Antimicrobial Resistance (AMR)
世界保健機関(WHO)は、抗微生物薬(抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗寄生虫薬)を、人、動物、植物の感染症を予防し治療するために用いる医薬品と整理したうえで、抗菌薬耐性(AMR)を、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫がこれらの薬に反応しなくなることと説明している。その結果、感染症は治療が困難または不可能になり、感染拡大、重症化、障害、死亡の危険が高まる。WHO はこれを世界的な健康上の重大な脅威と位置づけ、2021年には細菌のAMRが世界で470万人を超える死亡に関連したと推定されるとしている。
WHO によれば、2023年に世界で検査により確認された細菌感染症のおよそ6件に1件が抗菌薬に耐性を示した。2018年から2023年にかけて、監視対象となった病原体と抗菌薬の組み合わせの40パーセント超で耐性が上昇し、年平均の上昇率は5〜15パーセントであった。薬剤耐性のグラム陰性菌は世界的により危険な存在になりつつあり、血流感染で見つかる薬剤耐性グラム陰性菌の筆頭は大腸菌と肺炎桿菌である。これらは敗血症、臓器不全、死亡に至ることの多い重篤な細菌感染症にあたる。真菌では多剤耐性の Candidozyma auris(旧 Candida auris)の出現と拡大が特に懸念され、ウイルスではHIV薬剤耐性、寄生虫ではアルテミシニン部分耐性の出現が挙げられている。
WHO は、抗微生物薬の誤用と過剰使用が薬剤耐性病原体の発生と拡散を招いているとし、新しいワクチン、診断法、医薬品への適切なアクセスの不足も危機に寄与しているとする。同時に、世界は抗微生物薬の研究開発の危機に直面しており、開発中の新薬はごくわずかであると指摘している。効かなくなった薬を置き換える新規抗菌薬の開発が追いついていないため、治療の選択肢は狭まる。耐性菌感染症の治療費だけで2035年までに年間4,120億米ドルに達すると予測されており、生産性の損失は年間4,430億米ドルが加わるとされる。