希土類・バリウム・銅酸化物の超伝導層を、金属テープ基板と中間層の上に薄膜として形成した線材である。結晶方位を面内・面外の両方向で揃えることで粒界による電流阻害を抑え、高い臨界電流密度を得る。第2世代高温超伝導線材とも呼ばれ、強磁場マグネットに用いられる。
陽イオンと陰イオンだけ、またはほぼそれだけで構成される液体。IUPACゴールドブックの定義による。室温で液体のものは室温イオン液体と呼ばれる。融点がおよそ100℃以下の有機塩を指すことが多く、蒸気圧がほとんどないことから溶媒や電解質に用いられる。
カーボンナノチューブを紡いで糸状にした電気導体である。NASAの技術報告は、銅導体の電気抵抗と質量がいずれも電力損失に結びつくため、高導電率で軽量な導体材料を設計することが望ましいと述べる。カーボンナノチューブは構造によって金属型と半導体型に分かれ、無作為な試料では33%が金属型で、その導電率は50.7MS/mと測定されているが、両者が混在する試料全体としての導電率は約1.3MS/mにとどまる。このため同報告では、銅とカーボンナノチューブ糸を組み合わせた複合導体が扱われている。
ガリウムを主成分とし、室温付近で液体を保つ合金である。EGaInの融点は15.4℃、ガリンスタンは13.2℃とされ、いずれも10^6 S/m級の電気伝導率を持つ。柔軟な配線や再構成可能な回路の導体として用いられる。表面に自己制限的な酸化被膜が生じ、形状保持と電気的な障壁の両面に影響する。
ネオジム・鉄・ホウ素を主成分とする焼結磁石に代表される、希土類元素を用いた高性能な永久磁石である。保磁力、最大エネルギー積、最高使用温度によって性能が特徴づけられ、電動車のトラクションモーターや風力発電機、ドローンやロボットの小型モーターに用いられる。
スカンジウム、イットリウムおよびランタノイドからなる17元素の総称である。米国地質調査所(USGS)は、これらを比較的豊富に存在する元素群と位置づけ、セリウムは地殻中で25番目に多く濃度は60ppm、ツリウムとルテチウムは最も存在量が少なく約0.5ppmとする。単体は鉄灰色から銀白色の金属光沢を持ち、軟らかく展延性に富み、とくに高温で反応性が高い。主要な鉱物源としてバストネサイト、モナザイト、ロパライトおよびラテライト性のイオン吸着型粘土が挙げられている。
組成・プロセス・組織・特性の関係を通常とは逆向きにたどる材料設計の考え方である。既知の材料から特性を予測する順方向の手法に対し、必要な特性を先に指定し、それを満たす組成や結晶構造を生成する。生成深層学習では潜在空間の構成、生成手法、特性制約の与え方が要素技術となる。
金属イオンまたは金属クラスターと有機配位子が配位結合で連結した、規則的な骨格構造をもつ物質群。IUPACの2013年勧告では配位ポリマー、配位ネットワークの下位概念として位置づけられ、骨格内に潜在的な空隙を含むことが条件の一つとされる。ガスの貯蔵や分離、触媒担体への応用が研究されている。
黒鉛(グラファイト)構造における単一の炭素層である。IUPACのGold Bookは、擬似的に無限の大きさを持つ多環芳香族炭化水素になぞらえてその性質を記述する語として定義している。同書は注記として、個々の層の反応、構造的関係、その他の性質を論じる場合にのみこの語を用いるべきであり、多層からなる構造に対して用いるべきではない(それは黒鉛として記述される)と述べている。
米国環境保護庁(EPA)の定義では、有害物質の使用または生成を削減もしくは排除するように化学製品と化学プロセスを設計すること。設計から製造、使用、廃棄までのライフサイクル全体を対象とし、廃棄物の抑制や原子効率の最大化など12の原則が示されている。
組成の情報のみから、その物質が取り得る安定な結晶構造を計算によって求める課題である。構造変数が張る配置空間を探索し、安定構造に対応し得る領域を同定する作業を指す。既知構造を計算で再現するモデリングとは区別され、探索を伴う点が本質とされる。国際的なブラインドテストを通じて手法の性能が比較されてきた。
廃棄物に化学的な処理を施し、原料に戻してから再利用する方式。溶かして成形し直すマテリアルリサイクルとは、原料段階まで戻す点で異なる。日本では油化、ガス化、コークス炉化学原料化、高炉原料化、原料・モノマー化の5種類に整理されており、PETボトルの原料化は日本が先行して実用化した。
気相の前駆体と反応剤を交互に供給し、表面で飽和して自己停止する反応を繰り返すことで薄膜を一層ずつ積み上げる成膜法。膜厚はサイクル数で管理でき、視線が通らない深い溝や粉体の表面にも均一で密着した被覆が得られる。半導体の絶縁膜から触媒の被覆まで用途が広い。
損傷を自ら検知し、化学反応によって修復する材料。修復に必要な物質をあらかじめ内部に含む方式、環境中の物質を利用する方式、環境から能動的に集める方式に分けられる。高分子、コーティング、複合材料、金属、セラミックス、コンクリートで研究されている。
経済安全保障や国家安全保障にとって不可欠であり、かつ供給網が途絶リスクを抱える非燃料の鉱物および鉱物材料を指す政策用語である。各国が定期的に一覧を策定し、探査支援、加工能力の整備、リサイクル、代替材料開発などの政策対象を定める基準として用いる。
Chemical Reviews 誌の総説によれば、自動化された実験と、データ駆動の意思決定とを統合し、科学的方法の適用を加速することを目的とした系である。ソフトウェア(実験の選択)とハードウェア(実験の実行)という二つの軸で自律度が分類され、実験結果を次の実験の設計に還す閉ループ運用が中核をなす。同種の取り組みは「自律実験室」「閉ループ実験」「材料加速プラットフォーム」とも呼ばれてきたとされる。
2枚のガラス板の間を真空に排気して、気体を介した熱伝導と対流を断つ窓用ガラスである。ローレンス・バークレー国立研究所の解析資料は、板間の圧力を0.1mTorr(0.01Pa)未満とし、板の間隔を保つために微小なピラーを通常2〜5cm間隔で規則的に並べると述べる。ピラーは点状の熱橋となる。真空を保つため周縁は恒久的に封止され、はんだガラスによる剛性の封止と金属箔による可撓性の封止が検討されている。同資料の解析例では厚さ6.452mmの構成で熱貫流率0.519W/(m2K)が得られている。
鉄鉱石を溶かさず固体のまま水素で還元して鉄をつくる製鉄方式。世界鉄鋼協会は直接還元を「固体状態の鉄鉱石から化学的に酸素を取り除くこと」と説明している。還元剤に水素を使うため、排出されるのは二酸化炭素ではなく水になる。
セルロースを主成分とする植物繊維を、ナノメートルサイズまでほぐして微細化した素材。産総研の解説では鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度をもち、熱で膨張しにくいとされる。水を保持する力が強く粘度を保つ性質もあり、タイヤ、衛生用品、食品添加物、化粧品、光学材料などに使われている。
金属を原子1個ずつ担体上に孤立させて分散した不均一系触媒。表面の原子しか反応に関与しない金属ナノ粒子と異なり、ほぼすべての金属原子を活性点として使えるため原子利用効率が高い。2011年にNature Chemistryで報告されたPt1/FeOxが代表例で、一酸化炭素の酸化と水素中の一酸化炭素の選択酸化に高い活性を示した。
炭素繊維の束を樹脂で固めた複合材料。産総研の解説では鋼の4分の1以下の重さで引張強度は数倍とされ、腐食せず温度や湿度の変化にも寸法が安定している。航空機や自動車、風車ブレードに使われる一方、繊維と樹脂の分離が難しくリサイクルが課題となっている。
臨界圧力と臨界温度をともに超えた状態にある化合物・混合物・元素を指す。IUPACのGold Bookはこの状態を超臨界流体と定義している。臨界点は物質ごとに定まるため、どの温度・圧力から超臨界状態になるかは物質によって異なる。
Chem Soc Rev 誌の総説によれば、長い一本鎖DNAの鋳型(スキャフォールド)と多数の短いDNA鎖(ステープル)を混ぜ、両者の相補的な結合によって目的の形へ自己集合させるナノ構造の作製手法である。2006年に発明され、プログラム可能であることとナノメートル精度で構造が定まることから、化学・物理・生物の各分野でナノスケールの基盤として採用されてきたとされる。
窓ガラスに施す極めて薄い金属系の膜であり、可視光を通しながら赤外すなわち熱の成分を遮る。ローレンス・バークレー国立研究所の資料は、髪の毛より薄い目に見えない超薄の金属コーティングであり、光スペクトルのうち赤外すなわち熱の部分を濾し取りつつ可視光の全域を通すものと説明する。市販品では複層ガラスの内側の面に設けられる。赤外をほぼすべて遮るソフトコートは温暖な気候に適し、短波赤外の一部を通すハードコートは寒冷な気候に適するとされる。
体心正方晶のα″相をとる鉄と窒素の化合物 Fe16N2 を主相とする、希土類を用いない永久磁石材料である。Scientific Reports に掲載された研究は、Ku > 1.0 × 10^7 erg/cc の大きな磁気結晶異方性と 4πMs > 2.4 T の大きな飽和磁化をもつとしたうえで、窒素イオン注入で作製した自立箔において室温で最大20 MGOe の最大エネルギー積を得たと報告している。α″-Fe16N2 はマルテンサイト相であり摂氏214度以下でしか安定に存在しないため、組織の最適化に必要な高温の熱処理と両立せず、バルク材の作製が難しいとされる。
ニッケルとチタンをほぼ等原子比で含む合金で、擬弾性(超弾性)と形状記憶挙動を示す。米国食品医薬品局のガイダンスは、これらの性質が従来材料では実現できない医療機器を可能にしたとし、ステントやガイドワイヤなどでの使用を挙げている。細い経路から挿入して体内で展開する構造をとりやすい。
発熱するチップと放熱部品の間に挟み、接触面の微細な隙間を埋めて熱の移動を助ける薄い層状の材料である。表面粗さや接触の不完全さに由来する界面熱抵抗を下げる役割を担い、電力密度が高い半導体パッケージでは放熱経路全体の性能を左右する要素になる。熱伝導率だけでなく機械的な追従性や絶縁性も設計上の条件となる。
5種類以上の元素をほぼ等原子比で含む多元系合金。配置のエントロピーが大きく、高温で固溶体相が安定化する。2004年にCantorらとYehらが提唱した。強度や耐熱性、耐食性のほか、ナノ粒子化による触媒や電極材料、生体材料への応用が調べられている。
電子状態計算を多数の候補物質に対して自動的に実行し、得られた物性値を蓄積して有望な候補を絞り込む手法である。計算条件の標準化とワークフローの自動化により、数万規模の物質を同一条件で比較できる。電子・磁気・弾性・欠陥・有限温度の各物性の予測に用いられる。
IUPACが「膨潤剤が水であるゲル」と定義する材料。高分子などが作る三次元の網目構造が多量の水を保持し、水を含んだまま流動せず固体的な弾性を示す。網目がコロイド的な場合はアクアゲルとも呼ばれる。架橋の様式によって性質が変わり、医療材料から食品、農業資材まで用途が広い。