FDAは、ニチノールの熱機械的な挙動と加工に対する感受性が、ステンレス鋼、チタン、コバルトクロム合金といった従来金属と比べて特別な考慮を必要とすると指摘している。すなわち、同じ組成でも加工と熱処理の履歴によって挙動が変わるため、非臨床評価では素材そのものではなく最終製品の状態での特性把握が求められる。
同ガイダンスは、ニチノールがステント、人工心臓弁、ガイドワイヤ、下大静脈フィルタといった循環器系の機器で広く使われてきたとし、低侵襲手技向けの製品を中心に他の機器分野への適用も拡大していると述べている。細い経路から挿入し、体内で所定の形状へ展開する構造をとりやすいことが採用の理由である。整形外科分野でも、柔軟性を活かした固定材への応用が進む。