用語集

単一ドメイン抗体 sdAb Single Domain Antibody
バイオ・創薬

ラクダ科動物に見られる重鎖のみの抗体に由来する、最小の機能的抗体形式。分子量はおよそ15kDaで、約150kDaの完全長IgGよりはるかに小さい。原核・真核の宿主で高発現し、溶解性と安定性が高く、小ささゆえの組み合わせやすさから二重特異性抗体やCAR分子の結合部位として使われる。

段階燃焼サイクル Staged Combustion Cycle
宇宙

液体ロケットエンジンの動力サイクルの一つで、プリバーナで推進剤を燃焼させてターボポンプのタービンを駆動し、その燃焼ガスをさらに主燃焼室で燃やす方式である。燃料リッチと酸化剤リッチのプリバーナを併用する全流量式は、タービン温度を下げやすく再使用性に効くとされる。

単原子触媒 SAC Single-Atom Catalyst
素材・化学

金属を原子1個ずつ担体上に孤立させて分散した不均一系触媒。表面の原子しか反応に関与しない金属ナノ粒子と異なり、ほぼすべての金属原子を活性点として使えるため原子利用効率が高い。2011年にNature Chemistryで報告されたPt1/FeOxが代表例で、一酸化炭素の酸化と水素中の一酸化炭素の選択酸化に高い活性を示した。

単細胞タンパク質 SCP Single-Cell Protein
農業・食料

微生物の菌体そのものを食品や飼料のタンパク質源として使うもの。水素酸化細菌を用いる方式では、電解で作った水素と大気中の二酸化炭素・窒素から菌体を育てる。Nature Communications の解析によれば、菌体の乾燥重量に占めるタンパク質は30〜80%で、残りは可食の脂質・炭水化物・微量栄養素である。

炭素繊維強化プラスチック CFRP Carbon Fiber Reinforced Plastic
素材・化学

炭素繊維の束を樹脂で固めた複合材料。産総研の解説では鋼の4分の1以下の重さで引張強度は数倍とされ、腐食せず温度や湿度の変化にも寸法が安定している。航空機や自動車、風車ブレードに使われる一方、繊維と樹脂の分離が難しくリサイクルが課題となっている。

タンデム太陽電池 Tandem Solar Cell
エネルギー・蓄電

吸収する波長域が異なる二つ以上の光吸収層を積層し、太陽光スペクトルをより広く利用する太陽電池である。単接合セルより高い変換効率を狙える。ペロブスカイトとシリコン、ペロブスカイトとCIGS、III-V族とシリコンなど、異種材料の組合せが研究されている。

タンパク質構造予測 Protein structure prediction
バイオ・創薬

アミノ酸配列からタンパク質の立体構造を計算で予測する技術である。Google DeepMindが開発したAlphaFoldは2020年のCASP14でタンパク質フォールディング問題に対する解と評価され、EMBL-EBIとの協働により2億件を超える予測構造が無償で公開されている。

タンパク質分解誘導キメラ分子 PROTAC Proteolysis Targeting Chimera
バイオ・創薬

標的タンパク質とE3ユビキチンリガーゼの双方に結合するキメラ分子で、ユビキチン・プロテアソーム系を利用して標的タンパク質を分解させる。作用が触媒的である点と、阻害では狙いにくく「ドラッガブルでない」とされてきた標的にも取り組める点が特徴として挙げられている。

タンパク質分離物 SPI Protein Isolate
農業・食料

コーデックス規格では、大豆タンパク質製品のうちタンパク質含量が乾物基準で90%以上のものを大豆タンパク質分離物(SPI)と定義する。

短波赤外イメージセンサ SWIR short-wave infrared image sensor
センシング・光学

シリコンが感度を持たない1000 nmより長い波長域を撮像するイメージセンサ。InGaAsを受光層に用いた素子が代表的で、InP基板上に形成した受光層をインジウムバンプで読み出し回路に接合する構造をとる。専用の製造工程を要するため解像度に制約があり高価である。

CHERIアーキテクチャ CHERI Capability Hardware Enhanced RISC Instructions
半導体

ポインタをケイパビリティとして扱い、ハードウェアで保護する命令セットアーキテクチャの拡張である。ケンブリッジ大学の解説によれば、CHERIはCapability Hardware Enhanced RISC Instructionsの略で、ハイブリッド型のケイパビリティシステムモデルを実装する。ケイパビリティは仮想アドレスに加えて境界や権限といったメタデータを保持し、ポインタ自体を保護する1ビットのタグを伴う。これによりポインタの生成と使用が制御され、改変できないことと権限委譲の正当性が担保される。

地下水浄化 Groundwater remediation
環境・気候

汚染された地下水から有害物質を除去、分解、封じ込める一連の技術。地中で処理する原位置(in situ)技術と、揚水・掘削して地上で処理する ex situ 技術に大別される。米国EPAはCLU-INで技術ごとの原理、期間、留意点を整理している。

蓄熱 TES Thermal Energy Storage
エネルギー・蓄電

蓄熱媒体を加熱または冷却して熱エネルギーを貯め、後から冷暖房や発電に使う技術。顕熱、潜熱、熱化学の3方式がある。

治験機器適用免除 IDE Investigational Device Exemption
ヘルスケアデバイス

米国FDAの制度で、市販承認前の医療機器を臨床試験に用いて安全性・有効性データを収集することを認めるものである。得られたデータは市販前承認(PMA)や市販前届出(510(k))の申請根拠となる。重大なリスクを伴う機器を用いる試験では、治験審査委員会の承認に加えFDAによる承認が必要となる。

知識蒸留 Knowledge Distillation
AI基盤

大きなモデルやモデルの集合が持つ知識を、小さな1つのモデルに移す学習手法。正解ラベルではなく、教師モデルが出力するクラス全体の確率分布を目標として生徒モデルを学習させる。推論コストを下げながら性能を保つ手段として、実運用するモデルの小型化に使われる。

地質学的水素 Geologic Hydrogen
エネルギー・蓄電

地下に天然に存在する水素ガス。米地質調査所(USGS)は「地球の地表下に自然に見つかる水素ガス」と定義している。工業的に製造する水素と異なり、従来の石油資源と同じように地中の岩石によって生成され、岩石中に貯留される。

地中レーダ GPR Ground Penetrating Radar
センシング・光学

米国環境保護庁(EPA)は、選択した中心周波数の電波パルスを地中へ送信して地下を調べる物理探査手法と説明する。送信機と受信機を一定の間隔で組にして用い、25〜1,500MHzの周波数が使われる。電磁的性質が十分に異なる境界で一部のエネルギーが反射し、残りは伝搬を続ける。多くの地下環境では誘電率の差が反射の主因であり、誘電率は含水率に強く左右される。信号減衰は導電率が支配するため、導電率の低い材料ほど適用に向く。

地熱エネルギー Geothermal Energy
エネルギー・蓄電

地球が持つ熱に由来するエネルギーである。米エネルギー省は、地熱資源を、地下のさまざまな温度と深さに天然または人工に存在する熱水の貯留層と説明する。数フィートから数マイルの井戸を掘って蒸気や高温水を地表へ取り出し、発電、冷暖房、直接利用にあてる。発電では高温岩体と流体、そして流体が岩の間を動ける透水性が揃う場所で、天然または人工の透水性と亀裂を通して流体が熱を受け取り、井戸で汲み上げた熱を蒸気に変えてタービンを回す。

中軌道 MEO Medium Earth Orbit
宇宙

低軌道と静止軌道の間に位置する地球周回軌道の総称で、通常はヴァン・アレン帯より上に取られる。一機あたりの地表可視範囲が広く全球被覆に必要な機数が少ない一方、放射線環境が厳しい。測位衛星が代表的な利用者で、近年は通信コンステレーションの配置先としても使われる。

中空コアファイバ HCF Hollow-Core Fibre
通信・ネットワーク

コアのガラスを気体または真空に置き換えた光ファイバである。英サウサンプトン大学光電子研究センター(ORC)は、微細構造ファイバの一種として、精密な微細構造クラッドに囲まれた中空のコアに光を導くものと説明し、導波機構によって反共振型とフォトニックバンドギャップ型に大別する。同センターは、中空コアでは光の速度が速く情報の遅延が小さいこと、また従来の全ガラス製ファイバより低損失かつ大容量となりうることを利点として挙げ、データセンター、5G移動通信、自動運転車にとって重要な特性だとしている。

中性原子量子コンピュータ Neutral-atom quantum computing
量子

レーザーで作る光ピンセットの配列に中性原子を一つずつ捕捉し、量子ビットとして使う方式。リュードベリ状態の強い相互作用(リュードベリブロッケード)でもつれを生成する。配列の形状はホログラフィック手法で任意に設計でき、ゲート回路によるデジタル方式とハミルトニアンを設計するアナログ方式の双方で計算できる。

鳥瞰図(BEV)認識 BEV Bird's-Eye-View Perception
モビリティ

複数のカメラやセンサから得た観測を、車両を真上から見下ろす統一座標系の表現に変換したうえで、三次元物体検出や地図セグメンテーションを行う自動運転向けの知覚手法である。センサごとの視点差を吸収でき、経路計画や地図と座標系を共有できるため、認識結果をそのまま下流モジュールへ渡せる。

超高信頼・低遅延通信 URLLC Ultra-Reliable and Low Latency Communications
通信・ネットワーク

IMT-2020 で定義された利用シナリオの1つで、遅延と信頼性に厳しい要件を課す通信区分。ITU-R 報告 M.2410-0 は、ユーザプレーン遅延1ミリ秒、および32バイトのレイヤ2 PDU を1ミリ秒以内に伝送できる成功確率1-10⁻⁵を最小要件として規定している。

長時間エネルギー貯蔵 LDES Long-duration energy storage
エネルギー・蓄電

長時間にわたって放電を続けられる蓄電技術の総称。米国エネルギー省は10時間以上にわたり電力を供給できる貯蔵システムと定義し、数時間規模のリチウムイオン蓄電池とは別の支援区分を設けている。出力部分と貯蔵部分を分離できる構成ほど、放電時間を延ばす際の限界費用が小さくなる。

超伝導ナノワイヤ単一光子検出器 SNSPD Superconducting Nanowire Single-Photon Detector
センシング・光学

超伝導体の細線を臨界温度のわずかに下に保ち、光子1個の吸収によって局所的に超伝導が破れることを電圧パルスとして読み出す検出器である。米国国立標準技術研究所(NIST)は、最も高感度な単一光子検出器は超伝導体を用いると説明し、細線を絶対零度より1〜2度高い温度に保ちながら、超伝導を保てる最大電流をわずかに下回る電流を流すとしている。光子を吸収した箇所が発熱して抵抗が生じ、測定可能な電圧パルスが現れる。

超伝導量子ビット Superconducting qubit
量子

ジョセフソン接合を非線形インダクタとして用い、エネルギー準位を不均一にした超伝導回路の量子ビット。広く使われるトランズモン型は接合を大きな容量で分流して電荷雑音への感度を下げた構成で、周波数5GHz程度に設計され、希釈冷凍機の20mK程度の環境でマイクロ波により制御・読み出しされる。

腸内細菌叢移植 FMT Fecal Microbiota Transplantation
バイオ・創薬

腸内細菌叢移植(FMT)は、健康なドナーの便に由来する微生物を患者に投与し、再発性クロストリジオイデス・ディフィシル感染症の再発を防ぐ治療である。ドナーは問診や血液・便の検査で選別される。米国では便由来の製品が生物学的製剤として審査され、承認されている。

潮流発電 Tidal Stream Energy
エネルギー・蓄電

潮汐によって生じる海水の流れの運動エネルギーを取り出して発電する方式。European Marine Energy Centre の解説によれば、潮流発電装置は水中に沈めた風車におおむね相当し、水の密度が高いためブレードは小さく回転も遅いまま相応の出力が得られる。同センターは潮流エネルギー変換装置を水平軸タービン、垂直軸タービン、振動水中翼など6つの型に整理している。

超臨界流体 Supercritical Fluid
素材・化学

臨界圧力と臨界温度をともに超えた状態にある化合物・混合物・元素を指す。IUPACのGold Bookはこの状態を超臨界流体と定義している。臨界点は物質ごとに定まるため、どの温度・圧力から超臨界状態になるかは物質によって異なる。

直接液冷 Direct Liquid Cooling
AI基盤

発熱するチップの近傍まで冷却液を導き、コールドプレートや液浸によって直接熱を受け取る冷却方式である。液体の熱容量は空気より桁違いに大きく、高い発熱密度のサーバを空冷より効率よく冷却できるため、AI向け計算設備の設計で前提となりつつある。液浸方式では水消費を抑えられる場合がある。