単一光子アバランシェダイオード

single-photon avalanche diode (SPAD)

単一光子アバランシェダイオード(SPAD)は、降伏電圧を超える逆バイアスで動作させたフォトダイオードであり、光子1個の入射が引き起こす雪崩増倍を電気パルスとして検出する。雪崩の立ち上がりはピコ秒オーダーで、光子の到達時刻を精密に測定できる。標準CMOSプロセスで作製でき、アレイ化が進んでいる。

詳細

概要

SPADは、p-n接合を降伏電圧より高い逆バイアスで動作させたフォトダイオードである。活性領域に光子が1個入射して電子正孔対が生成されると、キャリアの二次的な雪崩増倍が起こり、大きな電流変化として観測される。この動作領域はガイガーモードと呼ばれ、素子はガイガーモードAPD(GmAPD)とも呼ばれる。

技術的な要点

雪崩の立ち上がり時間は通常ピコ秒オーダーであり、これに伴う電圧変化から光子の到達時刻を精密に決定できる。自己持続する雪崩はクエンチ回路によってバイアスを降伏電圧以下へ下げて停止させ、その後もとの動作電圧へ再充電する。この間の不感時間(デッドタイム)は数十ナノ秒程度で、その期間の感度はほぼ失われる。主要な性能指標は、光がない状態でも生じる暗計数率(DCR)、直前の検出と時間相関を持つ偽イベントであるアフターパルス、受光領域が画素面積に占める割合であるフィルファクタ、そしてフィルファクタと光子検出確率(PDP)の積である光子検出効率(PDE)である。CMOSプロセス上のSPADのPDPは可視域にピークを持ち、単素子を最適化した場合には70%に達する。

産業での位置づけ

2003年に標準CMOS技術でSPADが実装されたことが転機となり、その後は大規模なデジタルSPADイメージャの探索と設計が進んだ。1次元配列では画素回路を受光領域の外に配置できるためフィルファクタを上げやすいが、2次元配列では画素内または周辺に読み出し回路が必要となりフィルファクタが下がる、というトレードオフがある。生体計測分野では時間分解を要する計測に用いられている。