Sterile Alpha and TIR Motif Containing 1 (SARM1)
SARM1は、損傷した軸索が自己を分解するプログラム軸索変性の実行酵素である。出典のNature Reviews Neuroscienceの総説によれば、この経路は進化的に保存されており、外傷だけでなく非外傷性のストレスによっても起動しうるため、複数の神経変性疾患との関連が指摘されている。
経路の中心はNAD+代謝である。軸索の生存因子NMNAT2は軸索輸送によって継続的に補充される必要があり、その供給が途絶えると前駆体NMNが蓄積してNMN/NAD+比が上昇する。総説はSARM1をこの比の上昇を感知する代謝センサーと説明し、活性化したSARM1のTIR(Toll/インターロイキン-1受容体)ドメインが本来的にNAD+を切断する活性を持つと記述している。NAD+の枯渇に続いて遅発性のカルシウム流入が起こり、これが軸索の構造的な崩壊を直接媒介する最終段階とされる。したがって、SARM1の酵素活性を止める、あるいはNMNAT2の供給を保つことが、経路を止める設計上の要点となる。
末梢神経障害、外傷性神経損傷、視神経疾患など、軸索変性が病態に関与する領域を横断する標的である。出典では、SARM1阻害を狙う複数の化合物が臨床試験段階にあるとされる。低分子による経口投与を志向する開発が多く、有効性と安全性は個別の試験で評価される段階にある。