用語集

上空常時赤外監視 OPIR Overhead Persistent Infrared
センシング・光学

衛星に搭載した赤外センサによって地表や大気の熱源を継続的に監視する方式である。弾道ミサイル発射の早期警戒を主目的として発展し、米国の防衛・情報コミュニティが依存するデータ源となっている。近年は山火事の発火検知など民生用途への応用も検討されている。

使用済燃料再処理 Spent Nuclear Fuel Reprocessing
エネルギー・蓄電

使用済みの原子炉燃料から核分裂性物質を取り出して再利用し、あわせて高レベル放射性廃棄物の量を減らす処理である。世界原子力協会(WNA)は、再処理の主たる目的を、使い残しのプルトニウムと、それほど差し迫っては有用でない使い残しのウランを回収して燃料サイクルを閉じることに置き、これにより元のウランからおよそ25〜30%多くのエネルギーを得られると説明する。副次的な目的として、高レベル廃棄物として処分する物量を約5分の1に減らすことを挙げる。

小線源治療 Brachytherapy
ヘルスケアデバイス

放射線源を腫瘍の内部または近傍に留置して照射する内部放射線治療である。シード、リボン、カプセルなどの形状の線源を、カテーテルや専用のアプリケータを用いて配置する。留置の経路、線量率、留置期間によって組織内照射や腔内照射などに分類され、周囲の正常組織への影響を抑えつつ局所に線量を集められる。

常染色体優性多発性嚢胞腎 ADPKD Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease
バイオ・創薬

多発性嚢胞腎(PKD)のうち最も一般的な病型。家族内で受け継がれる腎疾患としては最も頻度が高い。

状態空間モデル SSM State Space Model
AI基盤

内部状態を更新しながら系列を処理するモデル。注意機構と異なり系列長に対して計算量が線形に伸びる。2023年に発表された Mamba は、入力内容に応じて状態遷移のパラメータを変える選択機構を導入し、長い系列を扱う用途で Transformer の代替候補として扱われるようになった。

静脈血栓塞栓症 VTE Venous Thromboembolism
バイオ・創薬

静脈の中に血栓ができる病態である。米国立心肺血液研究所(NHLBI)は、静脈血栓塞栓症を静脈内に血栓が形成されることで生じる病態と説明し、深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症(PE)の二つの形をとるとしている。DVTは下腿・大腿・骨盤などの深部静脈に生じ、中心静脈カテーテルがある場合は腕にも起こる。血栓がはがれて血流に乗り肺へ達したものがPEであり、血栓が大きい場合や多数ある場合は死に至ることがある。

植物育種 Plant Breeding
農業・食料

作物に望ましい形質を与えるため、交配と選抜を繰り返して新しい品種を作り出す取り組みである。農研機構の解説では、改良したい元品種と、目的の形質を持ち交配可能な系統を遺伝資源から探索し、両者を交配して後代を増やし、その中から目的の形質を持つ個体を選抜する手順を踏む。必要に応じて戻し交配を行い、形質が安定して受け継がれることを何世代かにわたって確認する。

植物工場 Plant factory
農業・食料

施設内で光・温度・湿度・二酸化炭素濃度・養分・水分などの生育環境を制御し、環境と生育のモニタリングを基礎に高度な環境制御と生育予測を行うことで、野菜等の周年・計画生産を可能にする栽培施設。農林水産省の整理では、人工光のみを用いる完全人工光型と、自然光を基本とする太陽光利用型に大別される。

植物フェノタイピング Plant Phenotyping
農業・食料

センシング技術で植物の形質を測定し、生育状態やストレスを定量する手法。Smart Agriculture誌のレビューは、ハイスループット植物フェノタイピングを、先端のセンシング技術を用いて育種で優良系統を選抜することに主眼を置くものと位置づけ、作物ストレスセンシングは水分・養分・病害虫などの生物的および非生物的ストレスを検出して定量し、可変管理につなげるものと説明する。

食用昆虫 Edible insects
農業・食料

昆虫を食品・飼料の原料として利用する分野。EUでは2018年1月1日施行の新規食品規則(EU)2015/2283に基づき、上市前に種ごとの安全性評価を受ける必要がある。EFSAは2021年1月に乾燥イエローミールワームについて初の評価を完了した。組成把握とアレルギー評価が課題とされる。

除草剤作用機構分類 HRAC Herbicide mode of action classification (HRAC)
農業・食料

除草剤を植物内で作用する生化学的な標的、すなわち作用機構(Mode of Action)ごとにグループ分けする国際的な分類体系である。Herbicide Resistance Action Committeeが管理し、同一グループの連用を避ける薬剤ローテーションによる抵抗性雑草の管理の基礎となる。

SiC溶液成長法 TSSG Solution Growth of Silicon Carbide
半導体

高温のSi系融液に炭素を溶解させ、種結晶の近傍を過飽和にして炭化ケイ素の単結晶を析出させる結晶成長法である。熱力学的な平衡状態に近い条件で成長するため、主流の昇華再結晶法に比べて基底面転位や貫通らせん転位の少ない結晶が得られるとされ、高品質基板の製法として研究されている。

シリコンスピン量子ビット Silicon spin qubit
量子

シリコン中の量子ドットに閉じ込めた単一電子のスピン状態を量子ビットとして使う方式。量子ビット間は交換相互作用で結合し、マイクロ波で制御し、ゲートを介した分散読み出しで測定する。

シリコンフォトニクス Silicon Photonics
半導体

シリコンを主材料として光導波路、変調器、受光素子などを同一チップに集積する技術。シリコンマイクロエレクトロニクスの成熟した製造基盤を利用できるため、光集積回路を低コストで大量に生産する用途に展開しやすいとされる。発光素子は他材料との組み合わせで補う必要がある。

シリコン負極 Silicon anode
エネルギー・蓄電

リチウムイオン電池の負極活物質としてシリコンを用いる方式である。黒鉛より単位重量あたり多くの電荷を蓄えられる一方、リチウム挿入時の体積膨張が大きく電極が崩れやすいため、膨張を吸収する構造設計と炭素との複合化、被膜の安定化が実用化の鍵となる。

自律移動ロボット AMR Autonomous Mobile Robot
ロボティクス

あらかじめ敷設した誘導路に依存せず、自ら経路を決めて構造化されていない空間を移動する産業用ロボット。米国のANSI/RIA R15.08-1-2020が産業用移動ロボットの安全要求を定めており、走行機能のみのタイプAから移動マニピュレータのタイプCまで3種類に分類している。

自律運航船 MASS Maritime Autonomous Surface Ship
モビリティ

人の関与の度合いに応じて運航の自律度を段階で整理する船舶。IMOの規制スコーピング作業では、意思決定支援を伴う自動化から、乗組員を乗せた遠隔操船、無人の遠隔操船、完全自律までの4段階が用いられ、目標指向型のMASSコードの策定が議論されている。

自律型兵器システム Autonomous Weapon System
ロボティクス

米国防総省指令3000.09は、自律型兵器システムを「起動後、操作者のさらなる介入なしに目標を選択し交戦できる兵器システム」と定義する。操作者が選定した目標のみに交戦する半自律型と区別され、武力行使に対する適切な人間の判断を保つ設計が求められる。

自律型無人潜水機 AUV Autonomous Underwater Vehicle
ロボティクス

母船とケーブルでつながらずに単独で水中を航行する無人の潜水機である。米国海洋大気庁(NOAA)海洋探査局は、水中の調査を行うために用いられる無人・無索の機体と説明する。母船とテザーで結ばれる遠隔操作機(ROV)と異なり、事前に与えた指示に従って目的の地点へ向かい、取得した画像やセンサのデータを機内のコンピュータに蓄える。多くは電池で推進器とセンサを駆動する。

自律実験室 SDL Self-Driving Laboratory
素材・化学

Chemical Reviews 誌の総説によれば、自動化された実験と、データ駆動の意思決定とを統合し、科学的方法の適用を加速することを目的とした系である。ソフトウェア(実験の選択)とハードウェア(実験の実行)という二つの軸で自律度が分類され、実験結果を次の実験の設計に還す閉ループ運用が中核をなす。同種の取り組みは「自律実験室」「閉ループ実験」「材料加速プラットフォーム」とも呼ばれてきたとされる。

心筋ミオシンモジュレーター Cardiac Myosin Modulator
バイオ・創薬

心筋のミオシンに直接作用して収縮力を調節する薬剤群。阻害剤は アクチン・ミオシン間の架橋形成を減らして過収縮を抑え、肥大型心筋症の左室流出路閉塞を軽減する。活性化剤は力を発生する状態へ移るミオシン頭部の割合を増やし、細胞内カルシウムを上げずに収縮を強める。

真空ガラス VIG Vacuum Insulating Glass
素材・化学

2枚のガラス板の間を真空に排気して、気体を介した熱伝導と対流を断つ窓用ガラスである。ローレンス・バークレー国立研究所の解析資料は、板間の圧力を0.1mTorr(0.01Pa)未満とし、板の間隔を保つために微小なピラーを通常2〜5cm間隔で規則的に並べると述べる。ピラーは点状の熱橋となる。真空を保つため周縁は恒久的に封止され、はんだガラスによる剛性の封止と金属箔による可撓性の封止が検討されている。同資料の解析例では厚さ6.452mmの構成で熱貫流率0.519W/(m2K)が得られている。

人工降雨(雲の種まき) Cloud Seeding
環境・気候

人工降雨(クラウドシーディング)は、雲に粒子を加えて液滴や氷晶の数と大きさを変え、降水の量や性質を変えようとする気象調節の代表的な手法である。WMOは、50を超える国で気象調節の事業が行われていると述べ、推進も抑制もしない立場を示している。

水素ステーション Hydrogen Refuelling Station
エネルギー・蓄電

燃料電池車などの道路車両に気体水素を充填する設備である。国際規格 ISO 19880-1:2020 は、公共・非公共の水素充填ステーションについて、安全と必要に応じた性能のための設計・設置・試運転・運用・点検・保守の最低要求事項を定めている。水素の製造・受入系統、圧縮設備、バッファ貯蔵、プレクール装置、ディスペンサが適用範囲に含まれ、極低温液体水素の供給と金属水素化物を用いる用途は除かれる。

水素直接還元鉄 H2-DRI Hydrogen-based Direct Reduced Iron
素材・化学

鉄鉱石を溶かさず固体のまま水素で還元して鉄をつくる製鉄方式。世界鉄鋼協会は直接還元を「固体状態の鉄鉱石から化学的に酸素を取り除くこと」と説明している。還元剤に水素を使うため、排出されるのは二酸化炭素ではなく水になる。

水中音響通信 Underwater Acoustic Communication
通信・ネットワーク

音波を用いて水中で情報を伝える通信方式である。水中では広く用いられてきたが、水中環境の複雑さによって性能が大きく損なわれてきた。系の設計と改善にはチャネルの理解が必要であり、仮定を置いた数式と近似によるモデル化に加え、実測データを用いた深層学習によるモデル化が試みられている。

垂直外部共振器面発光レーザー VECSEL Vertical External Cavity Surface Emitting Laser
センシング・光学

利得チップと外部の出力鏡で共振器を構成する面発光の半導体レーザー。半導体ディスクレーザーとも呼ばれる。強度を一定に保ったまま励起スポットと共振器モードの径を広げることで出力を素直に増やせ、回折限界に近いガウシアンビームが得られる。発振波長はバンドギャップ設計で選べる。

スイッチトリラクタンスモータ SRM Switched Reluctance Motor
モビリティ

固定子と回転子の双方が突極構造をとり、回転子が磁界に整列しようとする磁気抵抗の性質からトルクを得るモータである。永久磁石も回転子巻線も持たないため希土類材料を必要とせず、構造が簡素で故障許容性が高い一方、トルクリップルと騒音の大きさが課題となる。

水電解 Water Electrolysis
エネルギー・蓄電

電気を用いて水を水素と酸素に分解する工程である。米エネルギー省は、この反応は電解槽(electrolyzer)と呼ばれる装置の中で起こり、電解槽は電解質で隔てられた陽極と陰極からなると説明する。電解質の種類によって系の中を伝導するイオン種と水素が生じる仕組みが決まり、固体高分子形、アルカリ形、固体酸化物形に大別される。

髄内固定 Intramedullary Fixation
ヘルスケアデバイス

骨折した骨を接合して保持するために、骨腔(骨髄腔)に釘(ネイル)を挿入する固定法。