用語集

徘徊型兵器 Loitering Munition
ロボティクス

ICRCの人道法・政策ブログに掲載された論考は、徘徊型兵器を「使い捨ての無人航空機の一区分で、センサに基づく解析を組み込んで目標上空を旋回し、探知し、突入して爆発しうるもの」と説明している。目標選定と機動の機能に自動化・自律・AIの技術を組み込む機体もあるが、現行の製造者の多くは双方向データリンクで運用者が武力の行使を承認する方式だとしている。

廃棄物発電 WtE Waste-to-Energy
エネルギー・蓄電

リサイクルできない廃棄物を、利用可能な熱・電力・燃料へ転換する技術の総称である。米環境保護庁は、これを廃棄物からのエネルギー回収と呼び、都市ごみを燃焼室へ投入して燃やし、その熱で水を蒸気に変えてタービン発電機を回す方式を説明する。米国で最も一般的なのは、都市ごみを過剰空気下の単一燃焼室で燃やすマスバーン方式である。同庁によれば標準的なプラントは廃棄物1トンあたり約550キロワット時を発電する。

肺高血圧症 PH Pulmonary Hypertension
バイオ・創薬

肺の血管に影響が及ぶ疾患であり、肺へ血液を送り出すために心臓が通常より強く働かなければならなくなる。NHLBIは原因と病態に応じて5群に分類し、第1群を肺動脈性肺高血圧症(PAH)、第2群を左心系疾患によるもの、第3群を肺疾患または低酸素によるものとする。単独で生じる場合と他の疾患に伴って生じる場合がある。

ハイスループット計算スクリーニング High-throughput Computational Screening
素材・化学

電子状態計算を多数の候補物質に対して自動的に実行し、得られた物性値を蓄積して有望な候補を絞り込む手法である。計算条件の標準化とワークフローの自動化により、数万規模の物質を同一条件で比較できる。電子・磁気・弾性・欠陥・有限温度の各物性の予測に用いられる。

ハイスループットスクリーニング HTS High-Throughput Screening
バイオ・創薬

多数の化合物や遺伝子を、マイクロプレートと自動化装置を用いて短期間に並行評価し、活性を示す候補を選び出す実験手法である。創薬初期の探索段階で大規模なライブラリから標的に作用する分子を絞り込む目的で用いられ、アッセイの微量化と自動化が前提となる。

ハイドロゲル Hydrogel
素材・化学

IUPACが「膨潤剤が水であるゲル」と定義する材料。高分子などが作る三次元の網目構造が多量の水を保持し、水を含んだまま流動せず固体的な弾性を示す。網目がコロイド的な場合はアクアゲルとも呼ばれる。架橋の様式によって性質が変わり、医療材料から食品、農業資材まで用途が広い。

廃熱回収 Waste Heat Recovery
エネルギー・蓄電

工業設備やプロセスから、排ガス、加熱された空気、熱交換器の排出流、冷却液、高温のまま搬出される製品などを通じて失われる熱を捕捉し、同じ工程または別の用途で再利用することを指す。米エネルギー省の技術評価は、廃熱を温度によって華氏250度未満の超低温から華氏1600度超の超高温まで5区分に分け、推定される廃熱量の8割超が華氏77度から300度の範囲にあるとしている。回収の手段としては、熱交換器、レキュペレータ、リジェネレータ、廃熱ボイラ、ランキンサイクルおよび有機ランキンサイクル、熱電発電が挙げられている。

ハイパースペクトルイメージング HSI hyperspectral imaging
センシング・光学

電磁スペクトルの一部を、狭い波長幅のバンドで数百に分割して撮像する手法。空間2次元に波長方向を加えたデータキューブが得られ、各画素が連続に近いスペクトルを持つ。可視の色情報では判別できない材質、含水率、化学組成の差を分光的に識別でき、衛星観測から産業検査まで応用が広がる。

ハイブリッドボンディング Hybrid Bonding
半導体

接合面の絶縁膜同士と銅パッド同士を同時に直接接合し、はんだバンプを介さずにダイやウェハを積層する接続技術。バンプ寸法の制約を受けないため接続ピッチを大きく縮められる。imecはダイ・ツー・ウェハで2µmピッチを実証し、ウェハ・ツー・ウェハでは500nmピッチを目標に開発を進めている。

ハイブリッドロケット Hybrid Rocket
宇宙

推進剤の一方を固体、もう一方を液体として別々に保持するロケット推進方式である。NASAの技術報告は、固体の炭化水素系燃料と液体酸化剤を組み合わせ、燃料表面を流れる酸化剤によって燃焼が進む方式と説明する。燃料と酸化剤が密に混ざらず燃焼が拡散律速であるため爆発しないとされ、推力が酸化剤の流量に比例するためスロットリングができる。比推力は固体ロケットモータより10〜15%高いとされている。

培養肉 Cultivated meat
農業・食料

動物から採取した細胞を体外で増やし、食肉相当の製品に加工した食品。米国では細胞の採取・セルバンク・増殖・分化までをFDAが所管し、収穫工程以降はUSDA-FSISが引き継ぐ分担が2019年の合意で定められている。上市前相談は任意の手続きで、最初の完了は2022年11月。

薄膜ニオブ酸リチウム TFLN Thin-Film Lithium Niobate
センシング・光学

絶縁層の上に薄いニオブ酸リチウム層を設けた集積フォトニクス基盤。CMOS互換の低電圧、超広帯域、低損失を同時に満たす電気光学変調器を作れる。

把持計画 Grasp Planning
ロボティクス

対象物をどの位置・姿勢で掴めば安定して保持できるかを決める計算処理。近年は解析的な把持評価指標で生成した大規模な合成データを用い、深度画像から把持の成功確率を直接予測する学習ベースの手法が主流である。未知の物体を事前登録なしに扱える点が実用上の要になる。

波動歯車装置 Strain Wave Gearing
ロボティクス

楕円状の波動発生器で薄肉の弾性歯車を変形させ、剛性リングとの歯数差によって減速する歯車装置。単段で30:1から160:1程度の減速比が得られ、歯部には寿命全体を通じてバックラッシュがない。位置決め精度は1分角未満とされ、精密な回転関節の駆動部に用いられる。

波力発電 Wave Energy
エネルギー・蓄電

波の運動エネルギーを捉えて電力に変える発電方式である。米エネルギー省(DOE)の海洋エネルギー用語集は、捕捉装置の型式として、波長に比べ主要寸法が小さく自身の物理的寸法より広い波面からエネルギーを取り込むポイントアブソーバ、水柱の上に空気柱を閉じ込めた部分没水構造で、水面下から波を導き入れて水柱を上下させる振動水柱、主軸を入射波の進行方向と平行に置き通過する波による相対運動をエネルギーに変換するアテニュエータを定義している。

バロカロリック効果 Barocaloric Effect
素材・化学

固体に静水圧を加えて相転移を誘起し、吸熱と放熱を生じさせる現象である。Nature Communications に2022年に掲載された研究は、圧力を加えるとエントロピーが減少して熱を放出し、圧力を除くとエントロピーが増加して熱を吸収すると説明する。この吸熱と放熱を繰り返して冷凍サイクルを構成するのがバロカロリック冷却であり、作動物質が固体のまま動作するため気体冷媒を必要としない。同研究はヨウ化アンモニウムに40メガパスカルを加えると相転移温度が室温付近へ移り、可逆的なエントロピー変化が1キログラムあたり約71ジュール毎ケルビン、断熱温度変化が約34ケルビンに達したと報告している。地球温暖化係数の大きい冷媒を用いる蒸気圧縮式の代替として検討されている。

半導体スピン量子ビット Semiconductor Spin Qubit
量子

半導体中の電子または原子核のスピンの向きを量子ビットとして用いる方式である。総説論文 Reviews of Modern Physics 95, 025003 (2023) は、スピンが電場の影響を受けにくい自然な二準位系であるため量子コヒーレンス時間が長く、量子ビットとして優れていると述べる。量子ビットの型は単一スピン、ドナースピン、シングレット・トリプレット、交換相互作用のみを用いるものに分けられる。初期はGaAs量子ドットでスピンの初期化・制御・読み出しが実現され、近年はシリコンとゲルマニウムで電荷制御と読み出しの改善や大規模化が進んでいる。

半導体変圧器 SST Solid-State Transformer
エネルギー・蓄電

磁性体の鉄心で電圧を変換する従来の変圧器に代えて、半導体のスイッチングによって交流の電圧を変換する電力変換装置である。米アイダホ国立研究所のGridTechPediaは、高周波の半導体スイッチング、フィルタ、小型の中周波トランスを用いて交流電圧を変換する装置と説明する。双方向の電力融通ができ、投入時の突入電流を要さず、小型軽量で部分負荷の効率が高いとされる。

ヒートポンプ Heat Pump
エネルギー・蓄電

熱を作り出すのではなく、電力を使って熱を移動させる設備である。米エネルギー省は、冷蔵庫と同じように電気を用いて冷たい空間から暖かい空間へ熱を移すものと説明する。冷房期は屋内の熱を屋外へ、暖房期は屋外の熱を屋内へ運ぶ。屋外の空気と熱をやりとりする空気熱源型が最も普及しており、電気抵抗式の暖房と比べて暖房に使う電力を最大75%削減できるとされる。

P4(プログラマブルデータプレーン) P4 P4 (Programming Protocol-independent Packet Processors)
通信・ネットワーク

ネットワーク機器のデータプレーンの動作を記述するドメイン特化型プログラミング言語である。スイッチ、NIC、ルータなどがパケットをどう処理するかを、特定のプロトコルに依存せずに規定する。プログラムは対象機器ごとにコンパイルされ、FPGAやプログラマブルASIC、ソフトウェア基盤で実行される。

光インターポーザ Optical Interposer
半導体

チップレットを搭載・相互接続するガラスやシリコンの中間基板に光回路を集積し、ダイ間の通信を金属配線ではなく光で行う実装技術である。光の経路制御をプロセッサの直下で行うため任意のチップレット間を直接結べ、電気配線に比べて遅延と消費エネルギーを削減できるとされる。

光衛星間通信 OISL Optical Inter-Satellite Link
宇宙

衛星どうしをレーザ光で結ぶ通信方式。電波より広い帯域を使えるため大容量の伝送に向く。低軌道の衛星が取得した観測データを静止軌道の中継衛星を経由して地上へ届ける用途などに使われ、地上局の可視時間による制約を緩和できる。通信端末には精密な捕捉追尾と指向が求められる。

光干渉断層撮影 OCT optical coherence tomography
センシング・光学

広帯域光源の低コヒーレンス干渉を利用して、対象内部の反射位置を深さ方向に分解し断層像を得る計測法。軸方向分解能は光源のコヒーレンス長で決まり、中心波長880 nm・帯域幅40 nmの条件では眼内で約7マイクロメートルとなる。眼科診断が最大の応用分野である。

光集積回路 PIC Photonic Integrated Circuit
半導体

レーザー、パルス発生器、変調器、非線形素子、ファイバとチップの結合器といった光学素子を一つのチップ上に集積した回路である。シリコン、窒化シリコン、ニオブ酸リチウム、AlGaAs などの材料基盤が用いられる。コヒーレント通信、波長・空間・モードの多重化、光信号処理、量子情報処理を担う。

光周波数コム optical frequency comb
センシング・光学

モード同期によって等間隔に並んだ多数の周波数成分を生成する特殊なレーザ光源。光の周波数に対する定規として働き、赤外から紫外までの光周波数を電子回路で扱えるマイクロ波帯の信号に結び付けて、高速かつ正確に測定できる。光時計や精密分光の基盤技術である。

光地上局 OGS Optical Ground Station
宇宙

衛星や探査機とレーザで通信・測距を行う地上設備である。望遠鏡、レーザ光源、光子検出器で構成され、雲の影響を避けるため高標高地に置かれる。欧州宇宙機関の光地上局は静止軌道・低軌道の衛星や月との光リンクを確立している。雲による遮断が可用性の制約となるため、複数地点への分散配置が前提となる。

光データストレージ Optical Data Storage
センシング・光学

レーザー光を用いて媒体にデータを記録し読み出す記憶方式である。Light: Science & Applications誌の総説は、レーザー光で二値データを蓄えるコンパクトディスク(CD)の発明をデジタル情報技術の大きな節目のひとつに位置づけている。同総説によれば、今日のデータ保存とアーカイブはハードディスクや磁気テープなど磁気記録が主流だが、容量・消費電力・寿命に制約があり、ナノフォトニクスを用いて光メモリの容量を大幅に高める研究が進められている。

光ファイバ加入者網 FTTH Fibre To The Home
通信・ネットワーク

総務省の資料は、FTTHを、通信事業者の収容局から加入者宅まで光ファイバケーブルを敷設し、超高速インターネットアクセスを可能とするものと説明する。1芯の光ファイバを1加入者が占有するシングルスター(SS)方式と、カプラ等の分岐装置で1芯を複数の加入者が共有するPON方式があり、PONにはB-PON、GE-PONなどの規格がある。上りと下りの速度が同じで安定している点が、非対称で不安定なADSLやケーブルインターネットと異なる。

光免疫療法 PIT Photoimmunotherapy
バイオ・創薬

がん細胞の表面分子を認識する抗体に光吸収体を化学的に結合させ、近赤外光を当てて標的細胞を壊す治療法。米国立がん研究所(NCI)によれば、結合体は標的分子に結合したときにだけ近赤外光で活性化され、照射を受けた細胞は急速に膨張して破裂し、壊死性(免疫原性)細胞死を起こす。

光量子コンピューティング Photonic quantum information processing
量子

光子の量子状態を情報の担い手に用いる方式。光子は本質的に移動しやすく雑音が小さいため量子ネットワークとの親和性が高い一方、2量子ビットゲートの効率が低く資源のオーバーヘッドが過大になる点が長く課題とされてきた。集積化された光回路と光源・検出器の改良により状況が変わりつつあるとされる。