Silicon anode
リチウムイオン電池の負極には長く黒鉛が用いられてきたが、シリコンは 1 グラムあたり黒鉛の 10 倍の電荷を保持できるとされ、エネルギー密度を高める有力な選択肢となっている。一方で、リチウムと反応する際に体積がおよそ 300 パーセント膨張し、負極が崩壊する点が実用化の障壁であった。
対策の中心は、膨張を吸収する構造の設計にある。シリコンをナノ寸法化して粒子内の応力を下げる、炭素と複合化して導電経路と機械的強度を確保する、空隙を持つ骨格の内部にシリコンを保持して外形寸法の変化を抑える、といった手法が用いられる。PNNL は、シリコンとカーボンナノチューブを組み合わせた微小球構造により、一般的な黒鉛負極の 2 倍の電荷を受け入れながら厚み変化を 20 パーセント未満に抑えた例を報告している。膨張収縮に伴う電極表面被膜の再生成が電解液を消費し、寿命を左右する要因となる点も設計上の制約である。
黒鉛への少量添加から、シリコン主体の負極材料への置換まで適用の幅がある。既存のセル製造ラインに投入できる粉体材料として供給する形態が採られ、負極材の加工能力がどこに立地するかが供給網上の論点になっている。