チロシンキナーゼ阻害薬

Tyrosine Kinase Inhibitor (TKI)

チロシンキナーゼのATP結合ポケットに結合し、基質のリン酸化と下流のシグナル伝達を遮断する低分子である。ATPと競合して可逆的に結合する型と、共有結合を形成して不可逆的に結合する型がある。治療中に生じる耐性変異への対応が、世代交代と設計目標の中心となってきた薬剤クラスである。

詳細

概要

チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)は、細胞増殖のシグナルを担うチロシンキナーゼの働きを止める低分子である。非小細胞肺がん領域を扱う出典の総説では、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とするTKIが代表例として説明されている。

技術的な要点

TKIはキナーゼドメインのATP結合ポケットに結合し、基質のリン酸化とそれに続く下流シグナルを遮る。結合様式には、ATPと競合して可逆的に結合する型と、キナーゼ側の残基と共有結合を形成して不可逆的に結合する型がある。出典は、第一世代を可逆的な阻害薬、第二世代以降を共有結合型として整理し、第三世代は変異型への選択性を高めて野生型への作用を抑える設計であると説明している。治療の途中で獲得される耐性変異は、薬剤の結合を立体的に妨げることで効果を減じる。この耐性を回避することが、後続世代の設計目標および測定指標の中心となる。変異型と野生型の選択性、脳への移行性、代謝安定性なども設計上の評価軸である。

産業での位置づけ

標的分子の遺伝子変異を検査で確認したうえで薬剤を選ぶ、プレシジョンオンコロジーの典型的な実装手段である。EGFRのほかALK、ROS1、BTK、FLT3など多数の標的で開発され、耐性の出現と次世代阻害薬の開発が繰り返される構図が続いている。個々の薬剤の有効性と安全性は臨床試験で評価される。