Lipid nanoparticle (LNP)
脂質ナノ粒子(LNP)は、mRNAやsiRNAといった核酸医薬を細胞内へ送達するための粒子である。出典の総説によれば、代表的な組成はイオン化脂質、リン脂質、コレステロール、PEG脂質の4成分からなる。イオン化脂質は低pHでプロトン化して正電荷を帯び、生理的pHでは中性を保つため、投与時の毒性を抑えつつ核酸を内包できる。
リン脂質(DSPCなど)は粒子構造を安定化し、コレステロールは膜の一体性と剛性を調整して安定性を高める。PEG脂質は粒子の凝集を抑え、腎排泄や単核食細胞系による除去を減らして血中滞留時間を延ばす。細胞に取り込まれた後、酸性化したエンドソーム内でイオン化脂質が正電荷を帯びて膜を不安定化し、核酸を細胞質へ放出する(エンドソーム脱出)。脂質組成や粒子物性は体内分布と集積臓器を左右するため、組成設計が臓器選択的な送達の中心的手段となる。製造にはマイクロ流体による混合が用いられる。
COVID-19向けmRNAワクチンで大規模に実用化され、以降は肝臓以外の臓器への送達、反復投与、遺伝子編集ツールの送達などに適用範囲が広がっている。核酸医薬の実用化を左右する律速要素の一つであり、脂質の分子設計と製剤プロセスが企業間の差別化要因となっている。