熱暴走

Thermal Runaway

リチウムイオン電池が安全な範囲を超えて加熱された際に、発熱がさらなる発熱反応を招く連鎖反応となり、温度と内圧が急上昇してガス放出・発火・破裂に至る現象。過充電、機械的な損傷、内部短絡などが引き金となり、隣接するセルへ伝播することが設計上の焦点となる。

詳細

概要

熱暴走は、リチウムイオン電池における「過剰な熱が制御不能な化学プロセスを引き起こし、火災・爆発・システム故障に至りうる連鎖反応」と説明される。査読論文の記述では、電池が内部または外部の加熱によって安全な限界を超えたときに始まり、その原因として過充電、物理的損傷、内部短絡が挙げられている。一度始まると自己持続的になり、「発熱の蓄積が化学反応を引き起こし、それがさらに熱とガスを放出し、最終的にベント、火災、爆発に至る循環」となる。

技術的な要点

観測される現象としては急激な温度上昇、過大な発熱、ガスのベント、内圧の上昇が挙げられる。局所的な加熱と発熱反応の制御不能な伝播が危険性の本質であり、1つのセルの熱暴走が隣接セルへ波及する熱伝播をどう抑えるかがモジュール・システム設計の焦点となる。安全評価では、UL 9540Aがセル、モジュール、ユニット、設置の各レベルで熱暴走に伴う火災伝播を評価する試験方法を規定しており、セルレベルでは発生ガスの組成と可燃性、モジュールレベルでは伝播傾向と発熱・ガス放出速度を評価する。

産業での位置づけ

家庭用蓄電池や系統用蓄電システムでは、設置場所が居住空間や市街地に近いため熱暴走対策が製品要件の中心にある。セル化学の選定、セル間の熱的絶縁、ベント経路の設計、消火・排気設備の設計が、認証取得と設置基準への適合を左右する。