用語集

電気自動車 BEV Battery Electric Vehicle
モビリティ

駆動用の電池に外部から充電し、内燃機関を用いずに電動機だけで走行する自動車である。米エネルギー省の代替燃料データセンター(AFDC)は、全電動車(バッテリー電気自動車とも呼ばれる)を、充電設備に接続して充電される電池を備え、常に全電動モードで動作する車両と説明する。同センターによれば一充電あたりの走行距離は概ね150〜400マイルである。燃料と電気の双方を用いるハイブリッド車とは異なり、走行に必要な電力をすべて外部からの充電で得る点で区別される。

電気推進 EP Electric Propulsion
宇宙

電気エネルギーを用いて推進剤を加速し推力を得る宇宙機の推進方式である。NASAの小型宇宙機技術の現状報告は、方式によって比推力が異なるとし、レジストジェット、エレクトロスプレー、イオンエンジン、パルスプラズマ・真空アークスラスタ、ホールスラスタを区分として挙げている。推力はマイクロニュートンからミリニュートン程度と小さいが、化学推進より高い比推力が得られる。

電気透析 Electrodialysis
環境・気候

陰イオン交換膜と陽イオン交換膜を交互に並べ、電位差によって水中のイオンだけを膜の間で移動させ、脱塩室と濃縮室に分ける分離方式である。気候技術センター・ネットワーク(CTCN)の解説では、膜がイオン性の物質だけを通すため有機物との分離を効率よく行える。高圧ポンプを要さないため運転費用は逆浸透と同程度以下にとどまり、水の再利用率は組成によるがおよそ90%に達するとされる。

電気二重層キャパシタ EDLC Electric Double-Layer Capacitor
エネルギー・蓄電

電極表面とそれに接する電解液との界面に形成されるイオンの吸着層を利用して電気を蓄える蓄電デバイスである。産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門の解説によれば、電気二重層における蓄電は静電的な吸脱着に基づくもので、二次電池のような化学反応を伴わないことから、高速な充放電が可能であり、充放電を繰り返しても劣化が小さいという特徴を持つ。電極材料の設計が性能を左右する。

電子設計自動化 EDA Electronic Design Automation
半導体

電子システム、とりわけ集積回路の設計と製造準備を支援するソフトウェアおよびハードウェアのツール群。設計入力、シミュレーション、論理合成、配置配線、検証、サインオフといった工程を自動化し、数十億規模の素子と配線を扱えるようにする。半導体開発の基盤となる。

電子ビームリソグラフィ EBL Electron-beam Lithography
半導体

ナノ構造の微細形状を精密に制御できるリソグラフィ技術。横方向分解能10nm、パターン配置精度1nm、描画フィールド1mmがいずれも実現可能とされる。

テンソル並列 Tensor Parallelism
AI基盤

ニューラルネットワークの層の内部にある行列積を分割し、複数の演算器で同時に実行する並列化手法である。単一の演算器の容量に収まらない規模のモデルを扱えるようにする。層単位で分割するパイプライン並列とは直交する関係にあり、両者を組み合わせて用いられることが多い。

電池健全度 SOH State of health
エネルギー・蓄電

新品時の性能に対する現時点の性能の比で、電池の劣化度合いを表す指標。容量基準のSOH_Qと電力量基準のSOH_Eという二つの定義があり、後者は航続距離という利用者の体感に近い。パック単位の測定手順が標準化されていないため、メーカー間で値を直接比較できない点が課題とされる。

電池リサイクル Battery Recycling
エネルギー・蓄電

使用済みまたは製造工程で生じたリチウムイオン電池から材料を回収し、新しい電池の材料へ戻す一連の処理である。米国環境保護庁(EPA)は、収集と選別のあと修理・再利用の可否を評価し、次に破砕する工程を示す。破砕によってブラックマス、銅・アルミ箔、セパレータ、その他のプラスチック、鋼缶、電解液に分かれる。ブラックマスは破砕された正極と負極からなる粒状材料であり、新しい電池の正極・負極に加工できる材料を含むとされる。

電動垂直離着陸機 eVTOL electric Vertical Take-Off and Landing aircraft
モビリティ

垂直に離着陸する分散推進の航空機。欧州航空安全機関が2019年7月2日に発行したSC-VTOL-01は、最大離陸重量3,175kg以下、座席9席以下で、揚力・推力ユニットを3基以上持つ機体を対象とする型式証明の基準を定め、BasicとEnhancedの2区分を設けている。

電力購入契約 PPA Power Purchase Agreement
環境・気候

第三者が再生可能エネルギー設備を設置・保有・運営し、需要家があらかじめ定めた単価で電力を購入する長期契約である。需要家は設備の初期投資や保守を負担せずに済み、契約では発電に伴う環境価値(証書)の帰属も定める。契約期間は15〜20年が一般的とされる。

電力使用効率 PUE Power Usage Effectiveness
AI基盤

データセンター全体のエネルギー消費量を、同じ期間のIT機器のエネルギー消費量で割った指標である。国際規格 ISO/IEC 30134-2 が定義と測定・算定・報告の方法を定めており、定義上その値は1より大きい。測定点の違いによる区分も規定されている。

Toll様受容体 TLR Toll-like receptor
バイオ・創薬

病原体に由来する分子パターンを認識する自然免疫のパターン認識受容体である。このうちTLR3・TLR7・TLR8・TLR9はエンドソーム内に局在し、核酸を認識してI型インターフェロンや炎症性サイトカインの産生を誘導する。自己核酸による不適切な活性化は自己免疫疾患の病態に関与するとされる。

投機的デコーディング Speculative Decoding
AI基盤

小型の近似モデルに複数トークンを先行生成させ、大規模モデル側でそれらを一度の並列計算により検証・採択することで推論を高速化する手法である。採択と棄却のサンプリング規則を適切に設計することで、元の大規模モデル単体で生成した場合と同一の出力分布を保ったまま加速できる。

凍結療法 Cryoablation
ヘルスケアデバイス

極低温によって組織を破壊する治療法である。米国立がん研究所(NCI)は、液体窒素またはアルゴンガスが作り出す極度の低温を用いて、がん細胞や異常な組織を破壊する治療と説明する。皮膚の病変には綿棒や噴霧器で液体窒素を直接当て、体内の病変には小さな切開や穿刺からクライオプローブを挿入し、凍結用のガスをプローブに流しながら画像で位置を確認して周囲の組織への影響を抑える。体内の腫瘍では小さな切開や穿刺で済むため、痛みや出血など手術に伴う問題が軽減されるとされる。

同時5軸加工 Five-axis Machining
製造・工作機械

3つの直進軸に2つの回転軸を加えた5軸を同時に制御し、工具と被削物の相対姿勢を変えながら削る加工方式。ISO 10791-7:2020 は3軸から5軸までの同時加工軸を持つマシニングセンタを対象とし、附属書Aで5軸マシニングセンタ用の自由曲面試験片を規定している。

動的送電容量 DLR Dynamic Line Rating
エネルギー・蓄電

送電線の熱的定格を、実際の環境条件や電線の状態に基づいて動的に決める技術と手法の総称である。米エネルギー省の2019年6月の議会報告書は、より良質で粒度の細かい実時間データを用いて電線の熱的定格をより動的に決める多様な技術と方法論を指す包括的な用語と説明する。従来の静的定格は保守的な気象条件を前提に算出されるため、風による冷却などの好条件を活かせない硬直した制約になる。技術は気象条件を測る方式と電線自体を測る方式に大別される。

トカマク Tokamak
エネルギー・蓄電

ドーナツ状の真空容器の周囲に磁気コイルを配置し、約1億5,000万℃の高温プラズマを磁場で閉じ込める核融合装置。ITERは重水素・三重水素反応により、50MWの加熱入力に対して500MWの核融合出力、すなわちエネルギー増倍率Q=10を目標に掲げている。JETの1997年の記録はQ=0.67であった。

土壌炭素貯留 Soil carbon sequestration
農業・食料

分解や流出で失われる量を上回る炭素が土壌に加えられ、土壌有機炭素として蓄積すること。FAOは表層30センチの土壌が大気と植生を合わせたよりも多くの炭素を含むとし、世界の土壌には年0.14〜0.57ペタグラム炭素の貯留ポテンシャルがあるとしている。

トポロジー最適化 Topology Optimization
製造・工作機械

部品の設計を洗練させて性能を高める手法として広く用いられる構造設計の方法である。最適化の過程で部品の性能を評価するために有限要素解析を何度も反復する必要があり、計算負荷が大きい。近年は機械学習でこの負荷を緩和する手法が検討されているが、従来は二次元で低解像度の問題に示された例が主である。

ドメインランダマイゼーション Domain Randomization
ロボティクス

シミュレーションの見え方や物理パラメータを意図的にランダムに変動させて学習させ、現実世界を学習分布の一変種としてモデルに扱わせる手法。実機画像を一切使わずに学習した物体検出器が実環境で機能することが2017年に示され、実機転移の代表的な方法になっている。

トラクションモータ Traction Motor
モビリティ

車両を駆動する電動モーターである。米エネルギー省(DOE)は、電動ドライブシステムにおいて電気モーターが電池に蓄えた電気エネルギーを機械エネルギーに変換すると説明する。主な方式は内部永久磁石(IPM)、誘導、スイッチトリラクタンスである。IPMは出力密度が高く広い運転範囲で高効率を保つが、DOEによればハイブリッド車とプラグイン電気自動車のほぼすべてが希土類永久磁石を用いており、材料の入手性と高コストが制約になっている。

トランスフォーマー Transformer
AI基盤

注意機構(アテンション)のみで系列を処理するニューラルネットワークの構造。2017年の論文 Attention Is All You Need で、再帰と畳み込みを完全に排した構成として提案された。系列内の全要素の関係を並列に計算でき、大規模言語モデルの基盤アーキテクチャとなっている。

TRISO燃料 TRISO TRISO Fuel (Tri-structural Isotropic coated particle fuel)
環境・気候

ウランの燃料核を炭素系・セラミック系の複数層で被覆した粒子状の原子炉燃料である。粒子ひとつひとつが核分裂生成物を閉じ込める障壁として働き、中性子照射や高温への耐性が高い。ペレットや球状のペブルに成形し、高温ガス炉や溶融塩冷却炉に用いる。燃料そのものが閉じ込め障壁となる点が従来燃料と異なる。

トリチウム増殖ブランケット Tritium Breeding Blanket
エネルギー・蓄電

核融合炉の炉心を取り囲み、重水素・トリチウム反応で発生した高エネルギー中性子をリチウムに吸収させて、燃料であるトリチウムを炉内で生成する機器である。燃料の自給と発電のための熱回収を同時に担うため、核融合を実験装置から発電プラントへ移行させる上で不可欠な要素と位置づけられる。

ナトリウムイオン電池 Na-ion Sodium-ion battery
エネルギー・蓄電

リチウムイオンの代わりにナトリウムイオンを電荷担体とする二次電池。IEAによれば最新セルのエネルギー密度は最大で約175Wh/kgとLFPの205Wh/kgを下回る一方、低温特性に優れ、最新世代はマイナス40℃でも公称容量の約90%を保持する。生産能力の95%以上を中国が占める見通しである。

ナノインプリントリソグラフィ NIL Nanoimprint Lithography
半導体

ナノインプリントリソグラフィ(NIL)は、ナノメートル規模のパターンを刻んだモールドを材料に押し当てて形を転写するパターン形成技術である。NISTは、10nm未満の構造を機能性材料にも直接形成でき、データストレージ媒体やLED、ディスプレイ、センサーなどが対象になると説明している。

ナノシートトランジスタ GAA Nanosheet (Gate-All-Around) Transistor
半導体

チャネルをゲートで全周から囲むトランジスタ構造を、水平なシートを縦に積層して実現したもの。imecは、チャネルがhigh-k/メタルゲートで完全に囲まれるためFinFETより短チャネルでの制御性が高く、同じ占有面積でより大きな駆動電流が得られると説明している。3nm世代以降のスケーリングの前提になっている。

ナノフォトニックカラースプリッタ Nanophotonic Colour Splitter
センシング・光学

吸収で色を選り分ける従来のカラーフィルタの代わりに、ナノ構造で入射光を波長ごとに各画素へ振り分けるイメージセンサ用の光学素子。ベイヤー配列のカラーフィルタは原理上、白色光のエネルギー利用効率が約3分の1に制限される。

ナビゲーション気管支鏡 ENB Navigational Bronchoscopy
ヘルスケアデバイス

末梢肺結節へ低侵襲かつ正確に到達するための誘導機能付き気管支鏡技術。当初は電磁ナビゲーション気管支鏡と同義だった。