用語集

飛行時間測距 ToF time-of-flight ranging
センシング・光学

光源から出た光が対象で反射して戻るまでの時間を測って距離を求める方式。飛行時間を1回の計測で直接測る直接ToF(dToF)と、変調光の位相差から距離を導く間接ToF(iToF)に大別される。方式によって必要な受光素子、得られる空間分解能、背景光への対処が異なる。

ビジュアルサーボ Visual Servo Control
ロボティクス

コンピュータビジョンで得たデータを用いてロボットの運動を制御する手法である。画像から抽出した特徴量と目標値の差を誤差として定義し、相互作用行列を介してこれを零に近づける速度指令を生成する。特徴量の取り方により、画像ベース方式(IBVS)と位置ベース方式(PBVS)に大別される。

微小重力 Microgravity
宇宙

米航空宇宙局(NASA)グレン研究センターによれば、物体が自由落下しているときに生じる状態である。国際宇宙ステーションの中で物体が浮いて見える状態は一般に「無重力(0g)」と呼ばれるが、同センターはより正確には微小重力(1×10のマイナス6乗g)であるとする。重力が消えるのではなく、物体も宇宙飛行士も宇宙ステーションも同じ割合で落下し続けているために浮いて見える。地上では落下塔や放物線飛行の航空機で短時間の微小重力を作る。

微小電気機械システム MEMS Microelectromechanical Systems
半導体

センシング、計時、信号処理、生体医療診断といった重要な用途を担う集積デバイスである。米国国立標準技術研究所(NIST)は、その部品が無線通信、自動車、航空宇宙システム、医療機器、民生品で広く使われるようになったとし、スマートフォンに載る加速度計、ジャイロスコープ、マイクロフォン、ディスプレイ、RFフィルタ・発振器を例に挙げる。新たな機能をもたらす基盤技術と位置づけられる。

比推力 Isp Specific Impulse
宇宙

ロケットエンジンなどの推進機関の効率を表す指標で、発生する推力を推進剤の重量流量で割った値である。単位系によらず秒の次元をもち、同じ質量の推進剤からより大きな推力を得られる機関ほど値が大きい。推進方式の比較や設計初期のエンジン規模の見積りに使われる。

ヒストトリプシー Histotripsy
ヘルスケアデバイス

体外から集束させた超音波を標的の組織に送り、内部に微小気泡を生じさせて組織を機械的に壊す治療法である。ミシガン大学のヒストトリプシー研究グループは、この気泡が数十から数百マイクロ秒の間に膨張と崩壊を起こし、標的の腫瘍細胞を機械的に分解すると説明する。切開も熱も毒性も伴わず、分解された組織は体が自然に吸収する液状の残渣になるとされる。治療系は超音波によるフィードバックで標的を捉え、計画した治療体積をたどりながら実時間で経過を確認する。

非地上系ネットワーク NTN Non-Terrestrial Network
通信・ネットワーク

衛星や高高度プラットフォームに中継ノードまたは基地局機能を搭載して構成する通信網。3GPP は Release 17 で NR 衛星アクセスの規範的要件を初めて規定し、5G NR を使う NR-NTN と、NB-IoT や eMTC を衛星経由で使う IoT-NTN の2系統で標準化を進めている。

人型ロボット Humanoid Robot
ロボティクス

二足歩行や両腕など人間に似た形態をとるロボット。人向けに作られた環境や道具をそのまま使える点が期待される一方、能動的に安定を制御する必要がある。ISOでは脚・車輪などで能動的に安定を制御する産業用移動ロボットの安全要求として ISO/CD 25785-1 の策定が進んでおり、二足・四足のロボットが対象に含まれる。

ヒト内在性レトロウイルス HERV Human Endogenous Retrovirus
バイオ・創薬

Discover Oncology 誌に掲載された総説によれば、数百万年前に生殖細胞系列に感染した祖先の外来性レトロウイルスに由来するゲノム配列であり、ヒトゲノムのおよそ8パーセントを占める。メンデル遺伝する座位として垂直に受け継がれ、多くは転写が抑制されている一方、胎盤形成に関わるシンシチン1のように生理的な役割へ取り込まれたものもある。異常な再活性化は発がんとの関連が指摘され、治療標的としても検討されている。

非破壊検査 NDT Nondestructive Testing
製造・工作機械

対象を傷つけることなく、材料・部品・構造物に欠陥がないかを評価するための科学的な検査手法群と、その専門分野である。米国非破壊検査協会(ASNT)はこう説明し、認められた手法は16に及ぶとする。広く用いられるものとして、電磁気検査、磁粉探傷検査、浸透探傷検査、放射線透過検査、超音波検査、目視検査の6手法を挙げている。

標的アルファ線治療 TAT Targeted Alpha Therapy
バイオ・創薬

アルファ線を放出する放射性核種を、がん細胞へ選択的に結合する抗体やペプチドに担持して投与し、腫瘍の内部から照射する治療法である。飛程が短く線エネルギー付与が大きいアルファ粒子の性質を利用して、周囲の正常組織への被曝を抑えつつ標的細胞に修復困難なDNA損傷を与えることを狙う。

表面電極型イオントラップ Surface-Electrode Ion Trap
量子

閉じ込め用の電極をすべて平面基板上に形成し、その上方の空間にイオンを保持する方式のトラップである。半導体の微細加工プロセスで製造でき、多数に分割した直流電極を独立制御することでイオンの搬送や複数領域への配置が可能なため、スケーラブルな量子情報処理の基盤とされる。

ファージ療法 Phage therapy
バイオ・創薬

Med J Aust 誌の総説によれば、細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージを治療に用いる方法で、始まりから1世紀を経て再び注目されている。抗菌薬耐性菌に対して活性を示すことと重篤な副作用が知られていないことから、難治性の細菌感染症の治療選択肢として位置づけられる。ファージは標的とする細菌に対する特異性が高い一方、試験管内の活性と生体内での有効性の関係は厳密な評価が残されている。

510(k)(市販前届出) 510(k) Premarket Notification 510(k)
ヘルスケアデバイス

販売しようとする機器が、既に合法的に販売されている機器と同等に安全かつ有効である(実質的同等である)ことをFDAへ示す市販前届出。比較の基準に用いる既存機器をプレディケートと呼ぶ。FDAは実質的同等の判断を通常90日以内に行い、これは承認ではなくクリアランスに当たる。

フィジカルAI Physical AI
ロボティクス

カメラ、ロボット、自動運転車などの自律システムが物理世界を知覚・理解・推論し、複雑な動作を実行または統括するためのAIの総称。NVIDIAの用語解説では、空間的関係と3次元世界の物理的な挙動の理解を加えることで、従来の生成AIを拡張したものと位置づけられている。

風化促進 ERW Enhanced Rock Weathering
環境・気候

ケイ酸塩岩や炭酸塩岩を粉砕して農地などに散布し、岩石が大気中のCO2と反応して溶解する自然の風化速度を人為的に高める二酸化炭素除去手法。採石・粉砕・輸送という既存の産業インフラを流用できる一方、除去量の測定と検証の方法論が事業性を左右する。

風力タービン Wind Turbine
エネルギー・蓄電

風の運動エネルギーを電気に変換する装置である。米エネルギー省は、風がプロペラ状のブレードをロータのまわりで回し、ロータが発電機を回して電気が生まれると説明する。変換はブレードに働く空力によるもので、ブレードの両面に生じる圧力差が揚力と抗力を生み、揚力が抗力を上回ることでロータが回転する。ロータは発電機に直結する(ダイレクトドライブ)か、増速機を介して接続される。水平軸型と垂直軸型に大別され、陸上機の定格は100kWから数MWに及ぶ。

フェムト秒レーザー加工 Femtosecond Laser Processing
製造・工作機械

パルス幅が数十から数百フェムト秒(1fsは1000兆分の1秒)のレーザーを用いる加工方法である。理化学研究所は、パルス幅が極めて短いため非常に高いピークパワー(パルスエネルギー/パルス幅)を持ち、集光することで1平方センチメートル当たり数十ペタワットのピーク強度が容易に得られ、その結果、加工領域周辺への熱影響を排除した高品質加工を実現すると説明する。加工はアブレーション、すなわち固体表面がプラズマ化して原子・分子・クラスターが蒸発し表面が削り取られる現象による。

不可逆電気穿孔法 Irreversible electroporation
ヘルスケアデバイス

Technol Cancer Res Treat 誌の総説によれば、短い高電圧の電気パルスを加えて細胞膜の透過性を高め、ナノサイズの不可逆な欠損(孔)を生じさせて細胞死に至らせる非熱的なアブレーション技術である。熱を用いないため周囲臓器を傷つける危険が小さく、近傍の血管に熱が奪われるヒートシンク効果も生じない点が、凍結・高周波・マイクロ波などの熱的手法との違いとされる。

付加製造 AM Additive Manufacturing
製造・工作機械

材料を層ごとに積み上げて部品を作る製造方式の総称である。米国国立標準技術研究所(NIST)は、材料を削り取る加工や型に流し込む成形とは対照的に、層ごとに積み上げて部品を製作する工程と説明する。工程は粉末床溶融結合、指向性エネルギー堆積、材料押出、液槽光重合、結合剤噴射、材料噴射などに分かれ、金属・高分子・セラミックス・複合材料などが対象になる。

不整地自律走行 Off-Road Autonomy
ロボティクス

道路や事前に用意した地図に依らず、整備されていない地形を車両が自律して走行する能力である。米陸軍DEVCOM陸軍研究所のAIMM計画は、戦闘車両が作戦上の速度で不整地を自律的に機動できる、頑健な航法の確立を課題として掲げる。事前の地図やGPSのデータに頼らない走行、複雑な地形を速く確実に進むための機械学習、文脈を踏まえた知覚処理、通信が妨げられた環境での協調が研究の柱となる。

部分的エピジェネティック・リプログラミング Partial Epigenetic Reprogramming
バイオ・創薬

リプログラミング因子を一時的にだけ発現させ、細胞の同一性を保ったまま老化に伴う変化を戻す手法。多能性幹細胞まで初期化しきらない点が要点。

プラガブル光トランシーバ Pluggable Optical Transceiver
通信・ネットワーク

通信装置のポートに抜き差しできる形状で標準化された、電気信号と光信号を相互変換するモジュールである。複数社が参加するMSAが機械寸法・電気インタフェース・伝送速度を規定することで、装置ベンダとモジュールベンダの分離とマルチベンダ調達を可能にし、世代ごとにレーン速度が引き上げられてきた。

ブラシレスDCモーター BLDC Brushless DC Motor
ロボティクス

永久磁石のロータと巻線のステータで構成し、ブラシと整流子を用いずに半導体の駆動回路で通電を切り替えて回転させる直流モーターである。摩耗する接触部品がないため寿命と効率で有利であり、動作には回転位置の検出と専用の駆動回路を必要とする。ドローンやロボットの動力として広く使われる。

プリフィル・デコード分離 Prefill-Decode Disaggregation
AI基盤

大規模言語モデルの推論を、入力を一括処理するプリフィル段階と、トークンを逐次生成するデコード段階に分け、別々の計算資源へ割り当てる方式である。両段階の相互干渉を取り除き、並列化戦略と資源配分を段階ごとに独立して最適化できる点に狙いがある。

プリンテッド・エレクトロニクス Printed Electronics
半導体

印刷や塗布の工程で電子部品を作る付加的な製造手法。スクリーン印刷、スプレー塗布、ロール・トゥ・ロールなどを用い、堆積する材料の種類・厚さ・分布・パターンを精密に制御できる。柔軟な基材の上に大面積で作れるため、センサー、ディスプレイ、エネルギーデバイスに用いられる。

ブレークスルーデバイスプログラム Breakthrough Devices Program
ヘルスケアデバイス

生命を脅かす疾患や不可逆的に重篤化する状態に対して、より効果的な治療または診断を提供する医療機器および機器主導のコンビネーション製品を対象に、開発・評価・審査を早めて患者と医療提供者が適時に利用できるようにする米国FDAの任意プログラムである。指定の第一の要件は上記の「より効果的な治療または診断」であり、第二の要件として、画期的な技術であること、承認済みまたはクリアランス済みの代替手段が存在しないこと、既存の代替手段に対する有意な優位性があること、機器が利用可能であることが患者の最善の利益に資することのいずれかを満たす必要がある。指定は販売承認そのものではなく、PMA・510(k)・De Novo の各経路と併せて用いられる。

ブレイトンサイクル Brayton Cycle
エネルギー・蓄電

気体を作動流体として、圧縮・加熱・膨張・排熱の四つの過程で仕事を取り出す熱力学サイクルである。ガスタービンや航空エンジンの基本サイクルであり、蒸気系の設備を必要としない点がランキンサイクルとの構成上の違いとなる。超臨界CO2を作動流体とする閉ループ型の発電サイクルとしても開発が進む。

ブレイン・コンピュータ・インタフェース BCI Brain-Computer Interface
ヘルスケアデバイス

脳や神経系の電気活動を計測し、機械を動かす制御信号へ変換する装置の総称。FDAは埋込型BCIを、麻痺または切断のある患者の失われた運動機能・感覚機能を回復させるために中枢神経系または末梢神経系とインタフェースする神経補綴と定義し、治験機器適用免除の枠組みで臨床試験に入る経路を示している。

プレシジョンオンコロジー Precision oncology
バイオ・創薬

患者個々の腫瘍がもつ分子的特徴に基づいて診断法と治療薬を選択するがん医療の実践を指す。遺伝子変異などの分子異常を手がかりに腫瘍を分子サブタイプへ分割し、それぞれの生物学的機序を標的とする薬剤を割り当てることで、正常細胞への影響を抑えることを目指す。