マルチスタティックレーダ

Multistatic radar

送信機と受信機を空間的に分離し、複数の受信点を用いるレーダ方式である。バイスタティック配置を拡張したもので、多数の観測量とベースラインを同時に得られるため、三次元計測、単一パス干渉計測、移動目標の検出において単一機の構成にない利点を持つ。

詳細

概要

バイスタティックレーダは送信機と受信機の間に空間的な分離を設けた構成を指し、受信機を複数に増やしたものがマルチスタティック構成である。衛星による合成開口レーダでは、複数機を編隊で飛行させ、全体を一つの分散センサとして運用する形態がとられる。

技術的な要点

利点として、送受切替器が不要になることによる感度の向上、受信機の隠蔽性と妨害耐性、機体あたりの規模・重量・費用の低減が挙げられる。観測量とベースラインが増えることで冗長性と柔軟性が高まり、SAR トモグラフィ、アロングトラック干渉、移動目標指示(MTI)、広域観測といった運用が可能になる。とくに単一パスでの干渉計測では、繰り返し観測方式で問題となる時間的な相関劣化や大気に起因する誤差が生じず、高品質な数値標高モデルが得られる。編隊飛行では、軌道力学を利用して機体間の差動加速度を毎秒毎秒 100 ナノメートル未満に抑える設計により、少ない燃料でベースラインを精密に制御できる。送信機と受信機が別機体にあるため、位相同期と時刻同期の確保が必須となる。

産業での位置づけ

小型衛星の量産と編隊運用の実現により、大型の単機レーダ衛星に頼らない観測系の構築が現実的になった。地形の三次元計測と移動目標の検出を同一の衛星群で担う運用が想定されている。