量子メモリ

Quantum Memory

光子などが担う量子状態を、重ね合わせや量子もつれを保ったまま一定時間保持し、必要な時刻に取り出す素子である。量子中継器では、区間ごとに確率的にしか成功しないもつれ生成の時刻を揃える役割を担い、保持時間、忠実度、同時に扱えるモード数が系全体の性能を規定する。

詳細

概要

量子情報を担う光子の状態を、物質系(希土類イオンを添加した結晶、原子集団、単一の原子やスピン欠陥など)に転写して保持し、後から光子として読み出す素子である。量子ネットワークでは、送信と測定の時刻を分離する役割を果たす。

技術的な要点

評価軸は保持時間、忠実度、読み出し効率、そして同時に保持できるモード数である。原子集団を用いる方式は多数の時間モードを蓄えられる多重化に優れ、希土類イオン系では帯域と蓄積効率、時間モード数の間にトレードオフが生じにくいと報告されている。一方、個別に捕捉した原子にもとづく方式は確定的な量子ゲート操作に向くが、大規模な多重化は現行技術では難しいとされる。読み出し効率はコヒーレンス時間に対して指数的に減衰し、光ファイバとの結合効率も系全体の性能を制約する。

産業での位置づけ

量子中継器の中核部品であり、再現性と信頼性を備えた素子を量産できるかが、実回線への敷設可否を左右する。通信波長帯への波長変換素子と組み合わせて用いられる。

実装方式ごとに動作温度や必要な光学系が異なり、冷凍機やレーザ系を含めた装置全体の小型化と安定運用が実用化の条件となる。

また、蓄えた状態を通信波長帯の光子として送り出すため、波長変換素子と組み合わせて用いられることが多い。