病原体に由来する分子パターンを認識する自然免疫のパターン認識受容体である。このうちTLR3・TLR7・TLR8・TLR9はエンドソーム内に局在し、核酸を認識してI型インターフェロンや炎症性サイトカインの産生を誘導する。自己核酸による不適切な活性化は自己免疫疾患の病態に関与するとされる。
2つの異なるエピトープまたは抗原を認識するよう設計された抗体。単剤の混合では得られない機能を、2つの結合部位を1分子に連結することで実現する。
尿酸を水溶性の代謝物アラントインへ酸化する酵素で、ヒトを含む一部の霊長類はこの活性を欠く。微生物由来の組換え酵素をPEG修飾して製剤化し、標準治療に抵抗性の慢性痛風において血中の尿酸を酵素的に分解する治療に用いられるが、抗製剤抗体の形成が管理上の課題となる。
尿が意図せず失われたり漏れたりする状態である。米国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(NIDDK)は、膀胱の制御に関わる問題を、人が尿を保持したり排出したりするしかたに影響する状態と説明し、尿失禁を最も一般的な膀胱制御の問題の一つに挙げる。咳やくしゃみなどの動きが膀胱に圧力をかけて漏れる腹圧性、強い尿意に間に合わず漏れる切迫性、膀胱が空にならず残尿が多いことによる溢流性などの型が置かれている。
身体の多くの領域に影響が及ぶ遺伝性の疾患である。特徴的な顔貌、低身長、先天性心疾患、出血傾向を示す。原因遺伝子のうち PTPN11 の変異が全症例の約半数を占め、SOS1、RAF1、RIT1 がこれに続く。これらの遺伝子はいずれも細胞の分裂と成長を制御する RAS/MAPK 経路で働くタンパク質をつくる。
生物に由来する原料から作られる医薬品の総称である。米食品医薬品局(FDA)生物製剤評価研究センター(CBER)は、生物学的製剤にワクチン、血液および血液成分、アレルゲン製剤、体細胞、遺伝子治療、組織、遺伝子組換えタンパク質医薬などの広い範囲が含まれると説明する。糖、タンパク質、核酸、またはそれらの複雑な組み合わせから成り、ヒト・動物・微生物に由来する細胞や組織といった生きた実体を含むこともある。
正常な生物学的過程、病的な過程、または曝露や治療介入に対する生物学的応答の指標として測定される、定義された特性である。FDAとNIHの合同作業部会によるBEST用語集の定義で、分子、組織学的、画像的、生理学的な特性が含まれる。一方で、その人がどう感じ、どう機能し、どれだけ生存するかを測るものはバイオマーカーには含まれない。感受性・リスク、診断、モニタリング、予後、予測、反応、安全性などの区分がある。
肺の血管に影響が及ぶ疾患であり、肺へ血液を送り出すために心臓が通常より強く働かなければならなくなる。NHLBIは原因と病態に応じて5群に分類し、第1群を肺動脈性肺高血圧症(PAH)、第2群を左心系疾患によるもの、第3群を肺疾患または低酸素によるものとする。単独で生じる場合と他の疾患に伴って生じる場合がある。
多数の化合物や遺伝子を、マイクロプレートと自動化装置を用いて短期間に並行評価し、活性を示す候補を選び出す実験手法である。創薬初期の探索段階で大規模なライブラリから標的に作用する分子を絞り込む目的で用いられ、アッセイの微量化と自動化が前提となる。
がん細胞の表面分子を認識する抗体に光吸収体を化学的に結合させ、近赤外光を当てて標的細胞を壊す治療法。米国立がん研究所(NCI)によれば、結合体は標的分子に結合したときにだけ近赤外光で活性化され、照射を受けた細胞は急速に膨張して破裂し、壊死性(免疫原性)細胞死を起こす。
Discover Oncology 誌に掲載された総説によれば、数百万年前に生殖細胞系列に感染した祖先の外来性レトロウイルスに由来するゲノム配列であり、ヒトゲノムのおよそ8パーセントを占める。メンデル遺伝する座位として垂直に受け継がれ、多くは転写が抑制されている一方、胎盤形成に関わるシンシチン1のように生理的な役割へ取り込まれたものもある。異常な再活性化は発がんとの関連が指摘され、治療標的としても検討されている。
アルファ線を放出する放射性核種を、がん細胞へ選択的に結合する抗体やペプチドに担持して投与し、腫瘍の内部から照射する治療法である。飛程が短く線エネルギー付与が大きいアルファ粒子の性質を利用して、周囲の正常組織への被曝を抑えつつ標的細胞に修復困難なDNA損傷を与えることを狙う。
Med J Aust 誌の総説によれば、細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージを治療に用いる方法で、始まりから1世紀を経て再び注目されている。抗菌薬耐性菌に対して活性を示すことと重篤な副作用が知られていないことから、難治性の細菌感染症の治療選択肢として位置づけられる。ファージは標的とする細菌に対する特異性が高い一方、試験管内の活性と生体内での有効性の関係は厳密な評価が残されている。
リプログラミング因子を一時的にだけ発現させ、細胞の同一性を保ったまま老化に伴う変化を戻す手法。多能性幹細胞まで初期化しきらない点が要点。
患者個々の腫瘍がもつ分子的特徴に基づいて診断法と治療薬を選択するがん医療の実践を指す。遺伝子変異などの分子異常を手がかりに腫瘍を分子サブタイプへ分割し、それぞれの生物学的機序を標的とする薬剤を割り当てることで、正常細胞への影響を抑えることを目指す。
タンパク質の配列・発現・構造を手がかりに、生物の中でタンパク質がどのように関係し、相互作用し、機能するかを明らかにする研究領域である。米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立トランスレーショナル科学推進センター(NCATS)の用語集はこう説明し、タンパク質およびタンパク質ライブラリの性状解析、条件ごとの発現量の違いの比較、相互作用と機能的役割の研究が含まれるとする。大規模な自動化手法とバイオインフォマティクス解析を組み合わせて進められる。
E3ユビキチンリガーゼに結合してその基質認識を変え、本来は認識されないタンパク質を分解させる低分子。標的とE3の双方に結合する二機能性のPROTACと異なり、分子量が小さく、リガーゼ自身の構造変化を介して三者複合体を成立させる点で作用の仕方が異なる。
整然と並んだアミノ酸の連なりから成る医薬品の一群であり、分子量はおおむね500〜5000ダルトンである。低分子より大きく柔軟な骨格を持つためタンパク質間相互作用の阻害に向く。一方で膜透過性が低く細胞内の標的に届きにくく、アミド結合が生体内の酵素で分解されやすいため半減期が短い。
関節の組織が時間とともに壊れていく変性の関節疾患である。米国国立関節炎・筋骨格・皮膚疾患研究所(NIAMS)は、関節炎のうち最も一般的な型であり高齢者に多いとし、関節の痛みと、安静や不動の後に短時間続くこわばりを典型的な症状として挙げる。侵されやすい関節は手指、膝、股関節、頸部、腰部である。進行すると軟骨、腱と靱帯、滑膜、骨、膝の半月板など関節のあらゆる部位が損なわれ、痛み、腫れ、可動域の喪失が生じる。
腫瘍が発現する抗原や受容体に結合する担体分子に、キレータを介して治療用放射性核種を標識し、静脈内投与などで全身を経由して腫瘍へ集積させる核医学治療である。同じ標的分子に診断用核種を標識すれば投与前に集積を確認でき、診断と治療を一体で運用するセラノスティクスの中核をなす。
主に炎症細胞に存在する環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼの一亜科。細胞性免疫の調節に関与しうる。
米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)の用語集によれば、ある特定の環境に存在する微生物(真菌・細菌・ウイルスなど)の集団を指す。ヒトでは、皮膚や消化管といった体の特定の部位に住む微生物を指して用いられることが多い。これらの微生物の集団は動的であり、運動、食事、薬剤その他の曝露といった環境要因に応じて変化する。
アテローム性動脈硬化によるプラークの蓄積で末梢動脈の血流が減少する疾患。米国国立心肺血液研究所は、下肢型では脚と足への血流が減り、歩行で始まり安静で数分以内に治まる筋肉の痛みや脱力が典型的な症状だとしている。
腎臓が損傷を受けているか構造に問題があり、血液を本来のようにろ過できなくなった状態である。米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所(NIDDK)は、成人での最も多い原因を糖尿病と高血圧とし、主な危険因子として糖尿病、高血圧、心疾患、腎不全の家族歴を挙げる。検査を受けることが唯一の判別手段とされる。腎不全に至った場合は、失われた腎機能を置き換える手段として透析または移植が検討される。
タンパク質の設計情報をもつメッセンジャーRNAを体内の細胞に届け、細胞自身に目的のタンパク質を作らせる医薬である。COVID-19ワクチンでは、脂質ナノ粒子がmRNAをヒト細胞へ運び、体内で作られたスパイクタンパク質に対して免疫応答が生じるとNIAIDは説明している。
毛包の周期的な再生を担う幹細胞である。毛包は保護、体温調節、感覚を担う皮膚の付属器であり、毛周期を通じて比較的安定して存在するバルジがこの幹細胞のニッチの物理的な中心となる。加齢に伴って毛包幹細胞が枯渇すると毛の密度が明確に低下し、色素形成の機能不全によって白髪が生じる。
実験室で作られ、特定の標的だけを認識する免疫タンパク質。米国立がん研究所(NCI)は「特定の標的を認識するようラボで作られた免疫系のタンパク質」と説明する。がん細胞に目印を付けて免疫系に排除させるもの、T細胞をがん細胞に近づけるものなど、標的と設計に応じて働き方が異なる。
腎近位尿細管の管腔側膜にある尿酸トランスポーターURAT1(遺伝子名SLC22A12)を阻害し、糸球体で濾過された尿酸の再吸収を抑えて尿中への排泄を促す薬剤群である。血清尿酸値を下げる尿酸排泄促進薬の主要な作用機序にあたり、尿酸産生を抑えるキサンチンオキシダーゼ阻害薬とは異なる経路で働く。
細胞外タンパク質や膜タンパク質をリソソームへ運んで分解させる二機能性分子。抗体や低分子に、CI-M6PR受容体のリガンドを結合させて作る。
皮膚と筋肉の間にリンパ液が溜まることで生じる腫れである。米国国立がん研究所(NCI)のPDQはこう定義し、がんそのものやがん治療がリンパ液の流れを妨げることで起こるとする。腫瘍による閉塞、手術によるリンパ液の流れの途絶、放射線治療でできた瘢痕組織による閉塞の3つが挙げられている。治癒させることはできないが腫れを和らげる治療は可能な慢性の状態であり、早く治療を始めるほど管理しやすいとされる。