電解液とセパレータの代わりに固体電解質を用いる二次電池。可燃性の有機溶媒を使わないため電池パックの安全・冷却系を簡素化でき、体積エネルギー密度の向上と急速充電の実現が見込まれる。NEDOのプロジェクトでは硫化物系の中型セルサイズで450Wh/Lを実証しており、課題は固体どうしの界面の形成と維持にある。
局所的な感染をきっかけに、感染していない組織を含む植物体全体で幅広い病原体への抵抗性が長期に高まる誘導免疫である。サリチル酸とその受容体であるNPR1が中心的な役割を担う。防御の発動は成長ホルモン経路の抑制を伴うため、成長と防御のトレードオフをどう扱うかが実用上の課題となる。
皮膚がんのモニタリングのために、患者の見えるすべての皮膚病変を記録する皮膚科の技術。3D全身写真撮影(3D-TBP)はその新しい形態。
内燃機関で駆動する発電機や主機で駆動する軸発電機・電動機と、蓄電池などのエネルギー貯蔵システムを組み合わせて船舶の発電・推進系を構成する方式である。米国船級協会(ABS)の2024年4月の要求事項はこう定義し、エネルギー貯蔵システムには蓄電池、スーパーキャパシタ、燃料電池などが含まれるとする。同要求事項は全電気式動力系を、エネルギー貯蔵システムやエネルギー変換装置、太陽光や風力などの非在来型電源の組み合わせで構成し、内燃機関は非常用電源としてのみ用いるものと定義し、これで運航できる船舶を全電気推進船としている。
車体の向きを変えずに任意の方向へ並進でき、同時に旋回もできる移動ロボットである。メカナムホイール、オムニホイール、スワーブドライブ、球体駆動などの機構があり、平面上の3自由度を独立に制御できる構成をホロノミックと呼ぶ。切り返しを要しないため狭い空間での搬送に向く。
入力ごとに一部のパラメータ(専門家)だけを選んで使う疎活性化のモデル構造。ルータが各入力を担当する専門家に振り分けるため、総パラメータ数を増やしても1入力あたりの計算コストをほぼ一定に保てる。大規模モデルのコスト効率を左右する設計として使われる。
前立腺上皮細胞の膜に存在するII型膜貫通糖タンパク質で、悪性化に伴って発現量が増える腫瘍関連抗原である。結合した分子が細胞内へ取り込まれる性質を持つため、放射性リガンドを標識した薬剤の集積先として利用され、前立腺癌の画像診断と放射性核種治療に共通する標的となっている。
ヒト細胞から作られ、臓器の構造と機能を模倣する生体工学デバイスである。米国立衛生研究所(NIH)傘下の国立トランスレーショナル科学推進センター(NCATS)は、これをティッシュチップと呼び、organs-on-chipsとも呼ばれると述べ、心臓、腎臓、肺などの臓器系の構造と機能を模すと説明する。医薬品がヒトで安全か毒性を示すかを従来法より速く効果的に予測するために開発されており、複数を統合したbody-on-a-chipや、動物モデルが病態を再現しない疾患の研究にも用いられる。
病害虫の生態に関する知識と複数の防除手段を組み合わせ、被害を経済的に許容できる水準に抑えつつ人や環境への影響を小さくする管理の考え方である。米国環境保護庁は、要防除水準の設定、モニタリングと同定、予防、防除という四段階として整理し、広範な薬剤散布を最後の手段と位置づけている。
温室効果ガスの排出量や削減効果を測定し、定められた形式で報告し、第三者が検証する一連の手続き。国別のインベントリからカーボンクレジットの発行まで、気候に関する数値の信頼性を支える基盤であり、近年は衛星観測やセンサを用いた計測の自動化が進んでいる。
足場、細胞、生理活性分子を組み合わせて、機能する組織を作り出す実践である。米国立衛生研究所傘下の国立生体医工学・生体画像研究所(NIBIB)は、組織工学が生体材料開発の分野から発展したものであり、この三者を組み合わせて機能的な組織にすることを指すと説明する。生体内では細胞自身が分泌する細胞外マトリックスが足場にあたり、細胞を支えるだけでなく各種のシグナル分子の中継点としても働く。人工皮膚と軟骨は米国で承認された組織工学製品の例である。
超音波と微小気泡を併用し、細胞膜に一過性の透過経路を形成して核酸などの分子を細胞内へ導入する手法である。気泡の振動が生む音響流とせん断応力が膜の透過性を一時的に高める。ウイルスベクターに依存しない物理的な送達手段として、遺伝子医薬や細胞加工の分野で検討されている。導入効率は周波数や音圧などの音響条件に依存する。
国連規則第156号は、ソフトウェア更新の提供に関する要求を満たすための組織的なプロセスと手順を体系化したものとしてSUMSを定義する。製造者は文書化されたプロセスを認可当局に示して適合証明を取得する必要があり、証明の有効期間は最長3年である。無線更新には別途の要件が課される。
経済産業省と国土交通省のモビリティDX戦略では、クラウドとの通信により自動車の機能を継続的にアップデートし、運転機能の高度化など従来車にない新たな価値を実現できる次世代の自動車と説明されている。同戦略は2030年および2035年にSDVのグローバル販売台数で日系シェア3割を実現することを目標に掲げる。
体外に血液を導いて人工肺で酸素を与え、体内へ戻すことで心臓と肺の働きを代行する生命維持法である。国際団体ELSOは、自身の臓器が働けないほど重症な患者を支える人造の心臓と肺であり、疾患そのものを治すものではなく、心臓や肺が休んで回復する時間を作るものだと説明する。大きな静脈から血液を抜き動脈へ戻して心肺の双方を支えるVA ECMOと、心臓の手前に血液を戻して肺のみを支えるVV ECMOに分かれる。
同一パッケージ内に実装された複数のシリコンダイの間でデータをやり取りする物理層インタフェース。チップレットを組み合わせるマルチダイ設計を成立させる基盤であり、シリアル方式と並列方式があって、帯域密度・ビット当たり電力・遅延が主要な設計指標となる。
多数のタスクにまたがるロボット操作を単一の方策で扱う、大規模な模倣学習モデル。拡散方策の枠組みをシミュレーションと実機の大規模データに拡張したもので、事前学習の規模と多様性が増すほど性能が向上し、新規タスクの習得に必要なデータ量が減るとされる。
多数のアンテナ素子を用い、端末ごとに指向性の高いビームを形成して同じ資源を空間的に多重する方式。ITU-R 報告 M.2516-0 は、ビーム間干渉を極めて低く抑えた多重化を実現する多元接続の手法として強い可能性を持つ一方、RF チェーンのコストと実装の複雑さが課題だと述べている。
高精度三次元地図情報を基盤として、様々な主体が保有し時間とともに変化する位置特定可能なデータを紐づけ、ルールを定めて整合的に活用する概念である。自動運転車の自己位置推定、道路構造や交通規則の取得、周辺の交通環境の把握に用いられ、変化速度に応じて静的から動的まで階層化して扱う。
トカマク型核融合装置の真空容器内に設けられ、核融合反応で生じた熱と灰を排出し、プラズマの不純物混入を抑え、周囲の壁を熱負荷と中性子負荷から保護する構造物である。ITERでは垂直ターゲットの熱流束が定常で10MW/m2、緩やかな過渡現象で20MW/m2と見積もられている。
宇宙放射線に耐えるよう設計・選別された電子部品。NASAは劣化要因を、陽子・電子による累積的な電離損傷である総電離線量(TID)、非電離の変位損傷(DD)、単一粒子の入射による単一事象効果(SEE)に整理している。設計から耐性を作り込むものを耐放射線、緩和策の併用で使う民生品を放射線耐性と区別する。
無人航空機(ドローン)の脅威に対処する検知系と無力化系の総称である。検知にはレーダ、無線周波数センサ、光学センサ、音響センサが用いられ、無力化には通信の妨害、機能停止、破壊、制御の奪取などが含まれる。運用は各国の法的権限によって制約される。
太陽光発電セルと太陽熱集熱器を組み合わせ、太陽放射を熱エネルギーと電気エネルギーの双方に変換する技術。
光を電気に変換する半導体デバイスである。米エネルギー省エネルギー効率・再生可能エネルギー局(EERE)は、半導体が光にさらされると光のエネルギーを吸収し、それを材料中の負に帯電した粒子である電子へ渡すと説明する。得られた余分なエネルギーによって電子が材料中を電流として流れ、太陽電池表面の格子状の金属電極から取り出される。変換効率は、セルに当たった光のエネルギーに対する取り出せる電力の比で表される。シリコンが今日販売されるモジュールのおよそ95%を占める。
衛星の軌道面と太陽方向の関係が年間を通じてほぼ一定に保たれる地球周回軌道。衛星が赤道を横切るときの地上の地方太陽時が常に同じになるため、地表に当たる太陽光の角度がそろい、異なる時期に撮影した画像を直接比較できる。高度に応じた軌道傾斜角を選ぶ必要があり、極域付近を通る逆行軌道になる。光学地球観測衛星の標準的な軌道である。
大規模な量子計算機でも解けないと考えられる数学問題に基づき、既存の古典計算機とネットワーク上で動作する暗号方式。NISTは2024年8月13日に最初の3つの標準を確定した。鍵カプセル化のFIPS 203(ML-KEM)、電子署名のFIPS 204(ML-DSA)、予備として位置づけられるFIPS 205(SLH-DSA)である。
ゲノム上の複数の標的をまとめて改変するゲノム編集の手法である。CRISPR-Casは正確で効率がよく、かつ多重の遺伝的改変を可能にした。Cas12ヌクレアーゼはT塩基に富むPAMを認識して適用範囲を広げるとともに、自身がcrRNAを処理する能力によって多重編集を行いやすくする。切断後の改変は内在のDNA修復経路を通じて生じる。
多数の物体がある環境で、ロボットが自らの移動と物体の状態変化の双方を計画する問題である。離散的な行動列の決定と連続的な軌道生成が相互に依存するため同時に解く必要があり、タスク計画・動作計画のいずれの分野の手法単独でも扱えない点に難しさがある。
単一光子アバランシェダイオード(SPAD)は、降伏電圧を超える逆バイアスで動作させたフォトダイオードであり、光子1個の入射が引き起こす雪崩増倍を電気パルスとして検出する。雪崩の立ち上がりはピコ秒オーダーで、光子の到達時刻を精密に測定できる。標準CMOSプロセスで作製でき、アレイ化が進んでいる。
光の量子である光子を1個ずつ、必要なタイミングで高い効率をもって発生させる素子である。実装の一つに半導体量子ドットを用いる方式があり、レーザー励起で高い準位に上がった電子が元の準位に戻る際に光子を1個放出する。量子計算、量子ネットワーク、量子センシング、計測標準に用いられる。