Synthetic Biology
米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)は、合成生物学を、生物を有用な目的のために設計し直し、新しい能力を持つよう工学的に作り替える科学の分野と定義している。対象とする課題は医療、製造、農業にわたる。
中心となる手法は、他の生物に由来する遺伝子あるいはまったく新規の配列といった長いDNAの区間をつなぎ合わせ、生物のゲノムへ導入することである。NHGRI はこの点をもって、生物が既に持つDNAに小さく標的を絞った改変を加えるゲノム編集と区別している。ゲノム全体の合成も実現しており、2002年にウイルスのゲノム、2008年に細菌 Mycoplasma genitalium のゲノムが合成された。合成技術の限界を押し広げる試みは、ゲノムの働きを理解するために続けられている。
NHGRI は具体例として、水、土壌、大気から汚染物質を除去するよう設計した微生物、ビタミンA欠乏を防ぐためベータカロテンを産生するよう改変したイネ、花から採取する代わりにローズオイルを生成する酵母を挙げている。既存の生物が持たない機能を設計して与える方針であるため、設計、合成、試験、学習を繰り返す開発の進め方と、その速度を支える基盤技術が事業上の要点となる。