Penning Trap
ペニングトラップは、静磁場と静電場を組み合わせてイオンなどの荷電粒子を真空中に閉じ込める装置である。NISTの研究では、4.5テスラの静磁場と静電場を用いてベリリウムイオン(9Be+)の二次元クーロン結晶を閉じ込め、量子シミュレーションと量子センシングの実験系として利用している。高速に振動する高周波電場で閉じ込める方式に対し、静的な場のみを使う点が構成上の違いである。
磁場が粒子の径方向の運動を、静電場が軸方向の運動をそれぞれ拘束する。閉じ込められたイオンは互いのクーロン反発によって自己組織的に配列し、数百個規模で三角格子状の単一平面二次元結晶を形成する。NISTは300個近いイオン配列の操作を報告している。スピン依存力を加えることで長距離相互作用を人工的に作り出し、200個以上のイオン系での量子ダイナミクスやエンタングルメントの検証が行われている。センシング用途では、電場感度がイオン数Nの平方根に比例して向上する性質を利用し、150個程度の結晶で基底状態の波動関数の広がりより約9dB下の変位検出が示されている。
イオントラップ方式の量子情報処理では、閉じ込め方式の選択がスケーリングと接続性を規定する。多数イオンを二次元・三次元に配置できる方式は、一次元鎖に依存する構成の規模上限を回避する手段として関心を集めている。