アデノ随伴ウイルスベクター

Adeno-associated virus vector (AAV)

遺伝子治療において治療用の遺伝子を細胞へ届けるために用いられるウイルスベクターである。米国では、AAV5型のベクターを単回の静脈内投与で用い、肝臓で血液凝固第VIII因子を発現させる重症血友病Aの遺伝子治療が2023年に承認されている。ベクターに対する既存抗体の有無が投与対象を左右する。

詳細

概要

FDAは遺伝子治療を「遺伝子の発現を改変するか、生きた細胞の生物学的性質を変えることを目指す治療」と定義し、その手段の一つにウイルスベクターを挙げている。ウイルスが本来もつ細胞へ遺伝物質を送り込む能力を利用し、治療用の遺伝子を運ぶ乗り物として使うものである。アデノ随伴ウイルス(AAV)はこの用途で広く使われるベクターの一つである。

技術的な要点

FDAが2023年6月29日に成人の重症血友病Aを対象として承認したロクタビアン(バロクトコジーン ロクサパルボベク)は、アデノ随伴ウイルス5型(AAV5)に基づくベクターを用い、単回の静脈内投与によって肝臓で第VIII因子を発現させる製品である。適応は抗AAV5抗体を保有しない成人に限られており、FDAが承認したコンパニオン診断(AAV5 DetectCDx)で抗体の有無を確認する。既存の抗AAV5抗体がある患者では効果が低下する、あるいは得られない可能性があるとされ、ベクターに対する免疫が投与対象を規定する要因になっている。

産業での位置づけ

どの血清型・カプシドを使うかという設計と、臨床用量に見合う量を安定して作る製造の両面が開発の律速になりやすい。ウイルスベクター製造に特化した受託製造や、製造工程そのものを対象とする技術開発が事業領域として成立している。