周囲の大気からCO2を化学的に分離し、純度の高いCO2流として取り出す技術。回収したCO2を地中に貯留する場合はDACCSと呼ばれ、二酸化炭素除去の代表的な工学的手法となる。大気中のCO2濃度が低いため、投入エネルギーと装置規模がコストを支配する。
モータと出力の間にばねを直列に挿入し、そのたわみ量から出力力を測って制御するアクチュエータ構成。1995年にMITで提示された。力制御の問題をばねの位置制御の問題に置き換えることで、接触時の安定性と衝撃荷重に対する減速機の保護を得る一方、力制御の帯域は低下する。
米国国立がん研究所(NCI)は、治療用がんワクチンを「体が本来もつ防御力を強めることでがんを治療する免疫療法の一種」と説明している。予防用のワクチンと異なり、すでにがんに罹患している人に用いることを前提とし、がんの原因となるものではなくがん細胞そのものに作用する。
チロシンキナーゼのATP結合ポケットに結合し、基質のリン酸化と下流のシグナル伝達を遮断する低分子である。ATPと競合して可逆的に結合する型と、共有結合を形成して不可逆的に結合する型がある。治療中に生じる耐性変異への対応が、世代交代と設計目標の中心となってきた薬剤クラスである。
アナログ信号とディジタル信号を相互に変換する回路の総称であり、アナログ・ディジタル変換器と、ディジタル・アナログ変換器からなる。IEEE Std 1241-2023 は前者を、出力値を一定間隔で標本化しディジタル化する素子として扱い、量子化と標本化がいずれも一様なものを主対象として共通の用語と試験方法を定める。後者については IEEE Std 1658 が、世界で使われている用語を文書化し試験方法を示している。
観測データと直前の短期予報を組み合わせ、予報モデルの初期値として最も確からしい大気の状態を推定する処理である。解析と背景場を更新しながら循環させる手法で、観測が少ない領域ほど不確実性が大きく、数値天気予報の精度を左右する中核の工程となっている。
Chem Soc Rev 誌の総説によれば、長い一本鎖DNAの鋳型(スキャフォールド)と多数の短いDNA鎖(ステープル)を混ぜ、両者の相補的な結合によって目的の形へ自己集合させるナノ構造の作製手法である。2006年に発明され、プログラム可能であることとナノメートル精度で構造が定まることから、化学・物理・生物の各分野でナノスケールの基盤として採用されてきたとされる。
DNAの損傷を検知し、修復と細胞周期チェックポイントを協調させる生化学的経路の網。ATM・ATR・DNA-PK がその中心にあり、CHK1 や WEE1 が細胞周期を制御する。修復経路の一部を失ったがん細胞は別経路に依存するため、PARP阻害剤に代表される合成致死の標的になる。
T細胞と標的細胞を橋渡しし、免疫系を腫瘍細胞や感染細胞へ差し向けるよう設計された免疫治療分子。両者を近接させて擬似的な免疫シナプスを形成し、T細胞の活性化と細胞傷害を引き起こす。
好中球が骨髄で成熟する過程で好中球セリンプロテアーゼを活性化する酵素DPP1(カテプシンC)を阻害する薬剤である。炎症カスケードの上流でプロテアーゼの活性化を抑えることで、気管支拡張症やCOPDなど好中球性炎症が関与する疾患における組織傷害の軽減を狙う。経口の低分子として開発される例が多い。
地表からおよそ高度2000km以下の領域を回る軌道である。欧州宇宙機関(ESA)の解説によれば下限は地表から約180kmで、この領域の衛星は地球に対して秒速およそ7.8kmで飛び、1周におよそ90分を要する。地表に近いぶん高い分解能の撮像が得られ、国際宇宙ステーションもこの高度帯に置かれるため飛行士の往来がしやすい。通信・観測・測位の衛星は、途切れない地球規模のカバレッジを得るためにこの高度でコンステレーションを組むことが多い。
移動体に搭載せず据え置いて使う蓄電池システムの総称である。経済産業省資源エネルギー庁は、家庭用、業務・産業用、再エネ併設・系統用の三つに区分している。家庭用と業務・産業用は需要家側(Behind the meter)に設置される系統連系タイプで、それぞれ戸建・集合住宅向け、商業施設・産業施設・公共施設に併設される電力貯蔵システムを指す。再エネ併設・系統用は系統側(Front of meter)に設置され、系統安定化や周波数調整に使われる。再生可能エネルギーの導入拡大とレジリエンス向上の観点から市場が拡大している。
分子量が小さく、細胞の中へ入りやすい医薬品である。米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立トランスレーショナル科学推進センター(NCATS)の用語集は、分子量が低いため容易に細胞内に入り、内部でタンパク質などほかの分子に作用しうると説明し、分子量が大きく細胞内に入りにくい医薬品と区別している。多くの分子標的治療薬がこれに当たるとされる。
窓ガラスに施す極めて薄い金属系の膜であり、可視光を通しながら赤外すなわち熱の成分を遮る。ローレンス・バークレー国立研究所の資料は、髪の毛より薄い目に見えない超薄の金属コーティングであり、光スペクトルのうち赤外すなわち熱の部分を濾し取りつつ可視光の全域を通すものと説明する。市販品では複層ガラスの内側の面に設けられる。赤外をほぼすべて遮るソフトコートは温暖な気候に適し、短波赤外の一部を通すハードコートは寒冷な気候に適するとされる。
事前学習済みの重みを凍結したまま、Transformer の各層に低ランクの行列を挿入し、その部分だけを学習する微調整手法。学習対象のパラメータ数とGPUメモリの所要量を大幅に削減でき、推論時の追加遅延も生じない。用途ごとの派生モデルを安価に作る手段として使われる。
疾患・障害・状態・外傷を治療または緩和することを意図し、患者の健康に対して実証可能な治療効果をもつ医学的介入を生成し提供するヘルスソフトウェアである。業界団体 Digital Therapeutics Alliance はこう定義したうえで、真正なDTx製品が満たすべき原則として、臨床的に意味のある評価項目を含む試験結果を査読誌に公表すること、リスク・有効性・使用目的に関する製品の主張を裏づけるために必要な範囲で規制当局の審査を受けクリアランスまたは認証を得ること、実世界データと製品の稼働データを収集・分析して製品に反映することなどを挙げている。
実在する製造要素をデジタルに表現し、観測データと同期させて分析や制御に用いる仕組み。ISO 23247 シリーズが製造向けデジタルツインの枠組みを国際規格として定めており、用語と要求事項、参照アーキテクチャ、製造要素のデジタル表現、情報交換を各部で規定する。
Cureus 誌に掲載された総説によれば、顕微鏡でガラス標本を観察してきた従来の病理診断を、標本を高解像度のデジタル画像に変換し、保存・解析・電子的な共有ができるようにする取り組みである。中核となるのはガラス標本を高解像度で電子化する全スライドイメージング(WSI)システムであり、画像解析ソフトウェアやAIと組み合わせることで、観察者間のばらつきの低減や遠隔病理診断が可能になるとされる。
独立に傾きを制御できる微小な可動ミラーを二次元格子状に多数集積したMEMS光変調素子である。各ミラーの向きを二値的に高速で切り替えて画素単位に光を空間変調し、デジタルリソグラフィ、構造化照明による三次元計測、光造形、光スイッチ、分光などに用いられる。
鉄と空気中の酸素との可逆的な酸化還元反応を利用する二次電池である。放電時に鉄が酸素を取り込んで酸化物(さび)となり、充電時に電流を流して金属鉄へ戻す。水系の不燃性電解液と豊富な鉄を用いるため、数十時間規模の長時間放電を低コストで担う用途が想定されている。
体心正方晶のα″相をとる鉄と窒素の化合物 Fe16N2 を主相とする、希土類を用いない永久磁石材料である。Scientific Reports に掲載された研究は、Ku > 1.0 × 10^7 erg/cc の大きな磁気結晶異方性と 4πMs > 2.4 T の大きな飽和磁化をもつとしたうえで、窒素イオン注入で作製した自立箔において室温で最大20 MGOe の最大エネルギー積を得たと報告している。α″-Fe16N2 はマルテンサイト相であり摂氏214度以下でしか安定に存在しないため、組織の最適化に必要な高温の熱処理と両立せず、バルク材の作製が難しいとされる。
鉄粉を燃焼させて熱を取り出し、生じた酸化鉄を還元して再び鉄粉に戻す循環型のエネルギー利用。Nature Reviews Materials は鉄粉を「大量のエネルギーを蓄えられ、長距離を効率よく輸送できる、きわめて有望なゼロカーボンのエネルギーキャリア」と位置づけている。
免疫やライブラリスクリーニングに依存せず、計算モデルで抗体の可変領域を一から生成する手法。標的分子上のどの部位に結合させるかを指定し、相補性決定領域を含む配列と立体構造を出力する。設計候補は酵母提示などの実験系で発現させて結合を確認し、親和性成熟の工程を経て絞り込む。
天然タンパク質の改変ではなく、目的とする立体構造や機能を先に定め、それを満たすアミノ酸配列を計算によって一から設計する手法である。RFdiffusionやProteinMPNN、AlphaFoldといった深層学習モデルの登場により、標的に結合するバインダーの設計成功率が大きく向上した。
同等性の基準となる既存機器が存在しない新規機器について、一般管理単独または特別管理との組合せで安全性・有効性の合理的保証が得られるとして、クラスIまたはクラスIIへの分類を求めるFDAの市販経路。根拠はFD&C法513条(f)(2)で、実施のための最終規則は2021年に発出された。
需要家が電力の使用量を減らす、または別の時間帯へ移すことで電力系統の運用に関与する仕組みである。米エネルギー省は、デマンドレスポンスを、時間帯別料金やその他の金銭的なインセンティブに応じてピーク時間帯の電力使用を削減または移行することにより、需要家が系統の運用において重要な役割を果たす機会と説明する。発電設備を増やす代わりに需要側を動かして需給を合わせる点に特徴がある。
おおむね0.1〜10 THz、波長3 mm〜0.03 mmの電磁波で、電子的に生成されるマイクロ波と赤外線の中間に位置する。光子エネルギーが低く非電離性である。多くの非導電性材料を透過する一方、水などの極性液体には強く吸収されるため、非破壊検査や厚さ計測に用いられる。
導電性の推進剤から静電的にイオンを引き出して加速する電気推進。NASAの小型宇宙機技術の現状報告は、この方式を含むエレクトロスプレー推進の推力を10〜120マイクロニュートン、比推力を500〜5000秒の範囲としている。インジウムを固体で貯蔵し加熱して使う方式もある。
心臓電気生理検査において、カテーテル先端の三次元位置と各点で記録した電位や興奮到達時刻を対応づけ、心腔の立体モデル上に電気的活動を可視化する手法である。瘢痕領域や異常伝導路を色分け表示してアブレーションの標的同定に用いるほか、カテーテルの実時間ナビゲーションとして透視時間の削減にも寄与する。
電解液中の金属イオンを局所的に電析させて金属構造を作る積層造形。作用極(基材)で金属イオンを還元し、対極で補充する電気化学セルとして構成する。レーザー方式と異なり高温で溶融させる必要がなく、熱工程が不要なため装置を安価かつ安全にできるとされる。