Pointing, Acquisition and Tracking (PAT)
指向・捕捉・追尾(PAT)は、空間光通信の端末がリンクを成立させ維持するための三段階の処理を指す。レーザビームは幅が狭いため、送信側と受信側の間に高精度の機械的なアライメントが必要であり、これは接続ごとに毎回やり直さなければならない。長距離の空間光通信の実現可否は、PATシステムの性能に大きく依存する。
第一段階の指向では、光学ヘッドが姿勢情報と軌道暦から相手位置を計算し、その方向へ機械的に旋回する。所要時間は旋回すべき角度と旋回速度で決まる。第二段階の捕捉では、不確定領域(field of uncertainty)内に入った後、高速可動ミラー(FSM)などの精指向機構でビーム位置を微調整し、六角スパイラルなどの走査パターンで相手を探す。片方が走査し他方が待ち受ける手順が採られ、ビーコン光を用いる方式と、ビーコンを使わない方式がある。第三段階の追尾では閉ループ制御へ移行し、追尾センサからの連続的なフィードバックによりマイクロラジアン級のアライメントを保つ。指向の不確かさは姿勢推定誤差、熱膨張、軌道暦の誤差から生じ、較正と高速可動ミラーで補償する。
捕捉に要する時間はリンク切替の頻度が高いコンステレーションでは無視できないオーバーヘッドとなる。粗指向のジンバルと精指向のFSMを含む機構は端末の体積・質量・消費電力を押し上げるため、小型衛星向け端末ではPAT機構の簡素化と小型化が設計上の主要な争点になる。